この記事を読むと簿記1級の独学用勉強法がわかります。
- 独学勉強法は、①参考書通読→②ひたすら問題演習→③予想問題で仕上げ!
- 独学用おすすめ参考書は、とおる簿記シリーズ
- 独学用おすすめ問題集は、日商簿記1級 講師が選んだ過去問題集
- 独学用おすすめ予想問題は、日商簿記1級 網羅型完全予想問題集
- 独学はかなり大変!覚悟を決めて取り組もう。
※効率的に勉強したい人・経理実務で簿記を使いたい人は、資格スクールの利用が必須です。
高校2年生11月:簿記3級受検・合格
大学1年生11月:簿記1級受検・不合格
大学2年生 6月:簿記1級受検・合格
- 簿記2級は受検していません。
- 簿記1級は完全独学です。2回目の受検で合格しました。
目次
簿記1級試験の特徴
特徴①:試験科目
試験科目は
- 商業簿記
- 会計学
- 工業簿記
- 原価計算
の4科目です。
内容的には、①商業簿記と会計学、②工業簿記と原価計算が似ています。
主催団体でも、出題区分を、①商業簿記と会計学で1つ、②工業簿記と原価計算で1つの表にまとめているほどです。(「商工会議所簿記検定試験出題区分表」より)
試験時間は、
- 商業簿記と会計学:90分
- 工業簿記と原価計算:90分
それぞれ90分ずつの計180分となっています。(①と②の間には休憩が入ります。)
特徴②:合格ライン
70%以上得点することができれば、合格となります。ただし、科目ごとの得点が40%以上必要です。
つまり、1科目25点×4科目の試験で
- 4科目の合計で70点以上
- 4科目それぞれで10点以上
得点しなくてはいけないということです。
②の制限にひっかからないためには、苦手科目をつくらないように勉強していく必要がありますね。
特徴③:合格率
過去4回の平均は約10.8%。合格率はかなり低く、国家資格なみの難易度となっています。
特徴④:出題傾向
日商簿記検定の1級では、出題された問題のうち
- 難問は解かない
- 難問以外は確実に解く
ことが重要です。
「8割の問題に取り組み、9割正答する」というようなイメージです。
科目別の最低点が設定されていることからも、捨て科目・捨て論点を作らないことが試験対策のポイントのひとつになります。
日商簿記検定1級と、よく対比される試験に、税理士試験の簿記論という科目があります。この科目には、50%程度の得点で合格することができます。
ボリュームがかなり多い(試験時間内に解き終わらない分量)ことから、問題の取捨選択をしつつ部分点を拾っていく試験になります。「7割の問題に取り組み、7割正答する」というようなイメージです。
- 難問以外は着実に点を取るのが簿記1級
- 問題を取捨選択して部分点を拾いにいくのが簿記論
特徴⑤:配点
簿記1級の場合は傾斜配点という仕組みがあります。合格率を調整するための仕組みです。
多くの場合、「正答率の高い問題の配点が大きく、正答率の低い問題の配点が小さく」なります。
つまり、
- みんなが解ける問題は、解けないとヤバイ
- みんなが解けない問題は、解けなくてもOK
ということです。
簿記1級を独学で取得するメリット・デメリット
独学のメリット
- 自分のペースで勉強できる
- 費用が安い
なんといっても、独学の最大のメリットは自分のペースで勉強できることだと思います。場所や時間も自由になりますから、
- まとまった時間がとれない人
- 短期間に詰め込んで勉強したい人
- 何年もかけてコツコツと勉強したい人
などは、独学が有力な選択肢になると思います。
また、費用が安いのもうれしいポイント。簿記1級を資格スクールで学ぶには、10万円前後の費用がかかります。(ざっくり通学で15万円前後、Web通信で10万弱が相場でしょうか。)
これに対して、独学であれば費用はテキスト代のみ。2~3万円程度で済むでしょう。
※簿記1級の勉強時間は、800~1,000時間程度と言われています。1回2時間の勉強として、400~500回分のカフェ代がかかるわけです。例えば400円×400回なら、16万円!スクール代を超えてしまう可能性もありそうです。
独学のデメリット
- 内容の理解が難しい
- 試験上のポイント・テクニックがわからない
- 時間がかかる
私は、独学で簿記1級に合格しました。合格はしましたが、「試験内容がきちんと理解できていた」とはとても言えません。
- よくわからないけど、これとこれを足せば正答できる
- なんでか知らないけど、この科目がでてきたら掛け算だ
- とにかく答えは〇〇法なんだっ! …etc.
