ソーシャルレンディングの正体。日本のソーシャルレンディングとは結局何なのか、その実態について仮説を立ててみました。

ここ1~2週間、集中してソーシャルレンディングの情報収集に取り組んできた。そして、ある程度の情報が集まったという感覚が得られたため「日本のソーシャルレンディングとは一体何なのか?」ということに関して、1つの仮説を立ててみた。

なお、この仮説を立てるために要したリソースはこれだけである。

  • ネット上のHP、ブログ、論文
  • 新聞
  • 関連書籍5冊
  • 関連法令(出資法、金融商品取引法、貸金業法)
  • クラウドクレジット社へのセミナー参加およびヒアリング

私はソーシャルレンディングで実際の投資を行ったことがない完全な素人である。

今まで長い期間投資をしてこられて、より深い見識をお持ちの方から見たら的を外したこと(もしくは当たり前のこと?)を言ってるかも知れないが、この仮説はイチ投資家の「ひとまずのアウトプット」ということでそこはご容赦頂きたい。もし事実と異なるところがあればぜひともご教授願いたい次第である。

 

仮説

不動産価格が上昇を続けているため「作れば売れる」「買えば転売できる」状況にある。

しかし、いくら不動産価格が上昇を続けており、マイナス金利の状況にあるとは言え、バブル崩壊やリーマンショックにより苦い思いを経験している大手の銀行は、信用力の低い中小企業や不動産の短期開発・転売案件に融資をすることはできない。

この隙間を埋めているのがソーシャルレンディグ会社であり、歴史的な低金利により行き場を失った個人のマネーではないか?

 

それでは、この仮説に至るストーリーをご覧頂きたい。

 

世界から、お金の貸し手がいなくなった

すべてのはじまり

すべての発端は、2007年の「サブプライム住宅ローン危機」。サブプライム住宅ローン危機とは、サブプライム層(信用力の低い個人)に対する住宅購入用資金の貸付債権の不良債権化により発生した金融危機のことである。

サブプライム住宅ローン危機に端を発して、2008年9月15日には大手投資銀行であるリーマン・ブラザーズが倒産してしまう(リーマン・ショック)。

これら一連の出来事は、世界経済全体に大きなダメージを与え、日本の株式市場に対しても歴史的な傷跡を残した。日経平均は、2008年10月28日には6,994.9円という数値を記録している。

日経平均の推移

 

国際金融規制へ

住宅バブルの崩壊やリーマンショックにより、世界の金融市場において急激な信用の収縮が発生した。市場から、お金の貸し手がいなくなってしまったのである。

金融機関を含む金融市場・資本市場の関係者がお互いに疑心暗鬼となり、 取引が行われなくなり、市場の流動性が枯渇し、金融機関の資金繰りが非常に厳しい状況に陥りました。

(出典:大和総研レポート「バーゼルⅢではどのような見直しがされた?

金融危機を引き起こしてしまった反省から、金融システムの脆弱性を改善すべく、バーゼル規制の見直しが行われることとなった(バーゼル規制は、国際的な取引を行う銀行が守るべき指針)。これがバーゼルⅢである。

バーゼル規制2

バーゼルⅢでは、主に、自己資本比率規制、レバレッジ比率規制、流動性規制などが定められた。非常におおざっぱな表現をすると、「リスク回避的」で「金の貸出しがやりづらい」状況が生み出されたと言える。

 

資金需要を大きく動かすイベントがなかったにもかかわらず、資金供給サイドの都合から金融市場には大きな歪みが生じた。「借りたい人が借りられない」という時代が訪れたのである。

 

日本のソーシャルレンディングの夜明け

マクロな視点から、日本へと視点を移す。

maneoの誕生

世間がリーマンショックの混乱にあるさなか、日本で初めてのソーシャルレンディングサービスが開始された。2008年10月15日、妹尾賢俊氏を社長とするソーシャルレンディグ会社「maneo」が、日本の行政当局からその活動を認められたのである。

ソーシャルレンディグとは、次のようなサービスである。

  • 銀行を通さずに
  • お金を借りたい人と
  • お金を貸したい、投資してもいい人とを
  • Web上でマッチングする

先駆けは、日本ではなく海外である。(2000年ごろに海外(特にアメリカ)でいくつかのサービスがリリースされ始め、2008年には「IndieGoGo」、2009年には「Kickstarter」といった有名なサービスが誕生している。)

この、「借り手と貸し手をWeb上でマッチングする」という画期的な仕組みを日本に輸入するにあたっては、法規制という大きな障害があった。

複数の人間に対して、複数回の貸し出しを行う場合、それは「業」として貸金を行っているとみなされ、貸金業法の規制を受けることになる。つまり、貸し手個人に対して貸金業者としての登録が要求されることになるのだ。これはあまりにハードルが高い。

