こびと株.com(@kobito_kabu)がお送りする、毎月更新の定例記事です。
※データが多すぎて記事が重いです。すみませんm(_ _”m)
抽出時期 :各月末
対象市場 :東証一部、東証二部、東証JASDAQ
配当利回り:税引き前3.75%以上(税引き後3%)※復興特別所得税は無視
目次
サマリー
2020年9月30日時点
全体指標
- 日経平均:23,185.12円(前月比+45.36円)
- 日経平均PBR:1.09倍
- 日経高配当株50配当利回り:4.87%(前月比+0.73%)※銘柄入れ替えにより大幅UP
- 円/ドル:1$=105.45円
配当利回りが3.75%(税引き後3%)以上の企業数
全部で262社。先月より6社減少しました。
- 一部上場 :186社(前月比 -5社)
- 二部上場 : 29社(前月比±0社)
- JASDAQ上場 : 47社(前月比 -1社)
全体感
9月の投資トピックスについては、こちらの記事で解説しています。
ダイジェストで、要点をまとめるとこの通り。
まずは日本株。
- 日経平均株価・TOPIXは、ほぼほぼコロナ前の水準
- 諸外国と異なり、9月も株価はほとんど下がらなかった
- J-REITはオフィス・ホテル系REITが弱く、まだまだ暴落前水準に戻らず
- 景気動向指数・景気ウォッチャー指数などの「景気の全体感」を見る指標は回復傾向だが弱い
- 菅政権誕生も、大きな変動ナシ(ただし通信株はクラッシュ)
結論:相変わらず不景気の株高状態 → 全力で買う雰囲気ではない
次に外国。
先進国G7の、直近1年のパフォーマンスはこの通り。
- S&P500(米国):+11.37%(9月に入ってから下落傾向)
- 日経平均(日本):+6.06%
- DAX30(ドイツ):+0.71%
- S&P TSX(カナダ):▲3.77%
- FTSE MIB(イタリア):▲15.07%
- CAC40種(フランス):▲16.15%
- FTSE100(イギリス):▲21.32%
- 9月単月で見ると、G7先進国(日本除く)で下落傾向
- ゴールドや債券も9月は下落
- GAFAMを中心とするハイテク株も下落
- 高配当株ETFの配当は、HDVほぼ前期並み・VYM約1割減・SPYD約4割減と明暗が分かれた
結論:日本以外の先進国株・米国債・ゴールド等、すべて下落
この記事でピックアップする高配当株も、相変わらず
× 積極的に買いまくろう
〇 現金を残しつつ、軽めに買おう
という感じです。
それでは、単に配当利回りが高いだけじゃない「優良高配当株」がないか、物色していきましょう~。
配当利回りランキング(東証一部上場)
- ※エクセルオンラインのデータが表示されます
- 証券コードをクリックすると、Yahooファイナンスのページに飛びます
※1 「-」は、前月ランク外であった銘柄
※2 2017年1月以降で、月末の配当利回りが3.75%を超えていた月の数
この3つを、順番に見ていきましょう。
- 利回り5%超!超高配当銘柄について
- 通信株(NTTやKDDI等)について
- 新規登場銘柄について
①利回り5%超!超高配当銘柄について
配当利回りが5%超・上位50社に入る「超高配当銘柄」のうち、人気のある銘柄ついてザっとコメントしておきます。
基本的には
- 今後の業績不安(低成長orマイナス成長)
- 減配リスク
が”相対的に”大きい銘柄だと思って頂いてOKです。
「人気の不人気銘柄」という矛盾を抱えた銘柄ですね(笑)
[2914] JT:8.02%
世界的なトレンドになっているESG投資(環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)を考慮した投資のこと)に、逆行した銘柄です。タバコは、健康被害をまき散らすからです。
株価は3年ちょっとで半値以下、ボロクソに言われているかわいそうな子。
JTの収益力・財務を見るに、減配リスクは言われているほど大きくないと思っています(増配期待は低い)。
まだ保有していないなら、ポートフォリオの利回りを高めるスパイスとして入れても良いかなと。オワコン扱いされてますが、海外事業はわりと頑張ってます。
販売本数の減少を、値上げで華麗にカバー。コロナ影響も比較的小さめです。
(出典:JT決算資料)
[8316]三井住友FG:6.51%
EPS(1株あたり当期純利益)が「2022年ぐらいにはコロナ前の水準に戻るやろ」と思っている人は、買っても良い利回りかなと思います。後述しますが、棚からぼた餅もゲットしています。
※参考として、四季報のEPS/配当金予想を載せておきます。
EPS(1株当たり利益) | 1株あたり配当金 | |||
---|---|---|---|---|