パズル的な解法や丸暗記で対応した部分が多かったからです。
経理の仕事を始めてすぐに、自分が簿記を理解していないことに気がつきました。実務がさっぱりわからなかったのです。
「とりあえず資格が欲しい」という方は、独学もアリだと思います。
でも、経理の実務者を目指す人は、ぜひ、はじめから予備校を利用して「深い理解」をしておいてください。
実務では、必ず差がつきます。
勉強時間については、予備校利用で600時間程度、独学で800-1,000時間程度と言われています(もちろん個人差はあります。特に独学は個人差が大きいです。)。
プロ講師の授業の有無は、こんなにも勉強の効率を左右するということですね。
独学のメリット・デメリットまとめ
結論からいうと、独学はかなり大変です。
このあと、独学に適したテキストや勉強法についてはみっちり解説しますが…正直、個人的には資格スクールの利用をおすすめしたいというのが本音です。
簿記1級は価値の高い資格ですから、スクール費用くらいは軽く回収可能だと思います。
通学が難しければ、通信講座の利用も検討してください。通信講座なら勉強の時間は自分の好きなように選べますし、価格も通学講座よりは安く済みます。
※ネット上で「簿記1級は独学可能!」と言ってる人たちの中にも、「通信講座の利用者」が実は含まれているようです。
が良いと思います。どちらも自信をもっておすすめできます。
まずは資料だけでも取り寄せてみてください。
ネットだけではわからない情報が載っていますから、パンフレットを見ながら、独学・クレアール・大原を比較検討するのが◎です。それぞれのスクールの特徴も、資料をみれば一目瞭然です。
資料請求はもちろん無料。クレアールなんかはサンプル教材もついてきますし、もらっておいて損はない資料だと思いますよ~!
簿記1級の独学用おすすめテキスト
まずはテキストを用意しましょう。良いテキストに出会えるかどうかは、試験の合否を左右するとても重要な要素です。
簿記1級は試験範囲が広いですから、テキストもかなりのボリュームになります。全てそろえると、2~3万円になると思います。
少々痛い出費に思えるかもしれませんが、ここはケチるところではありません。スクール利用に比べれば費用面では有利なわけですから、必要なものはきちんと購入してメリハリをつけましょう。
おすすめテキスト①:参考書
参考書としては
- スッキリわかる
- 簿記の教室(簿記の教科書)
- よくわかる簿記
- スラスラできる
- とおる簿記
- サクッとうかる
といったシリーズが有名です。
この6シリーズの参考書(テキスト)は、基本的にどれもよくできています。
この6つの中から選択するのなら、どれを選んでも致命的な欠陥はありません。
※あえてマイナーなシリーズを利用する理由はありません。この6つ以外は、選択肢から外してしまって問題ないと思います。
6シリーズの違いを理解するために、まずはそれぞれの作成者を見てみましょう。
- TAC(スッキリわかる・簿記の教室・よくわかる簿記)
- 大原(スラスラできる)
- ネットスクール(とおる簿記・サクッとうかる)
①と②は、ご存知の通り、大手の資格スクールです。
彼らの作る参考書は、あくまで「資格スクールの授業で使うため」の参考書。出版されている各シリーズも、その焼き直しにすぎません。
もちろん経験豊富なプロの講師の知恵が詰まった良い参考書ではあるのですが、必ずしも独学に最適とは言えません。
講師による補足説明がないと
- 内容理解のポイントはどこか
- 暗記してしまったほうがいいのはどこか
- 試験上重要なのはどこか
- 試験を考えると飛ばしてもかまわないのはどこか
といったことがわかりにくいからです。
一方、ネットスクールの会社情報には
簿記検定をメインとした書籍、教材の作成とサポートを通して学習者を支援しています。また、現在インターネットを使用したWEB上での生講義を行っており、『とおる』シリーズや『サクッと』シリーズ・その他刊行書籍の著者等が講義を行っております。
(ネットスクールホームページより一部抜粋)
と記載されています。
講座ではなく、書籍の刊行がメインであることがうかがえる文章ですね。
実際に、ネットスクールのとおる簿記シリーズは、講義無しでも十分に理解がすすむように作られています。
テキストの構成通りに読んでいけば、順々に理解が深まるようになっています。簿記1級初学者さんには、特におすすめのテキストです。
説明もわかりやすく、読みやすいので、気に入っています。
とおる簿記シリーズ4冊をきっちり理解すれば、1級合格は間違いありません!