また、借り手保護の観点から言っても、(法律に詳しくない)普通の一個人から取り立てを受ける可能性があるというのは、非常に問題があった。

これらの問題をクリアするために、妹尾氏を中心とするmaneoの創業者達は、「匿名組合契約」という仕組みを利用することにした。ここでいう匿名組合契約とは、

  1. 貸し手は、借り手ではなくソーシャルレンディング会社であるmaneoに出資
  2. maneo(貸金業者登録済み)が借り手にお金を貸す
  3. maneoが借り手から元本+利息を受け取り、分配金を貸し手に渡す

仕組みのことをいう。これならば、上述の問題をクリアできる。

ただし、この仕組みを採用したことで、「借り手」と「貸し手」の関係がとても希薄になっているということは強調しておく(借り手も貸し手も、お互いの名前を知ることすらない。)

この「匿名組合契約」を利用したソーシャルレンディングサービスについて、関東財務局を中心とする行政当局に納得してもらうために、多大な労力がかかったという。しかし、当局に「正気の沙汰ではない」と指摘されるなか、

関東財務局、JICC、東京都に100回以上通って、やっとのことで金融商品取引業者と貸金業者の登録が完了

(出典:妹尾賢俊「ソーシャルレンディングという新しい投資のカタチ みんなと幸せになるお金の使い方」角川フォレスタ)

するに至ったのである。

 

maneoの誤算

ようやく開始することができたソーシャルレンディングサービス。しかし、そこには大きな誤算があった。個人を借り手とするローンについて、多くの延滞・デフォルトが発生してしまったのである。

あまりの延滞・デフォルトの多さに、妹尾氏は恐怖を感じ、このような対応を取る。

「誰かが後ろで糸を引いているのかもしれない…..」

大げさではなく恐怖感をも覚えた私たちは、借り手の審査をさらに厳しくすることにしました。

(出典:妹尾賢俊「ソーシャルレンディングという新しい投資のカタチ みんなと幸せになるお金の使い方」角川フォレスタ)

しかし、この対応は「借り手ゼロ」の状態を作り出しかねず、maneoの収益を圧迫しはじめることになる。そこで、maneoは事業存続の危機を乗り越えるために個人向けのローンの取り扱いをやめ、事業者向けローンの商品開発に乗り出すことになったのである。

この事業者向けローンの初めての案件こそ、「住宅建設資金」のファイナンスであった。この案件を皮切りに、maneoは事業者向けローンへと完全にシフトチェンジする。

貸し手である個人投資家にとっても、業者向けローンは「個人向けと比較してリスクが小さく、リターンも大きい」ため、都合が良かったのだ。なお、同業者であるSBIソーシャルレンディングも、同様の理由から個人向けローンの取り扱いを中止し、事業性ローンへと舵を切っている。

 

東日本大震災の発生によるスポンサーの交代

個人向けローンから事業者向けローンへと切り替え、事業が少しずつ軌道に乗り始めたものの、2011年3月11日。東日本大震災が発生する。

東日本大震災の影響により、maneo株式を99%保有していた飲食会社の事業経営が悪化。代わりのスポンサーとして、滝本憲治氏率いるUBI株式会社が選ばれることになる。

ソーシャルレンディング最大手maneoの社長「瀧本憲治」ってどんな人?著書を読んでみたのでレビューします。【セカンドマネーを創りなさい!】

2017.01.12

UBI株式会社は、貸金・不動産に強い会社である。彼らを新たなスポンサーとし、maneoは急成長。事業拡大への道を辿ることになるのである。

滝本憲治氏は、リーマンショック後の金融市場について、このようなことを言っている。

なんだ、お金を貸すプレーヤーがぜんぜん居なくなって、まったく競争はないじゃないか。担保をガチガチにとっても、上限金利いっぱいの15%でお金を貸せるじゃないか!

