こんにちは、こびと株(kobito_kabu)です。
現在、
- 高配当株投資
- インデックス投資(つみたてNISAやiDeCoのみ)
の両刀で資産運用をやっています。
毎月恒例企画ということで、11月の投資トピックスについて「この2つの投資にどのような影響があるか」という観点で、まとめていきます。
本記事の構成はこの通り。
- 日本株の投資トピックス
- 外国株の投資トピックス
- まとめ:高配当株投資のポジションについて
目次
日本株の投資トピックス
日本株については、以下の順番で解説します。
- 株価指数の推移
- その他指数の推移
- 11月のトピックス
①株価指数の推移(日経平均・TOPIX・J-REIT・マザーズ)
11月30日時点の株価は、この通り。
- TOPIX:1,986pt(-2.20%)
- 日経平均株価:27,969円(-4.55%)
- REIT連動ETF:2,109円(-6.29%)
- マザーズ連動ETF:613円(-18.34%)
※端数は四捨五入。カッコ内は、いずれも「年初来」。
※J-REITとマザーズ指数がグーグルファイナンスから消えてしまったようなので、それらの指数に連動している「ETF」のデータを表示しています。そのため、実際の指数の動きとは誤差があります。
この4つの株価の、年初来の値動きを見てみるとこんな感じです。
11月単月の動きを見ると、この通り。
- マザーズ連動 +6.59%
- TOPIX +2.43%
- 日経平均株価 +1.05%
- REIT連動 -2.38%
11月、最もインパクトがあった出来事は、アメリカの「逆CPIショック(詳しくは海外トピックスで解説)」です。
逆CPIショックの発生以降、
- 株価:大きく上昇
- ドル円の為替レート:約146円→約138円と急激な円高に
という感じで、マーケットが動いています。
日本は、輸出で稼ぐ企業が多く、
- 円安は追い風に
- 円高は逆風に
なりがちです。
②その他指数の推移
この2つをチェックしておきます。
- 景気動向指数
- その他の指数(物価、失業率・求人倍率など)
まず、①景気動向指数(先行指数)について。
9月の数値(11月24日公表)は、97.5となりました。
(出典:景気動向指数 速報からの改訂状況)
景気動向指数は、
- 景気全体の現状を知ったり
- 将来の動向を予測したりするときに
使われる経済指標です。産業、金融、労働など、経済に重要かつ景気に敏感な30項目の景気指標をもとに指数が算出されています。
色々な指標をミキサーに入れてスイッチをいれると、1つの「景気動向指数」ができるというイメージです。
景気動向指数を見る上で大切なのは、この2つ。
- この数カ月、プラストレンドか?マイナストレンドか?
- プラス幅(又はマイナス幅)はどれぐらいか?
ココ1年の推移を見てみると、この通り。
- 10月 100.6(前月比+0.7ポイント)
- 11月 102.0(前月比+1.4ポイント)
- 12月 102.9(前月比+0.9ポイント)
- 1月 101.3(前月比-1.6ポイント)
- 2月 100.2(前月比-1.1ポイント)
- 3月 100.7(前月比+0.5ポイント)
- 4月 102.3(前月比+1.6ポイント)
- 5月 100.7(前月比-1.6ポイント)
- 6月 100.3(前月比-0.4ポイント)
- 7月 98.9(前月比-1.4ポイント)
- 8月 101.3(前月比+2.4ポイント)
- 9月 97.5(前月比-3.8ポイント)←New!!
8月は持ち直したかに見えましたが、9月は大きな下落です。
要因は
- 在庫が増えている(=出荷が不調。増え続ける在庫は、不景気の前触れです)
- 中小企業の売上見通しが悪化している
- 消費者マインドが悪化している
といったところ。
景気動向指数の大幅悪化を受けて、「景気後退確率」は75.8%に上昇しました。
(出典:日本経済研究センター「9月の景気後退確率は75.8%に上昇」)
遡及改定ベースでは、景気後退確率の直近3ヶ月の推移は次の通り。
- 2022年7月:82.6%
- 2022年8月:75.5%
- 2022年9月:75.8%←New!