ちなみに、「サクッとうかる」というシリーズも、ネットスクールの出版です。
こちらは、短期合格を目指す人のためにポイントだけを絞った参考書です。ポイントが絞られている代わりに、試験範囲のすべてはカバーされていません。
独学だけで簿記1級取得を目指す以上、きちんと理解して1つずつ進むことが重要です。
ですから、試験範囲をきっちりカバーしている「とおる簿記」シリーズをおすすめいたします♪
日商簿記検定2級の出題範囲が、28年度から3年間で段階的改定されています。
例えば、
- 平成28年度から:自社利用ソフトウェアや貸倒引当金の個別評価等に関する論点
- 平成29年度から:課税所得の算定方法や連結会計の一部等の論点
が、2級の出題範囲に加わりました。
このため今後は、これらの論点に関する解説が、簿記2級の参考書に掲載されるようになっていきます。
当然、簿記1級の参考書からは削られる可能性が高いわけです。
おすすめテキスト②:問題集
次に準備するのは、問題集です。合格のためには絶対に必要なアイテムです。
おすすめ問題集はこちら。参考書と同じく、ネットスクールのものです。
過去問を論点別に解くことができるのがポイントです。
さらに、各論点内では問題が難易度順に並べられていて、かなり使いやすい問題集だといえます。
3回分の過去問については、論点別ではなく、1試験分通して解くことができるようになっているのも良いですね。
直近の過去問については、資格スクールの無料送付サービスを使って入手してください。
例えばクレアールの冊子プレゼントでは、問題・解答・解説が入った模範解答冊子を無料で受け取ることができます。
※リンク先ページの「試験情報・お知らせ」から「解答速報掲載&模範解答冊子プレゼント」をご覧ください。
おすすめテキスト③:予想問題集
最後に、予想問題集です。
- 試験時間にあわせて集中力を保つ練習
- 各問題にかける時間配分の練習
のために使用します。
おすすめ予想問題集はこちら。こればかりは、大手資格スクールのものを使うべきです。
大手の資格スクールは、それだけたくさんのデータを持っています。受験生のレベルについても詳しいですし、最近の出題傾向に関する調査も当然進めています。
「大手資格スクールを上回る精度で問題予想ができる人はいない」と言い切ってよいと思います。
テキスト購入直前に確認してほしいポイントが1つあります。
各シリーズ本の「最新版かどうか」です。
簿記は、出題範囲・出題傾向がしばしば変化する試験です。
簿記1級独学勉強法
では、入手したテキスト類を使って、早速勉強にとりかかりましょう!
独学勉強法ステップ1:参考書を通読
まずは購入した参考書を、流し読みします。流し読みですから、あまり時間をかける必要はありません。
この段階では、わからないところがあっても無視して進んでください。
簿記は、「習うより慣れろ」の世界。問題演習をしているうちにわかってくるものも多いので、最初から全部理解する必要はありません。
独学勉強法ステップ2:ひたすらに問題演習
独学で簿記1級に合格するための肝は、問題演習です。
特に、過去問を使った問題演習が効率的です。実際に試験に出題される問題のレベルやクセに慣れながら、どんどん解き進んでください。
参考書をさっと通読しただけで過去問を解き始めますから、はじめは正解することができません。正解どころか、解き方がさっぱりわからないこともあるでしょう。
- 問題に取り組む
- わからない・間違える
- 解説を読む
- 理解する
これを繰り返すことで、だんだん解けるようになっていきます。
わからなかった問題・間違えた問題については、翌日以降に解き直しをしましょう。
購入した「日商簿記1級 講師が選んだ過去問題集」の問題全てについて、「最低1回以上は正解した」と言えるところまで繰り返して下さい。
独学勉強法ステップ3:予想問題にチャレンジ
問題演習が進んできたら、予想問題にチャレンジしましょう。
模擬試験だと思って、時間を測って取り組んでください。そうすることで、
- 各問題への時間配分を工夫する
- 試験時間いっぱい集中力を保つ
- 難問・奇問は解かない
など、試験上重要なテクニックも身に着いていくはずです。
解き終わったら採点と復習。間違えてしまった問題は、参考書に戻って理解を深めましょう。
こちらについても、翌日以降の解き直しがおすすめです。
