配当性向の平均値に見る、財務オンチな日本企業とイケメン米国企業の比較

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こんにちは、シーウィード@こびとが見える経理マン(@kobito_kabu)です。

企業の株主還元に関して、個人投資家に最も人気がある指標は配当性向です。この記事では、日米の配当性向の比較をしながら、日本企業の株主還元姿勢をチェックしていきたいと思います。

本記事の要約

個人投資家は、

  • 経営指標として配当性向を重視
  • 配当性向の水準は、「気にしない」「30%~40%が望ましい」という人が大半

日本企業の配当性向平均値(約30%)は、米国企業の配当性向と同じような水準です。ただし、2つの留意点があります。

  1. 総還元性向で見ると大きな差がある
  2. 配当性向の””に大きな差がある(適切な30%と、不適切な30%が混在している)

それでは、サクっと見ていきましょう!

 

配当性向とは

配当金支払額/当期純利益で示される割合のことを言います。

例えば、

  • 1年間の配当金支払総額が100億円
  • 当期純利益が500億円

という企業であれば、配当性向は100億円/500億円で20%となります。

 

総額ベースで計算しましたが、1株あたりの指標で計算しても結果は変わりません。

  • 1株あたり配当金が10円
  • 1株あたり当期純利益が50円

という企業であれば、配当性向は10円/50円で20%となります。

 

総額ベースにせよ、1株あたりの指標にせよ、決算短信のサマリー(1枚目)に記載されている超重要情報ですから簡単に把握することができます。

 

配当性向について、個人投資家はどのように考えているか

配当性向は個人投資家が重視している指標第2位

以下、生命保険協会(2017)が作成している資料をベースに話を進めます。

次に示すグラフは

  • 中期経営計画で公表している指標(企業)
  • 経営目標として重視すべき指標(投資家)

を並べたグラフです。

 

個人投資家が重視している指標は、上位から順に

  1. ROE
  2. 配当性向
  3. 総還元性向
  4. 利益額・利益の伸び率
  5. ROA

となっています。総還元性向というのは、自社株買いまで含めた還元性向ですね。やはり、配当性向は個人投資家から重視されている指標と言えそうです。

 

中長期的に望ましい配当性向は30%以上40%未満

次に示したグラフは、個人投資家が考える「中長期的に望ましい配当性向」です。

  • 水準には拘らない
  • 30%以上40%未満

というように2極化しています。

 

配当性向公表のトレンド

以上見てきたように、個人投資家は

  • 経営指標として、配当性向を重視しています
  • 30%~40%程度の水準が好ましいと考えている人が多いです(気にしないという人も同水準)

このような流れを受けて、株主還元に関する数値目標の公表割合は年々増え続けています。

平成18年では、株主還元に関する数値目標を公表している企業は21%しかありませんでした。それが、平成28年には43%と倍増しています。

 

「株主目線になれない日本企業」も少しずつ変わってきているのです。

株主還元に関する数値目標としては、やはり配当性向が多いです。平成28年度調査では、557社のうち430社が配当性向の目標値を掲げています。

その430社のうち、30%以上を目標に掲げている企業は336社となっています。やはり、ここでも「30%」という数値は意識されているようです。

 

配当性向30%は魔法の言葉

企業にとって「配当性向30%」は魔法の言葉です。なぜなら、この数値なら欲深い投資家達から身を守ることができるからです。

ところが!

実は「配当性向は〇〇%が望ましい!」と決め打ちするのは財務リテラシーに欠ける態度です。

なぜなら、企業の成熟度合によって、その場その場の適切な配当性向は変わるから

 

例えば、アマゾンは配当を出さない企業として有名です。なぜそれで許されるかと言うと、株主にお金を払うよりも、事業投資をして企業価値を増大させた方が株主に貢献できるからです。

成長機会が残されている企業は、配当性向を下げて投資を行う方が賢明なのです。

一方で、成熟企業でこれ以上投資の余地が残されていないという場合は、配当性向を引き上げて株主に還元していくべきということになります。

 

なぜ、日本においては配当性向30%が好ましいと考えられるようになったのか?

 

それは、米国企業の配当性向の平均が30%~40%だからだと言われています。

「株主のための経営」を実践している先進的な米国企業と、「株主を見ない」時代遅れな日本企業。この差を埋めるために、米国企業を目指して株主還元を高めてきたということです。

結果的に、日本企業の配当性向は米国企業の水準に迫ってきています。

 

配当性向の平均は、日米ともに30%~40%程度。日本企業は米国企業に追いついたのか!?

こちらのグラフをご覧下さい。日米企業の配当性向の推移です。

直近では多少差がありますが、平成20年~平成23年では米国企業よりも日本企業の方が配当性向が高いです。日米ともに配当性向の平均は30%~40%のレンジにおさまっています。

 

ここに、2つの罠があります。

これだけを見て、日本企業の株主還元は米国企業に追いついてきた!と判断するのは早計です。

 

罠1:総還元性向では大きく差がある

株主還元の方法は、配当金の支払いだけではありません。自己株買いを忘れてはいけません。事業に使わない余計な資金があるのなら、株主から株式を買い上げて、お金を株主に返すべきなのです。

「配当金+自社株買い」を、総還元と呼びます。日米企業の総還元性向の推移を見てみましょう。

 