2019年3月期 | 520.0 | 180 | ||
2020年3月期 | 511.9 | 190 | ||
2021年3月期(予想) | 291.9 | 190 | ||
2022年3月期(予想) | 496.2 | 190 |
[8306]三菱UFJFG:6.01%
三井住友FGに同じ。
銀行株は世界的にパフォーマンスが悪いですが、日本のメガバンクは、ちょっと過小評価されている感じがしますね。
※参考として、四季報のEPS/配当金予想を載せておきます。
EPS(1株当たり利益) | 1株あたり配当金 | |||
---|---|---|---|---|
2019年3月期 | 66.9 | 22 | ||
2020年3月期 | 41.0 | 25 | ||
2021年3月期(予想) | 42.8 | 25~26 | ||
2022年3月期(予想) | 56.1 | 25~27 |
[8053]住友商事:5.56%/[8058]三菱商事:5.33%
バフェットが株主になったことで注目が集まった総合商社株。
コロナにより
- 赤字転落・減配に沈んだ住友商事と
- 黒字キープ・増配の三菱商事
どちらが欲しいかと聞かれたら、三菱商事です。個人的には、5大商社ではなく3大商社に注目していきます(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事)。
[1808]長谷工コーポレーション:5.07%
マンション建築首位。不景気に弱い建設株です。
リーマンショックで業績が悪化して以後、2013年までは無配でした。こういう企業は、超長期の高配当株投資に向かないので、私は投資対象にはしていません。
②【話題】通信株について
9月16日に第99代内閣総理大臣になった菅さんは、通信株に対してこういうスタンスです。
菅義偉官房長官は3日夕、携帯大手3社の営業利益率が20%を維持しているとして、「ものすごく問題がある」と語った。
(出典:菅氏、携帯3社営業利益率20%「ものすごく問題」-解散は状況次第)
※赤字は筆者。
国民の財産である電波を提供する「許認可事業」「公益性の高い事業」をやっていながら、暴利をむさぼるとは何事か!ということですね。
そうだそうだ!もっと言ってやれ!
※格安SIM推奨委員会(実在しません)実行委員の私としては、菅さんの意見には賛成です
これらを受けて、通信株は軒並み約20%ほどの暴落。
このドサクサに紛れて、NTTはNTTドコモをコドモ化する計画を発表しました。
NTTは29日、NTTドコモを株式公開買い付け(TOB)を通じて今期(2021年3月期)中に完全子会社化すると発表した。
買収にかかる資金は約4兆円ほど。その大半を、
- 三菱UFJフィナンシャルグループ
- 三井住友フィナンシャルグループ
など、メガバンクからの融資で賄います。それぞれ、1兆円を超える融資になるので、メガバンクも美味しい思いができるというワケ。
まさに棚からぼた餅。
地銀が汗をかいて数千万円単位の融資案件をかき集めるなか、メガバンはたった1発で1兆円規模の融資を手に入れる。いや~、さすが我らが東京中央銀行です。半沢直樹もニッコリ。
さて、現状の配当利回りは、こんな感じ。
- NTT(日本電信電話):4.65%
- KDDI:4.52%
- ソフトバンク:7.30%
少し前までは考えられなかった高利回りです。
魅力的な利回りですが、私は買い増しはしません。通信株は、コロナ禍における心のオアシスでしたが、事情が変わってしまいましたね。
上記の企業が収益性・財務に優れる優良企業であることには変わりませんが、こうなってしまった以上、高配当ポートフォリオに占める比率は減らすべきと判断しました。
※ポジションを残す理由は、安定した配当が出続けるだろうという見立てと、通信産業自体には成長余地もあると思っているからです。
幼稚園の頃にお世話になっていた先生が、虚ろな目で自販機のつり銭ポケットを漁りながら「国策には逆らうな…」と言っていたことが思い出されます。お国に逆らってはいけません。
もちろん作り話です。
③新規登場銘柄
高配当株ランキングに登場してきた新銘柄は、2つです。
[9142] 九州旅客鉄道:4.14%
コロナによって戦後最大レベルの苦境に立たされている「鉄道業」です。
業績をざっと見ると「災害さえなければ、悪くない」という感じ。
- 熊本大地震
- コロナ禍
- 令和2年7月豪雨
などの災害の影響を強く受けている会社ですね。
現在は、
- 強味の観光列車や新幹線でコロナ影響甚大
- 多角化で取り組んできた不動産や流通・外食セグメントも厳しい
ということで、営業赤字に転落中。
それでも9/24、配当は前年と同額を維持すると発表しています。(ただし中間配当ナシの期末1回配当に切り替え。コロナ感染再拡大の場合は減配もあるかも。)
