「経理のリアルな現場を伝える」シリーズです。
- 経理の仕事に興味がある大学生
- 未経験から経理に転職しようと思っているビジネスマン/OL
- 開示業務を未経験の経理経験者
この記事を読むと、開示業務のリアルが分かります。ぜひ、就活や転職などの参考にしてください。
目次
開示業務とは
「株主」や「投資家向け」に決算内容を報告する資料を作成する業務です。
上場企業のホームページには、必ず「株主・投資家向け情報」という項目があります。例えば、任天堂だとこんな感じ。

青枠で囲った部分に掲載されている「決算短信」というのは、開示業務で作成する資料の典型的なモノですね。これを見ると、企業の業績が一目で分かります。

株式会社のオーナーは株主です。
決算短信のような開示書類は、その株主様にご覧頂く資料ですから、万が一にも間違いがあってはいけません。正確な資料を作るべく、経理部員は神経を擦り減らしながら業務に取り組んでいるのです。
決算発表後に間違いが見つかった!!なんてことになったら、抜け落ちる髪の毛は10本じゃあ済まないでしょうね…
リアルな業務の流れはこんな感じです。
開示業務の流れ(5ステップ!)
全部で5ステップです。3月決算の会社を例にとるとこんなイメージ。

順番に見ていきましょう。
こびと株.comメンバーの私と、その後輩フルーツ達とのやりとりをご覧ください。
①改正対応の準備
ある意味一番オイシイ時期です。なぜなら、たいして忙しい時期ではなく、お勉強している(フリをする)だけで給料が貰えるから!





会計や税金の世界では毎年のようにルール改正が行われています。去年と同じように資料を作ればOK!ということはめったにないのです。例えば平成30年の場合にはこんな改正があります。
有価証券報告書及び事業報告における大株主の状況に係る記載の共通化
有価証券報告書等の「大株主の状況」における株式所有割合の算定の基礎となる発行済株式について、議決権に着目している事業報告と同様に自己株式を控除することとし、両者の記載内容を共通化します。
ワケが分からなくてOKです。
知って欲しいのは、こういう改正が年間に何十箇所も出てくるということです。会計や税法にアレルギーがある人は、この改正についていくだけでもイヤになってしまうと思います。
ちなみに、開示業務サポートの大手は
- プロネクサス
- 宝印刷
の2社です。上場企業に勤めて開示業務を行う場合は、ほぼ確実にこの2社が用意する開示資料の作成システム/セミナーを利用することになります。
この2社から最新情報をゲットしたら、その情報を部内で共有して決算に備えます。必要があれば他部署(法務部や総務部など)にも情報提供をして、協力体制を築いておきます。
プレゼンスキルやコミュニケーション能力が求められるシーンですね。
②決算(売上や利益の計算)
決算が始まったら、ひたすら財務諸表の作成に取り組むことになります。


とりあえず、ひたすら仕訳を入れまくります。一般的には、月初から5~10日くらいで財務諸表を完成させるイメージですかね。
ちなみに、日本最速で決算発表する会社は「あみやき亭」です。マジで速いですw
決算の詳しい内容については別な記事で解説します。
③開示書類の作成
開示資料は次の2つで出来ています。
- 数値(財務諸表など)
- 文章
①数値部分に関しては、自社のシステムで作成した財務諸表を、宝印刷やプロネクサスが用意している開示資料作成システムに取り込む必要があります。
3ヶ月とか1年に1回の作業なので、結構忘れてます。



②文章部分については、各項目ごとに適切な担当者を割り振る必要があります。経営企画部、各事業企画部、法務部、総務部、監査部、様々な部署に協力を依頼します。
前もって適切な部署に依頼ができてないとその時点でオワリです。いきなり頼んでも対応してくれないのがサラリーマンの世界です。根回しが大事ということですね。
ちなみに、開示資料作成システムは結構扱いが独特なので、うまく使えるととても重宝されます。レイアウトを整えるのが結構難しいんですよね。
私は一時期「God(神)」の称号を得るほどシステムに精通していたので、ずいぶんデカい顔をすることができました。おかげで月間残業時間100時間超え!もう絶対やらなぃ
④マネジメント層(部長や経営陣)への報告・承認
完成した開示資料は、部長や経営陣に報告して承認をもらいます。
迂闊なミスをしていると、ここでドヤされます。開示資料は会社の外部に出る資料なので、チェックが厳しくて当たり前ですね。
- 証券取引所
- 金融庁
- メディアの記者
- 株主
- 社外の関係者
実に様々な方の目にとまります。自分たちが作った決算の内容が翌日新聞に載ったりニュースになったりすることもありますから、こわいですね~。



