1株あたり純資産(英語表記:BPS)って何?解散価値ってホント?

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こんにちは、こびと株(@kobito_kabu)です。

私は簿記1級&経理歴10年超の会計大好き人間なのです。でもこの記事では、会計の世界における常識にツッコミを入れたいと思います。

当たり前に考えられていることでも、実は「?」ということは意外とあったりするものですよね。

話題は「1株あたり純資産」です。

 

1株あたり純資産(英語表記:BPS)とは?

1株あたり純資産とは、

企業の「純資産を発行済株式数で割る」ことで計算できる指標です。(正確には、普通株式にかかる純資産を、発行済株式数から自己株式数をひいた数で割ります)

英語ではBPSと表記します。Book value Per Shareの略ですね。

文字で説明するよりも、図を見るとイメージしやすいです。こんな感じです。

bps

発行済株式数が10株なら、300÷10株=30が1株当たり純資産になります。

 

1株あたり純資産(上図の30)とは、解散価値である

あなたがこの会社の株式を1株持っていたと仮定すると、この会社が清算されたら「あなたは30もらえる」ことになっています。

 

こびと株
一体どういうことかというと…

この会社には500の資産があります。

もし経営難に直面し、会社をたたむことになった場合、真っ先に債権者にお金を返さないといけません。

上図では200の負債がありますから、まずはこれを返済します。

 

負債を返したら、手元に300の資産が残りました。純資産の部分ですね。

これは、株主に返さないといけません。どうやって株主に返すのがフェアかというと、持ち株数に応じて分配するのがフェアですよね。

この会社は全部で10株を発行しているので、1株あたり30の分け前を払えばいいことになるわけです。5株持ってる人には150渡せばいいことになります。

こびと株
このような考え方から、「純資産は解散価値を表している」と言われています。

 

1株あたり純資産とは、”本当に”解散価値なのか?

ここまでが、会計の世界での「常識的」な話。

ここからが、ツッコミです。

つまり「実際は、解散価値としての意味がないのでは?」という指摘です。

 

起業から倒産に至るでの1株当たり純資産の増減イメージを見てみます。

 

起業から倒産までの1株当たり純資産の推移

青い曲線は1株当たり純資産の金額水準を表しています。

ぐらふ

1株当たり純資産は②成長に伴いどんどん高まってゆき、成長が頭打ちとなり事業環境が悪化・赤字化すると③~⑤の過程で減り続けます。

こびと株
この会社、株主目線ではどのタイミングで解散すればよいと思いますか?

 

もちろん③ですよね。なぜなら、株主にとっての「解散価値」が一番大きいところが③だからです。

極論ですが、株主にとって一番合理的な選択肢は「解散価値がピークの時に解散してくれること」なのです。

成長が頭打ちになり事業が厳しくなると③から⑤に向かう途中にどんどん解散価値が減っていってしまいますからね。

そんな状況では、解散価値はもちろんのこと、時価=株価もどんどん下がっていくでしょう。まさに沈みゆく泥船。

 

そうならないためには、

社長「株主の皆さま!当社はもはや成長が見込めません!これ以上の操業は純資産を食いつぶすだけです!そこで、当社は現時点を以て解散致します!分け前にご期待下さい!」

株主「賛成!賛成!一刻も早く解散を!

こうする必要があるのですね。

 

なんだかすごくアホみたいに見えますけど、理屈ではこれが正解なのです。

「この企業はもうダメだ」と市場に判断されると、株価はあっという間に下落します。

もし何とか売り抜けられたとしても、後の投資家が損するだけです(その投資家は業績が持ち直すと思って買うのでしょうが、ここでの前提は「沈みゆくことが確定」)。

トータルで見れば、これではただのババ抜きです。

こびと株
ここまでくると、他の投資家にリスクを押し付けるのではなく、事業を清算して利益確定(損失確定)させた方がよくなってしまうのですね。

 

上場会社、特に大企業が途中解散できない5つの理由

でも、実際は解散価値がピークのところで解散なんて出来ません。しません。

その理由がコチラの5つ。

  1. そもそも、いつが解散価値のピークか分からない
  2. 往生際の悪い経営陣(良く言えば最後まで諦めないスピリッツを持った経営陣)が、解散しようとしない
  3. 巻き返しを信じる株主が解散に賛成しない
  4. 従業員の生活がかかっているので解散できない
  5. 取引先に迷惑をかけるので解散できない

④と⑤は、リーマンショックの時などに話題になった「大きすぎて潰せない」というやつですね。

 

要するに、理論上は「企業は株主のもの」だけど、実際は「企業は社会の公器」なので、株主の利益が最大(損失が最小)の時点で解散するなんて、けしからん、ということ。

「未来はどうなるか分からない、最後まで頑張ろう!」

こうなっていくのが実態なんですね。

 

見たことありますか?「今が企業価値のピークだから」という理由で途中解散した企業。

こびと株
私は見たことがないです(笑)

 

実際は解散”できない”ならBPS(解散価値)の意味って…

1株あたり純資産は「解散価値である」という言われ方をしますが、実際は解散できないんですよね。

できないし、しない

今回は言及しませんでしたが、財務諸表上の純資産と、全ての資産負債を清算したあとの手残りは一致しませんしね。

じゃあ、「1株あたり純資産は解散価値のことである」って説明する意味、理解しようとする意味ってどこにあるんでしょうね…。うーん、なんともモヤモヤします!

 

株式投資においては、BPS(1株あたり純資産)そのものの意味よりも、PBR(株価純資産倍率)の計算基礎になっているということの方が重要かもしれません。

PBRは、今の株価が1株あたり純資産の何倍になっているかという指標です。株価をBPSで割って計算します。割安さを判断するのに使われます。

こびと株
BPSよりPBRに注視しましょう!BPSはトレンドだけ追ってればいいんじゃないかな…

というなんだか悲しげなオチになってしまいました(笑)

それではまたっ!

 

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ABOUTこの記事をかいた人

こびと株.comの管理人。一部上場企業での経理/財務の実務経験10年超、日商簿記1級、証券アナリスト、FP資格を有する「企業と個人のお金の専門家」。4つの財布(給与/配当/不動産/事業収入)を駆使して経済的自由を達成することを目標に奮闘中。