(出典:滝本憲治「セカンドマネーを創りなさい!」ぱる出版)

 

日本経済の動き

世界経済の動き、日本初のソーシャルレンディング会社maneoの動きを見てきた。最後に、日本経済の動きを確認しておく。

 

第2次安倍内閣の発足

2012年12月26日、東日本大震災などの事後対応などを巡り国内で急速に求心力を失っていた民主党に代わり、自民党を与党とする新政権が誕生した。第2次安倍内閣の発足である。

安倍内閣は「アベノミクス」と呼ばれる経済政策を掲げた。アベノミクスは、政策運営の柱として、次の3つの政策を掲げている。

  • 大胆な金融政策
  • 機動的な財政政策
  • 民間投資を喚起する成長戦略

これらのうち、大胆な金融政策について確認する。

 

大胆な金融政策

この大胆な金融政策の一環として発射されたのが、通称黒田バズーカである。

黒田バズーカとは、2013年4月以降、黒田総裁率いる日銀が、デフレ脱却や景気刺激のため、3回にわたって実施した金融緩和策のことです。爆発的な円安・株高をもたらしたため「バズーカ」と称されました。具体的には、2013年4月の第一弾は「量的・質的金融緩和」、第二弾は2014年10月の「量的・質的金融緩和の拡大」、第三弾は2016年1月の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」です。

出典:キャリタスファイナンス

 

これらの政策の内容については割愛する。

とにかく、結果を見てみよう

 

円ドルレート

一時1ドル=80円前後をさまよっていたレートは、今や1ドル110~115円となった。大量の円が市場に放出されているということである。

長期金利

長期金利は一気に下落。ついにはマイナス金利となった。このような背景の中、銀行は貸出の姿勢を強め、じゃぶじゃぶと市場に資金を供給し始める。

驚くなかれ。現在の銀行の中小企業に対する貸出態度は、リーマンショック前と比べてすら緩くなっているのです。と言いますか、中小企業の貸出態度DIが「20」に達したのは、何とバブル最盛期の1989年以来のことです。現在の銀行は大企業、中堅企業はもちろんのこと、中小企業に対してすら「お金を貸したがっている」というのが真実なのです。

出典:【三橋貴明】バブル期並に銀行の貸出態度が緩んでいる現実

※ソーシャルレンディング案件は、このような状況でもなお銀行が融資しない案件である。

そして、日経平均株価はこの通り(再掲)。

日経平均の推移

今や、サブプライム危機以前の水準へと回復している(ちなみに、ドルベースの日経平均株価は円ベースほどは上昇していない。つまり、日経平均の上昇は先に見た円安に起因するところが大きい)

 

以上を念頭に、「銀行の貸出し水準」と「不動産価格」の関係を示したこのグラフを見て頂きたい。

不動産価格推移

(出典)日本不動産研究所、日本銀行よりスタイルアクト作成

赤い線が貸出態度指数青い線が賃貸住宅取引価格指数である。

確認して欲しい点は2点である。

  1. 融資(貸出態度指数)が増えると、不動産価格(ここでは住宅取引価格指数)は上昇するということ
  2. 日経平均株価と同じような曲線を描いていること

銀行の融資がバブルを引き起こす。貸出額が増えれば不動産価格は上昇する。これは歴史の証明しているところである。この点だけは必ず認識して頂きたい。

そして、この不動産価格の上昇を後押しする要因として、「相続税法の改正」に伴う相続税対策ラッシュ2020年東京オリンピックを見据えた外人の爆買い・開発ラッシュがあることを簡単に申し添えておく。

 

まとめ

2007年~2009年:サブプライム危機・リーマンショックを契機として金融市場が停滞。バーゼルⅢの登場により銀行は貸出に慎重になった。

2008年:maneoが誕生。国内の法規制を「匿名組合契約」によってクリアして新サービスを開始。しかし個人向けローンが難航する。

2010年~2011年:事業者向けローンへとシフトしたmaneo。東日本大震災を契機に、不動産案件に強みを持つ経営陣へと交代する

2013年:第2次安倍内閣の発足、アベノミクスの始動により、市場に対して急激に資金が供給され始める。資金の供給に伴いさらに不動産価格が上昇する

~現在:相続税対策や東京オリンピックを要因とする建設ラッシュ・爆買いで、不動産価格は高水準な状況が続いている。不動産市況の活況を背景に、ソーシャルレンディングのローン成立額が拡大し始める。

 

仮説

以上を背景として導かれた仮説が、冒頭に紹介したこの仮説である。

 

仮説

不動産価格が上昇を続けているため「作れば売れる」「買えば転売できる」状況にある。

しかし、いくら不動産価格が上昇を続けており、マイナス金利の状況にあるとは言え、バブル崩壊やリーマンショックにより苦い思いを経験している大手の銀行は、信用力の低い中小企業や不動産の短期開発・転売案件に融資をすることはできない。

この隙間を埋めているのがソーシャルレンディグ会社であり、歴史的な低金利により行き場を失った個人のマネーではないか?