2017/3期~2019/3期は15%前後の営業利益率を叩きだしていましたし、増収傾向でもありました。決して、財務状態の悪い会社ではありません。
鉄道業というのは、もともと(コロナでもなければ)こんな配当利回りにはなりえない業種です。今までまったくのノーマークでしたが、今後情報を集めていこうと思います。
[9717] ジャステック:5.69%
- 営業利益率12%超
- 自己資本比率80%超
- 10年間定額配当
- コロナ禍でも増収増益中
「これで5.69%なら検討の余地アリやん」と思いきや、創業50周年記念配当による高配当化でした。
普通配当のみだと2.14%程度。高配当株とは呼べません。
最後に、高配当株ランキングにランクインしているワケではないのですが、気になった銘柄があるので紹介します。
[2670]ABCマートです。
現状の配当利回りは3.11%ほどですが、ポートフォリオの分散を効かせるのに役立つかなと。
ちょっと深堀りして見てみましょう。
靴の小売専門店、最大手。
- 売上高(2020年2月期):2,723億円
- 営業利益率:15.9%
- ROE:10.98%
- 自己資本比率:87.0%
- EPS(1株あたり利益):359.92円
- 配当金:170円
- 配当性向(配当金/EPS):47.2%
絵に描いたような、高収益・好財務のキャッシュリッチ企業です。
まず、株価の推移を見てみます。
10年チャートです。
2015年まで右肩上がりを続け、そこからはグダグダです。
なぜこんなチャートになっているのか?売上や利益を見ていきます。
まず、売上高はこの通り。
(出典:IRBANK。以下同じ。)
EPSは、この通り。
EPSは超重要指標。これが伸びない会社に投資してはいけません。
EPSというのは、1株あたり当期純利益のこと。売上が伸びているのにEPSが伸びていないということは、売上の伸びに利益がついてきていないということです。
つまり、コストがかさんで収益性が落ちている。
というわけで、営業利益率の推移を見てみると、この通り。
ABCマートを、ただの「靴の小売店」と侮ることなかれ、2015年ぐらいまでは「泣く子も黙る成長企業」でした。利益率の高いPB(プライベートブランド)商品を軸に、荒稼ぎしてたんですね。
しかし、見てきた通り、市場競争が激しさを増すにつれ、段々と収益力が低下してきています。
業績が伸び悩んでいたところに、コロナが直撃。
人々は巣ごもり消費に励み、まったく外を出歩かなくなってしまいました。そらぁ靴は売れんわ。
直近の決算(2020年3月~5月)では、この惨状。
(出典:ABCマート決算資料)
- 売上40%減
- 利益90%減
と、大ダメージを受けています。
毎月公表されている、月次業績の推移も良くありません。
(出典:ABCマート月次情報)
いったん回復しかけたかに思えた株価は、またしても急落。
某証券会社も、目標株価を引き下げました。
散々な状況ですが
- 減配予定なし
- ABCマートの自己資本比率は87.0%、事実上の無借金経営
- 総資産3,000億円のうち、1,500億円は現預金や有価証券等(スーパーキャッシュリッチ。使ってないなら株主にカネ返せ)
- 多額の設備投資や研究開発費が不要で、キャッシュフローも良い
- 株式の60%以上を創業者一族が保有しており、配当意欲は低くなさそう
ということで、「不況を乗り切れずに減配する会社」には見えません。
配当利回りの推移はこの通りで、過去10年、3%台で買えるタイミングはありませんでした。
- 成長企業から、成熟企業となり
- 今後は、業績を維持(低成長)させつつ
- 配当による株主還元を増やしていく
というフェーズの企業と言えますね。
巣ごもりは永遠には続きませんから、いつか「靴を求めるお客さん」は戻ります。それに賭けて「売り込まれてる今」のタイミングで仕込むかどうか、というところ。
私が高配当株投資で心がけているのは
- 高利回り銘柄(一般に、低成長)と
- 中利回り銘柄(一般に、中成長)を丁寧にブレンドして
- ポートフォリオ全体でそれなりの配当利回りを維持しつつ
- 元本部分の保全・成長性にも気を配る
ということ。
3%という利回りの銘柄には「成長性」も求めたいところです。
そういう観点では、ABCマートは「おお!まさにこれが欲しい!」というレベルではありません。EPSの大きな成長に期待できないからです。
買うにしてもあくまでも「セクター分散のための投資」という視点。小売業の高配当株というのはなかなか見当たらないので、そういう意味では貴重です。
こういう銘柄入れないと、金融・商社・精密機器・自動車みたいな、景気敏感株ばっかりになっちゃいますからね。
というわけで、ABCマートについては以上!