とにかく色々なところから突っ込みが入るので、会社の数値に精通していて口の上手い人じゃないと乗り切れません。また、完成版の資料に印刷ミスがあったりすると、本当に胃が痛くなりますw


…..


実際、ギリギリで印刷ミスに気が付いて深夜まで修正した経験もありますw今となっては良い思い出ですね。
ここを乗り越えると、ゴールまであと少しです。
⑤開示(東京証券取引所や金融庁に提出、自社ホームページで公開)
システム上で提出手続を行います。
- 決算短信はTDNET(東京証券取引所のシステムです)
- 有価証券報告書はEDINET(金融庁のシステムです)
これらを使って、一生懸命作成したデータを提出するのです。このシステムが結構クセモノで、扱うのがめんどくさいです。結局、ここにくるまでに3つのシステムを使っていることになりますね。
- 自社の会計システム
- 開示資料の作成システム(宝印刷かプロネクサスのどちらか)
- TDNETやEDIENT
このへんのシステムを自由自在に扱えると、頼られるキャラになれますね。




※3月決算会社の場合、4月~6月に本決算や株主総会対応をやります。7月に入ると、もう第1四半期決算です。もう1回①~⑤を繰り返しますw
開示業務のココがスゴイ!開示業務をやる4つのメリット
こんな感じで進む開示業務ですが、これらの業務に携わるメリットがこちらです。
- 転職市場で売れる経験になる
- 給料を貰いながら最新の会計基準/税法にキャッチアップできる
- 全社的な数値を扱えるため、会社に詳しくなれる
- 他社事例の研究と称して、他社のIR見放題
①転職市場で売れる経験になる
現在、日本の上場企業は3600社ほどです(日本取引所グループの情報による)
- 一部上場企業は2100社
- 二部上場企業は500社
- 新興市場は1000社
仮に、1社に開示業務の専任者が2人いたとすると、日本には7200人ほどの開示業務担当者がいることになります。業務ローテーションがあるとはいえ、この業務に携われる人の数は限られています。
だからこそ、貴重な経験になりうるのです。
転職サイトを見ても、開示書類の作成担当はよく募集されています。上場企業は待遇が良いことが多いですから実にオイシイ実務経験ということですね。


②給料を貰いながら最新の会計基準/法令にキャッチアップできる
開示書類の作成担当者は、常に最新の会計基準・関連法令をおさえておく必要があります。
会社のお金でセミナーに行かせてもらったり、就業時間中に勉強ができるため、給料を貰いながらスキルアップすることができます。


③全社的な数値を扱えるため、会社に詳しくなれる
大企業の経理は、担当業務が細かく分類されていることが多いです。ややもすると、全体感を見失いがちになります。
しかし、開示業務は「出口の業務」なので、会社数値の全体を詳しく見ることができます。他部門と連携するなかで広い社内人脈が形成されますし、会社に詳しくなれるチャンスが盛りだくさんです。


④他社事例の研究と称して、他社のIR見放題
そして、他社事例の研究と称して、他社のIRが見放題です。決算発表の時期は実に楽しいです。同業他社はもちろんのこと、隣接業界の業績もよくチェックしています。
ここで分析力を鍛えると、部内でも一目置かれます。


まとめ:開示業務は美味しい業務!
というわけで、開示業務の流れとメリットでした!
神様(投資家様)に提出する資料のため、ミスは許されません。そういうプレッシャーはありますが、全体としては非常にオイシイ業務です。経理マンなら是非一度は経験したい業務です。


それではまたっ!
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