段 違 い

もうね、全然違います。さきほど、平成20年~平成23年は日本企業の方が配当性向が高い!なんて言いましたが、総還元性向で見ると足元にも及ばない水準です。直近では、倍以上の差をつけられています。

株主としては、「企業がカネを余らせている」という状況を簡単に許すべきではありません。

友人から「独立開業するから出資してくれ!」と頼まれて、100万円出資してみたら50万円は定期預金になっている。こんなのおかしいですよね。

事業に使わないカネがあるなら、配当金なり自己株買いという形でお金を返してもらうべきなのです。

 

米国企業は、数十年以上の連続増配を続けている企業がゴロゴロあります。彼らは、絶対に減配したくないのです。

だから、お金が余っているからといってその分大きく配当金を増やしたりはしません。自己株買いという形でスポット的に株主に報いるのです。

 

これが「機動的な資本政策」「機動的な財務戦略」というものでしょう。その場その場に応じて、事業に必要な最低限の資金を持つ。そして、最大リターンを目指す。これが財務の要です。

じゃぶじゃぶ金を余らせているのは圧倒的に”財務オンチ”なのです。

日本企業はこういうことができないので、海外の機関投資家からナメられています。

 

配当性向だけを見ていてはいけません。

見るべきは総還元性向です。

 

罠2:平均30%でも、内訳が全然違う

平均の罠ですね。

配当性向が30%の企業だらけだと、平均は30%になります。

一方で、0%~100%までうまくバラけていても、平均は30%になりえます。

グラフにするとこんな感じです。一生懸命作りました

日本企業は、配当性向30%のところに企業が集中しています。配当性向30%を頂点として、山のような形のグラフを形成しているのです。

米国企業は、それこそ0%~100%まで、あらゆるところに平均的に企業が分布しています。結果として、配当性向の平均が30%~40%に落ち着いているというわけです。

(※転載禁止の資料だったので、ざっくりと手作りしました。ソースの信ぴょう性が弱くてすみません。参考程度に留めておいてください)

 

先ほど指摘した通り、配当性向は〇〇%ならOK!という類のものではありません。企業のステージによって、臨機応変に変えていくべきものです。

米国企業は、自社の立ち位置をよく分かっているといえそうです。アマゾンやグーグルは配当を出しませんが、一方で電気通信・エネルギー系の成熟企業の配当性向は実に高い水準です。

日本企業の場合は、「みんなが30%~40%にしてるからうちもそれくらいでいいや感」がすごいです(私見です)。もうまったく成長余地がないように見える企業でも、しこたま現金を溜め込んでいます。何に使うんだ

 

繰り返しになりますが、配当性向は、企業の置かれた状況で最も適切な水準を探すべきです。〇〇%なら良いというわけではありません。自社の状況が分からず

  • 配当性向を何%にすれば良いか分からない(だから平均にしとけばいいやー)
  • いくら自己株買いすれば良いか分からない(だから株価が安くなったら買えばいいやー)

これがまさに財務オンチの財務オンチたる所以ということですね。

ちなみにノーベル賞受賞者レベルの学者を以てしても「適切な配当金の水準を決めるのは難しい」です。そういう意味では、まぁしょうがないと言えばしょうがないですね。

 

まとめ

個人投資家は、

  • 経営指標として配当性向を重視しています
  • 配当性向の水準は、「気にしない」「30%~40%が望ましい」という人が大半です

日本企業の配当性向平均値(約30%)は、米国企業の配当性向と同じような水準です。

 

ただし、2つの留意点があります。

  1. 総還元性向で見ると大きな差がある
  2. 配当性向の””に大きな差がある(適切な30%と、不適切な30%が混在している)

難しい言葉を使うと、重要なのは最適資本構成(B/Sマネジメント)からの最適配当政策なのです。日本企業には、まだこの視点が浸透しているとは言い難い雰囲気です。

 

キャピタルゲイン狙いにせよ、インカムゲイン狙いにせよ、「株主に報いてくれそう」なのはやはり米国企業です。経営文化・実績が全く違います。

財務戦略については、日本企業は米国企業を見習ってほしいところですね。

ただ、日本企業は「内部留保を貯めこんだワールドチャンピオン」です。私は、このお金がいつか株主に向かうと信じています。

 

米国株の高配当戦略をそのまま日本株に持ち込むのは危なっかしくてやってられませんが、慎重に個別株を選ぶことが出来ればワンチャンスあるかもしれません。

  • 財務オンチな日本企業(だけど、伸びしろが大きい)
  • リテラシーの高い米国企業

どちらに投資するかは、投資家の考え方次第というところですね。

 

この記事で、日米の配当性向について新たな気づきを得られた方がいらっしゃいましたら幸いです。

それではまたっ!

 

※ちなみに、「これから高配当株投資を始めよう!」という人には

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2019.08.20

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2022年10月追記

2022年9月26日、

株式会社SBIネオモバイル証券は、株式会社SBI証券と経営統合することが発表されました。

これに伴い、SBIネオモバイル証券の新規口座開設は2022年10月7日をもって受付が停止されています。

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2019.08.03

※投資にはリスクがあることを正しく認識し、ご自身の判断と責任により行って下さい。

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ABOUTこの記事をかいた人

こびと株.comの管理人。一部上場企業での経理/財務の実務経験10年超、日商簿記1級、証券アナリスト、FP資格を有する「企業と個人のお金の専門家」。4つの財布(給与/配当/不動産/事業収入)を駆使して経済的自由を達成することを目標に奮闘中。