 

maneoが作ったビジネスモデルを踏襲して、様々なソーシャルレンディング会社が生まれてきたのはつい最近のことである。その中には、不動産を専門に扱うソーシャルレンディング会社もある。それくらい、不動産の案件は引きが強いのだ(担保が設定できるため、安全性を謳えるのも大きな強み)。

個人向けローンがうまくいかずに事業性ローンに切り替えたことと、不動産市況における追い風、歴史的な低金利は無関係の出来事ではないだろう。

ソーシャルレンディングは、Fintechという言葉とともに知名度を増している感があるが、何のことはない。今まで存在していた仕組み(匿名組合契約)について、ネットを利用して募集しているだけの話である。そこに、ITに関する技術的な目新しさはないのではないか。

 

先日参加させて頂いたクラウドクレジット社のセミナーで、杉山社長からこんな発言を頂いた(クラウドクレジット社は、海外案件特化のため国内不動産の案件は取り扱っていない)。

日本では、個人の貸し手と借り手を結びつけるということをするよりも、ファンド形式の商品を組成・提案した方が投資家ニーズに適っている。その方が、分かりやすくてウケがいい。

 

つまり、現在のソーシャルレンディングの実態は、海外のサービスで見られるような借り手と貸し手の自由なマッチングというよりは

(不動産価格の上昇および銀行の融資基準の厳しさを追い風とした)不動産に関する事業案件への個人マネー提供の仲介である。まさに、ファイナンスの隙間である。

 

最後に、現在ソーシャルレンディング会社が募集している案件を一覧にしてみる。サっと調べられたものだけを一覧に含めたので、網羅性については担保されていないが参考にはなると思う。

不動産案件

もう完全に不動産関係のみ(太陽光発電関係の事業も、用地取得等の兼ね合いから不動産関係として認識)。

今まで募集された全ローンのうち、どれほどが不動産関係のものだったのか、機会があればぜひ調べてみたいと思っている。

ファイアフェレット氏が運営しているソーシャルレンディング赤裸々日記において主要ソーシャルレンディング会社の募集総額(累計)が記載されている。同氏の集計によると、これまでの募集総額は1,146億8,932万円である。

一体、この金額のうちいくらが不動産関係の案件なのか、それこそがまさに仮説の根幹であるのだが、調べる時間がないためこれまたご容赦願いたい。正直なところ「いや、そこは調べてから発言してよ」と言われれば、「超ごめん」以外のセリフは見当たらない誰か私の意志を引き継いで集計してみてください。

 

最後に

日本における貸付型ソーシャルレンディングの現状は、「匿名組合契約」を前提としたただの「ファンド」である。匿名組合契約を前提としている以上、寄付型や購入型のクラウドファンディングで見られるような「借り手」と「貸し手」のつながりは希薄にならざるを得ない。

極論を言うと、現状、投資家は「銀行が融資しない(できない)不動産関係の案件について、ネット上で投資するかどうかを選べる」というだけでなのではないか。そこに、金銭に関するリスク・リターンを超えた関係性(応援・感謝など)は見出しづらい。

そして、リスクコントロール、すなわち各案件の目利きについては個別具体性がどうかというよりも、マクロな視点から金融緩和・税制・オリンピックなどを成長の追い風としている「不動産市況の需給バランスがいつ崩れるか」を気にした方が良いのではないかと思う。

日銀、「不動産バブル」に警戒 低金利・節税対策で貸家に投資マネー流入

なお、もしソーシャルレンディングで扱われている商品の大半が国内不動産を中心とした商品であるとするならば、日本株式との相関関係をよく考慮しておかないと、いくら小口で購入したところでポートフォリオ全体としては大した分散効果が得られないということは言及しておく。

 

以上、ソーシャルレンディグについて興味がある方にとって、何かしら参考になる部分があれば幸いです。

 

それではまたっ!

 

あとがき

ツイッターを見ていると、イケダハヤト氏がしきりに「ソーシャルレンディングいいですよ~」と言ってるのですが、これに釣られて個人投資家が次々にソーシャルレンディング市場に参入。結果的に個人マネーが不動産市場に流れてますます不動産バブルを促進。

そしてついには….

なんてことになったら面白いですね(何も面白くない)。

先日こんなツイートをしました。

 

主婦が株を始めるとそろそろ天井と言います。それと同じことが起きてやしないか心配です。

くれぐれも、リスクをよく理解したうえで、余裕資金で運用したいものですね。

 

それではまたっ!

スポンサーリンク
スポンサーリンク


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUTこの記事をかいた人

シーウィード

こびと株.comの管理人(役割:投資対象の選定)。お金の話と健康をこよなく愛するアラサーリーマン。一部上場企業の経理/財務部で財務諸表を作成している会計の専門家(日商1級・証券アナリスト)。40歳時点で給与以外の収入(配当/不動産/サイト運営)を月額20万円にすることを目標に活動中。187cmの大男。