2015年以来、当サイト運営メンバーは、かのんちゃん(キヤノン株)を優良な高配当株「こびと株」として取り扱ってきました。
けれども2020/7、かのんちゃんは33年ぶりの減配を発表しています。
現在では、かのんちゃんを「こびと株」と呼び続けていいものか、疑問のある状況と言わざるを得ません。
33年ぶりの減配を発表した決算の概要や、当サイト運営メンバーの、今回の減配に関する見解は、以下の記事をご覧ください。
目次
キヤノンの配当金は期待できる?要点だけ知りたい!

こびと概要

項目名 | 内容 |
---|---|
本名 | キヤノン |
誕生月 | 1937年8月 |
仕事の内容 | カメラ、プリンター、複写機、半導体装置等の製造・販売 |
配当献上月 | 8月(予定) 3月(予定) |
特徴 | 【グローバル化と多角化に強み】 ・売上高約3.8兆円 アメリカ3割、ヨーロッパ3割、アジア/オセアニア4割 ・世界シェア第1位 デジタルカメラ、レーザープリンタ ・世界シェア第2位 複写機、インクジェットプリンタ、半導体露光装置、FPD露光装置 【高い技術力】 ・米国特許登録件数世界第3位 |
主なリスク | ・主要市場の経済環境の変化 ・金利、為替リスク(円高で悪影響、円安で追い風) ・原材料価格の変化 |
重要項目No.1:投資効率
「投資額の何%の配当金を得られるか?」
「株価の下落リスクは低いか?」
以上2点を確認します。

配当利回り 4.01%
PBR 0.83倍
(※どちらも2021年1月8日の終値ベース。)
重要項目No.2:配当姿勢
「オーナーに対する配当をどのように考えているか?」を確認します。

中期的な利益見通しに加え、将来の投資計画やキャッシュ・フローなどを総合的に勘案し、配当を中心に、安定的かつ積極的な利益還元に取り組むことを基本方針としております。
当期の年間配当金につきましては、安定的かつ積極的な株主還元を実現するため、前期配当金と同額の1株当たり160円(中間配当金は支払済みの80円、期末配当金は80円)といたしました。
(出典:「2019年12月期 キヤノン有価証券報告書」の「配当政策」より一部修正・抜粋)
32年間一度も減配していないのが自慢だった、かのんちゃん。
公式サイトでも、こんなグラフを掲載して「経営努力の積み重ねによる永続的な企業価値の向上を通じて株主の皆さまに貢献していく」と謳いあげていたわけですが…

(出典:キヤノンHP 投資家向け情報「Q8株主還元についての考え方は?」)
2020/7、コロナショックを受けて、減配を発表。
また、スタンダード・アンド・プアーズという格付け会社からも「格下げ方向で検討中(クレジット・ウォッチに指定)」と発表がありました。
重要項目No.3:配当継続力
「最近の配当実績と同水準の配当を何年間継続できるか?」を確認します。

① 20.2年(調整後利益剰余金ベース)
② -0.4年(修正ネットキャッシュベース)
修正ネットキャッシュベースの配当継続力は、とうとうマイナスになってしまいました。
※そしてやってきた、減配。やはり、ネットキャッシュベースの配当継続力の方が、指標としては優秀なのかもしれませんね。
以上、こびと概要と3つの重要項目をチェックしてきました。
「このこびと株に興味を持った!」という方は、以下「もっと詳しく知りたい!」をご覧になって下さい。配当に関連する主要情報について、さらに詳細なデータを記載してあります。
キヤノンをもっと詳しく知りたい!
主要財務情報(直近10年)
(1)損益計算書・貸借対照表関係
一覧表(Excel Onlineのデータを表示します)
【筆者3点コメント】
①一貫して安定した財務体質。株主資本比率・流動比率ともに比較的安定しており、それなりに安心感のあるこびと株です。
②技術を背景として高い営業利益率(9~10%程度)を誇っていましたが、ここ数年はかなり業績が苦しそうです。特に2019/12月期の営業利益率は5%をきってしまいました。先行きに暗雲がたちこめています。
③株式時価総額日本国内34位、従業員数約19.5万人、総資産5兆円弱の、押しも押されぬ大企業。
日本の雇用者数は約5,722万人(出典:総務省統計局労働力調査平成28年8月分)です。つまり、キヤノンの従業員数の20万人という人数は、日本の雇用者数の0.3%という規模なのです。(実際には、キヤノンの従業員数はアメリカ、アジア、ヨーロッパなど世界各地にいます。)
また、スロベニアのGDPは2016年時点で387億ユーロ(出典:外務省-スロベニア基礎データ)です。1ユーロ137円で換算すると、スロベニアのGDPは5.3兆円。キヤノンの総資産は、スロベニアのGDPに迫る金額なのです。
財務安全性が高く、利益率のよい巨大企業、キヤノン。今後は「今の姿とは全く違う新しいキヤノンへと変革」(出典:キヤノン株式会社2016年経営方針説明会資料)していくと宣言しています。
今後の財務安全性や利益率がどうなっていくと予測するかが、このこびと株の評価の分かれ目になるのかもしれません。
(2)キャッシュフロー関係
一覧表(Excel Onlineのデータを表示します)
【筆者3点コメント】
①過去10年間一貫して、プラスの営業C/F、マイナスの投資C/F。
投資C/Fマイナスの主因は、毎期2,000~5,000億円程度の固定資産取得。(ただし2015年12月期は、投資による支払額(アクシス社の買収など)、2016年12月期は事業取得額(東芝メディカルシステムズ関連)が主因)。財務C/Fは例年マイナス(配当金の支払が主因)。2016年12月期のみプラス(長期債務の借入が主因)。
②2019年12月末のキャッシュ残高は4,128億円で前年の8割程度。ここ10年間なかったレベルでキャッシュが減少しています。
③2019年12月期の年間配当金160円をベースにすると、配当総額は約1,700億円。2019年12月期のFCFは約1,300億円では、とてもまかなえません。投資の金額をコントロールしつつ営業C/Fを伸ばすことが期待されます。
直近10年の株価推移

最近の株価は、直近10年の最安値を更新するレベル。今後の展望によって、「ただのダメ株」なのか、「むしろ買い時」なのか、判断が分かれるところかもしれません。
こびとの過去のつぶやき
こびと目線での決算速報やIR解説などを記事にしています。
ゆるゆるピックアップ!
観音様の御慈悲にあやかり世界で最高のカメラを創る夢を実現したい
(出典:キヤノン株式会社HP キヤノンロゴ)
「KWANNON」と名付けられたカメラの最初の試作機には、こんな願いが込められ、こんなロゴが使われていたそうです。
観音→Canon…!かのんちゃんが観音さまだったなんて…!!
(最終更新日:2021年1月9日)
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