こんにちは、こびと株.comの管理人です。大学卒業後、一貫して上場企業で10年以上経理/財務をやっています。
最近はTwitter経由で色々と経理絡みの相談を受けるのですが、そのなかでこういった質問がありました。
質問:USCPAに合格すると、海外勤務(海外駐在)できますか?
本記事では、この質問にお答えしたいと思います。
なお、アメリカの会計事務所に勤務するなど、本当の意味で「海外で働いている人」は私の身近には一人もいません。なので、USCPAに合格して海外の企業で働けるかどうかは分かりませんm(_ _”m)
一方で、
- 日本法人で雇われて、現在は海外駐在している経理マン
- 海外駐在を経験したことのある経理マン
このタイプは身近にたくさんいます。彼らを参考に、USCPAに合格すると海外駐在できる可能性は高まるのか?海外勤務できるチャンスは増えるのか?についてお伝えしたいと思います。
目次
USCPAの概要
まず、「USCPAの試験制度や難易度について詳しくは知らないよ」という方は、先にこちらの記事をご覧ください。
ざっくり
- 専門の受験予備校を利用しながら
- それとは別に毎日1時間~1時間30分の勉強を1年半続けるぐらいの勉強時間が必要で
- 4科目の合格率はそれぞれ40~50%
- 予備校費用や受験費など、諸々で100万円はかかる
こんな感じの資格です。割とコストのかかる試験です(転職で余裕で取り返せます)。
これらを踏まえたうえで、USCPAを取得して「海外で働くこと」のコスパについて考えてみましょう。
USCPA取得後の海外勤務の可能性について
海外駐在を実現するために必要な3つの前提
アメリカで働きたいのか、ヨーロッパで働きたいのか、アジアで働きたいのか、どのような地域で働きたいのかは人それぞれですが、そもそも海外駐在を実現するためには「前提」を満たす必要があります。
- 会社は、すでに海外にネットワークを築いている
- 会社は、これから海外にネットワークを築こうとしている
- あなたに必要最低限の語学力がある
当たり前の話ですが、あなたの勤務先が海外にネットワークを持っていなければ、海外駐在できる可能性はゼロです。内需メインの会社では、USCPAを取る意味などまったくありません。
日本郵船を代表とする海運業界や、三菱商事を代表とする総合商社などでは、海外の至るところにネットワークを持っています。これらの企業では「海外勤務は当たり前」です。海外勤務から逃げる方が難しいみたいですねw
これから海外進出を強化しようという企業でも、海外駐在のチャンスはあります。ファーストリテイリングに勤める知人に聞いたところ、ユニクロはまさにネットワークを広げている最中で、海外出張の機会も頻繁にあるそうです。
このように、
- すでに海外にネットワークを築いている
- これから海外にネットワークを築こうとしている
このような企業に勤めていて、あなたに必要最低限の語学力があれば、海外勤務のチャンスはいくらでもあるということです。
「従業員を海外に送り込む文化の有無」こそ、あなたが海外で働けるかどうかを決める決定な要素です。個人の特定スキル、つまりUSCPAなどを持っているかどうかはあまり関係ありません。
ここを勘違いして、「USCPAを取れば優遇されて海外に行かせてもらえる」と思い込んでいる人は少なくないように感じます。
海外駐在のためのUSCPA取得はコスパが悪い
「従業員を海外に送り込む文化がある」会社において、海外駐在の可能性は
- 事業環境
- 人員配置
この2つに大きく左右されます。事業環境が良好で人が足りなければ海外に送り込まれますが、事業環境が悪く現地で人を抱える余裕がないなら海外から日本に戻されます。要するに「運次第」ということです。
5年以上海外勤務を希望し続けている同僚Aさんがいますが、彼の希望は未だに通っていません。一方で、中途採用されたBさんが1年目から海外駐在員に選ばれるようなこともあります。
急に、現地の海外現地法人(中国)の社員が辞めてしまったからです。Bさんは、中国語が堪能だったので、すぐに海外に行くことが決まりました(本社の連結決算要員で採用されたんですけどね~。人事なんていい加減なものです)
身もふたもないですが、結局のところ人事は「運」です。
USCPAを取ったは良いけれど、運が回ってこない。こういうことは珍しくありません。USCPAという難関資格に合格しているにもかかわらず、詰めのところで「運に委ねる」というのはおすすめできません。
海外に行きたいからUSCPAを取るというのは、ハッキリ言ってコスパが最悪です。
結論として、
- 海外で経理/財務がしたいのでUSCPAを取ろうと思うのですが、どう思いますか?
という相談に対する私たちの答えは、
- 今の会社で海外事業部のお偉いさんと仲良くなって、運に任せてチャンスを待つか
- 海外勤務が当たり前、もしくはそういうポジションを募集している企業に転職するか
この2つから選びましょう。こういうことになります。
コスパの良いUSCPAの活かし方
では、USCPAはどのように使うとコスパが良いのか?
コスパの良いUSCPAの活かし方ができる人は、こういう人たちです。
- 監査業務に興味があるけど、(日本の)公認会計士試験には合格できない人
- 給与水準の高い大企業に転職したい経理マン
- 給与水準の高い外資系企業に転職したい経理マン
①の人は、USCPAを取得して監査法人に潜り込むことができます。監査法人の採用環境次第ですが、J-SOXなどの導入時には、日本の会計士だけでは人が全く足りず、多くのUSCPAが採用されました。
監査法人の給与水準は決して低くありません。
- 大学受験に失敗し
- 就職活動もイマイチ
という人にとっては、一念発起してUSCPAを取得すると、まさに大逆転のチャンスになりうるということです。USCPAホルダーのブロガーさんに、そういう方もいらっしゃいますよね。
②や③の人にとっても、USCPAは価値を持ちます。「経理マンの年収にまつわる3つの残酷な真実」を読んで頂ければ分かると思いますが、「今の会社で頑張る」は”金銭面で”報われる可能性が低いです。
USCPAなどの優良資格を取ってキャリアアップ(つまり転職)することが、今の会社でいいように使われないために重要です。
※もちろん、年収以外の要素を考慮するなら、「今の会社で頑張り続ける」は全然OKです
まとめ:USCPAは海外勤務に直結しない。上手な活かし方は「転職による年収アップ」
目的と手段が合っていない人というのは、残念ながら存在します。資格の活かし方をいまひとつ理解できていないということです。
- 目的:海外駐在したい
- 手段:USCPAに合格する
これはコスパが最悪です。1000時間以上かけて、100万円以上のお金を払ってやることではありません。
海外駐在したいなら、USCPAのことは忘れて、とにかく語学力をアップさせましょう。そして、海外勤務が当たり前の文化の会社に転職しましょう。そういう会社に入るために必要なのは、USCPAではありません。
海外勤務者としてのメンタリティ・適性をしっかり理解して、アピールして下さい。
USCPAの上手な活かし方は
- 目的:監査法人で働きたい(20代)
- 手段:USCPAに合格する
もしくは
- 目的:日系グローバル企業や外資に転職して年収アップさせたい
- 手段:USCPAに合格する
これですね。これらの成功例はいたるところで見つけることができます。
いずれにせよ、ある程度の若さや実務経験は必要です。まったく未経験の30代後半~40代の人が狙うような資格ではありません。上手に活かせるのか、活かせないのか、きっちり見極めるべきですね。
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