ステップ3までカンペキにこなせば、合格水準の力が身に着いているはず。
もしも途中で心が折れそうになったら、以下の記事を読んでみてください。
簿記1級独学のポイント
学習上の注意点です。
ポイント①:捨て科目を作らない
「簿記1級試験の特徴」で解説したとおり、この試験、各科目40%以上の得点が合格の要件になっています。
例え合計点が70%を超えていたとしても
- 商業簿記: 8/25
- 会計学 :13/25
- 工業簿記:25/25
- 原価計算:25/25
といった得点(合計71/100)では不合格になるわけです。(商業簿記が25点の40%である10点を下回っているからです)
苦手科目を作ってしまうと、かなり苦労することになります(体験談)。
4科目とも、まんべんなく勉強しましょう。
ポイント②:捨て論点を作らない
簿記1級試験に合格するためには、7割の得点が必要です。8割の問題を、9割の正答率で解くイメージです。
これはつまり、難問・奇問以外は確実に得点しなくてはならないということです。
また、簿記1級試験には傾斜配点の仕組みもあります。みんなが正答する問題を解くことができないと、合格は一気に遠のきます。
ポイント③:難関論点を押さえる
簿記1級試験には、特に難易度の高い論点がいくつかあります。
例えば連結会計やヘッジ会計。取引のイメージがつかみにくく処理も複雑でわかりにくいので、つまづきやすいです。得点が伸び悩み、嫌いになってしまう人も少なくありません。
しかし、だからといって、それらの論点を捨ててしまうわけにはいきません。捨て論点を作らないことが、合格のために重要だからです(ポイント②参照)
これらの論点については、きっちり時間をかけて理解するのがおすすめです。腹をくくってその論点にどっぷりはまり、十分に理解して、得意論点に仕上げてしまうのがよいでしょう。
具体的には
- 専門書を読む
- 会計基準を読む
といったやり方があります。
専門書は、本屋さんにたくさん並んでいます。
例えば「図解でざっくり会計シリーズ」。
「図解でざっくり」のシリーズ名どおり、「図で理解する」がコンセプトの本です。監査法人編集のしっかりした内容でありながら、比較的わかりやすい書きっぷりです。
会計基準は、簿記のルールの原点です。本気で取り組むなら一度は見ておきたいものです。
特に、「簿記1級に合格したら、経理の実務をやってみたい!」と思っている人にはおすすめです。
経理実務の現場ではしばしばお世話になるからです。
読みやすい文章とは言い難いのですが、早いうちに慣れておくことで、実務をはじめてからのアドバンテージになると思います。(ASBJ(企業会計基準委員会)のHPはコチラ)
ポイント④:必ず手を動かして問題を解く
簿記3級・2級に合格したみなさんなら、もうお気づきかもしれません。
簿記は、手を動かさないとできるようになりません。わかるようになりません。
こういう勉強法は、簿記には向いていません。
これが簿記に向いている勉強法です。
ポイント⑤:試験前夜はよく休む
「試験の前夜に必死に勉強する」ことはおすすめできません。
試験前夜にやるべきことは
- 難易度が低めの問題をささっと解いて、自信をつける
- リラックスしてよく休み、頭がスッキリした状態をつくる
の2つです。
試験前夜は「実力アップの時間」ではなく、「本番で実力を発揮できるように整える時間」なのです。
独学簿記1級まとめ:独学には覚悟がいる…!
簿記1級は、独学でも取得可能です。ただし、それは決して楽な道ではありません。
- 時間を効率的に使いたい人
- 自分でペースメイクするのが苦手な人
- 簿記を経理の実務で使いたい人
こういった人は、予備校(クレアール・大原)を利用して簿記1級を取得した方が良いでしょう。
ちなみに、独学で挑戦する場合でも、資料請求してパンフレットを見ておくのはオススメです。カリキュラムをマネできるからです。
独学の場合は
- 良いテキストをそろえる
- 問題演習を重視した勉強をする
- 捨て科目・捨て論点を作らず、難関論点の理解にきちんと時間をかける
あたりが重要になってきます。
おすすめテキストは以下の通りです。
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それではまたっ!
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