配当利回りランキング(東証二部上場)
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※1 「-」は、前月ランク外であった銘柄
※2 2017年1月以降で、月末の配当利回りが3.75%を超えていた月の数
配当利回りランキング(東証JASDAQ上場)
- ※エクセルオンラインのデータが表示されます
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※1 「-」は、前月ランク外であった銘柄
※2 2017年1月以降で、月末の配当利回りが3.75%を超えていた月の数
まとめ:もしこびと株メンバーが今月から高配当株投資を始めるとしたら?
ランキングの解説は以上です。
最後に、2019年7月からシリーズ化を開始した「もしこびと株メンバーが今月から高配当株ポートフォリオを作るとしたら」というモデルを出して終わりにします。
※「私たちならこうする」という事例であって、下記銘柄への投資を推奨するものではありません。株式投資には元本割れのリスクがありますので、くれぐれも自己責任でお願い致します。
30万円で今月スタートならこんな感じにします。
※1:ピンクマーカーは、相対的に減配懸念の大きな景気敏感株。
※2:一部、アナリストが予想している減配”後”の利回りで記載しています
※3:待機資金は、高利回りの「中・小型株」が出てきたら買うお金です。宝印刷やニホンフラッシュなどのような会社ですね。
待機枠の資金で配当利回り3.5%ほどの株を買えば、トータルで4.3%もの利回りになります。
これはかなりの高配当です。
セクターの割合は、こんな感じ。
いちどオリジナルファンドを組んだ後は、個々の株価の値動きにはこだわらず
- 全体として長期的に元本を割れなければOK
- 全体として長期的に配当金を出し続ければOK
そういうイメージでやっていきます。
※先月以前にオリジナル高配当株ポートフォリオを作っている方は、下記メンテ方法を参照しつつ買い増しする銘柄を決めていけば良いかなと思います。
10年経てば、配当金だけで40~50%近い投資回収を見込めます。各社の業績が向上しており、市況が良ければ評価額も伸びるでしょう。
日本株に年利何%のリターンを期待するか…ということですが、私はトータルリターンが5%ぐらい取れれば十分だと思ってやっています。
今のところ、目標は余裕でクリアできていますね。
過去何度もおすすめしているとおり、高配当株ポートフォリオを自作するなら、SBIネオモバイル証券が優秀です。低コストで、少額からの分散投資が可能だからです。
日本株は、投資総額1,000万円ぐらいまでの規模なら、この証券口座の方が小回りが利くと思います。
- 1株から購入できる(あの「超優良企業」をおこづかいで買える)
- 月額50万円までの投資なら、サービス利用料が固定で220円(税込)かかるが、毎月ネオモバ限定Tポイントが200pt貰える
- Tポイントを使って株が買える
※大手ネット証券を使って少額分散投資をすると、手数料負けします。
※SBIネオモバイル証券を使った高配当株投資の始め方はこちらの記事をどうぞ。
2022年9月26日、
株式会社SBIネオモバイル証券は、株式会社SBI証券と経営統合することが発表されました。
これに伴い、SBIネオモバイル証券の新規口座開設は2022年10月7日をもって受付が停止されています。
- 最大手・国内株式個人取引シェアNo.1
- 口座開設・口座維持手数料無料
- 1株から購入可能(単元未満株の売買手数料無料)
ちなみに、米国株であればHDVやSPYDといった優れたETFがあるので、これらを活用すれば個別株への投資は不要です。圧倒的にラクですね。
※ハイテク企業を含まない分、株価の回復が遅れておりソコソコの良い利回りになっています。
- 日米の高配当株を中心に、よく分散された高配当株ポートフォリオを作る
- ①追加投資、②配当金再投資、③増配でひたすら配当金を増やし続ける
こうすることで、誰でも月10万円ぐらいの配当金は作れる可能性があるんじゃないかなと思っています。
月10万円あれば、
- 水道光熱費が払える
- 家賃が払える
- 通信費(スマホ代など)が払える
- 保険料が払える
といった感じで、独身なら固定費のほとんどを賄えるでしょう。
ちょっと働けば生きていける水準ですから、セミリタイアも視野に入ると思います。
あるいは、月10万円の配当金を趣味に使えば、相当遊び倒せるでしょう。サラリーマンのお小遣いの平均は3~4万円ぐらいですからね。
全部使い切っても「老後は安泰」ってのは良いですよね。
いずれにせよ、配当金は人生の選択肢を増やしてくれます。コツコツと配当金を増やして、生活を豊かにしていきたいですね。
それではまたっ!
※関連記事です
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