過去を振り返ると、
- 本景気後退確率が67%を2カ月連続で上回った時期と
- 内閣府が後に景気後退入りと認定した時期
は、ほぼ対応しています。
今は、赤の点線ライン(67%のライン)を超えています。
現状、日本政府は「景気は緩やかに持ち直している」という判断をしていますが、
- 海外景気の下振れ
- 供給面での制約(原材料不足、価格高騰)
- インフレの長期化
など、様々なリスクも存在しています。
次に、②その他の指数について。
まず、消費者物価指数(11月18日発表)。
こちらは、前年同月比+3.6%となりました。
(出典:NHK NEWS WEB「10月の消費者物価指数3.6%上昇 上昇率は40年8か月ぶりの水準」)
値上げが目立つ品目は、
- 食用油…+35.6%(前年同月比。以下同じ)
- 電気代…+20.9%
- ガス代…+20.0%
- スパゲッティ…+19.5%
- タブレット端末…+18.6%
- 携帯電話…+16.5%
- 家具…+14.3%
など。
品目ごとにピンポイントで見ると、かなりのインパクトですね。
なお、政府は、今のインフレを
- ウクライナ情勢に起因する、国際的な原材料高
- 円安
に伴うコストプッシュ型のインフレだと見ています。
つまり、政府としては
「ウクライナ情勢や円安が落ち着けば、インフレも自然とおさまる」
こう考えているということですね。
実際、日銀の黒田総裁は、年明け以降のインフレ率は2%を下回るという見通しを示しています。
政府の目論見が外れインフレが高止まりすると、国民の生活は非常に厳しいものとなりそうです。
※こびと株家には外国株からの配当金があり、増配・円安のおかげで十分なキャッシュフローを得ています。
仕事一本に絞るのではなく、収入を分散させたことの強みを実感しています。やはり、何事も備えが重要です。
最後に、雇用関係(失業率、求人倍率)の指標です。
- 10月の完全失業率…2.6%(前回は2.6%)
- 10月の有効求人倍率…1.35倍(前回は1.34倍)
※完全失業率が2.2%ぐらいまで戻ればほぼ完全雇用=ゴール。
(出典:日経新聞「10月の求人倍率1.35倍、10カ月連続上昇 失業率は2.6%」)
失業率は比較的低い水準で安定しており、有効求人倍率は明らかに上昇トレンドにあります。
日本における雇用環境は「悪くない」と言えそうです。
③11月の国内トピックス
日本株について、今月のトピックはこの2つです。
- 業績・株主還元が過去最高レベル
- 揺れる岸田内閣
業績・株主還元が過去最高レベル
日本企業が好調です。
2022年4月~9月期決算で、全体の27%(4社に1社以上)が過去最高益を更新しています。
これは、2008年の金融危機以降、過去最多の水準です。
(出典:日経新聞「4社に1社が最高益、4~9月 減益・赤字も4割に」)
背景にあるのは、円安・資源高です。
- コマツ、日本電産、キーエンスといった輸出企業が、円安の恩恵を受け
- Jパワー、三井物産、双日といったエネルギー関連企業が、資源高の恩恵を受け
ちょっとした「ウハウハ」状態になっています。
※ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャーが、日本の5大商社株を大きく買い増ししたことも、話題になっています。
一方、原材料高に苦戦している企業も少なくありません。
- 電力大手は、石炭や天然ガスなどの発電燃料の高騰により、四国電力を除く9社が最終赤字
- トヨタ自動車は、原材料費の高騰をカバーできず、減益予想
となっています。
とはいえ、トータルで見ると好調なことに変わりはありません。
SMBC日興証券によると、
TOPIXを構成する3月決算企業の2023年3月期の通期純利益予想は前年比8.7%増の44兆5300億円と、過去最高を更新するペースになっている
(出典:ロイター「TOPIX採用企業の今期予想、過去最高益ペース 円安追い風に8.7%増=SMBC日興集計」)※赤字は筆者
とのこと。
2023年3月期は、日本の上場企業全体で「過去最高益」が更新される見込みです。
好調な業績を背景に、株主還元も積極的に行われています。
上場企業の2022年の自社株買いが過去最高になった。
11月中旬までの取得枠の設定は9兆円を超え、年間ベースの過去最高(06年の8兆5000億円)をすでに上回った。
(出典:日経新聞「上場企業、自社株買い最高の9兆円超 今年、厚い手元資金配分 大株主から取得も」)
また、6月時点の予想ですが、2023年3月期の「配当総額」も過去最高となる見込みです。
(出典:日経新聞「配当総額2%増、最高に 23年3月期」)
- 業績は、過去最高レベル
- 自社株買いは、過去最高レベル
- 配当総額は、過去最高レベル
さぞかし日本株は値上がりしまくってるのかと思いきや、そうでもありません(TOPIXは年初来で約2%のマイナス)。
株式の割安さを測る指標の1つであるPERは、今のところせいぜい13倍程度。
これは、2004年以降の平均的な水準である15.5倍を下回ります。
なぜ、好業績の日本企業の株価がそれほど上がらないのか?
- たしかに今の業績は良いけれど
- 今後、業績の悪化が見込まれており(リスク要因:円高、世界的なインフレ継続、欧米の景況感悪化等)
- 市場としては、イケイケにはなれない
こういうことかなと思います。
相場の雰囲気を決める米国株も、弱気相場の真っただ中にありますしね。
個人的には、日本の高配当株は
- 円安や資源高で、一時的に大儲けしている企業に飛びつかないように注意すれば
- 大きな株価下落・減配を食らうことなく安定的な配当を狙える状況にある
と考えています。
トレンドに乗っている株を選ぶことも大切ですが、特に力を入れて狙うべきは、
- 今の経済状況は、会社にとって「逆風」だけど
- 業績は底堅く、財務状況も堅く
- 減配の予定はない
そういう会社かなと。
こちらのグラフをご覧ください。
現在、配当利回りが3.75%を超える高配当株は、700社近くあります。
コロナショックの直後と変わらないレベルですね。
揺れる岸田内閣
岸田内閣の支持率が低下し続けています。
日経新聞&テレビ東京の世論調査によると、直近の支持率は37%。
これは、2021年10月の政権発足以来最低の数字です。
(出典:日経新聞「内閣支持、最低37% 旧統一教会対応「評価せず」70% 本社世論調査」)
その他、11月の世論調査をメディア別に見るとこんな感じ。
- 朝日新聞:支持率37%、不支持率51%
- 毎日新聞:支持率31%、不支持率62%
- 読売新聞:支持率36%、不支持率50%
- 共同通信社:支持率33.1%、不支持率51.6%
- NHK:支持率33%、不支持率46%
菅政権の末期の支持率が36%ですから、岸田内閣もそのレベルの苦境に立たされているということです。
最近は、短期間に3人もの閣僚が辞任に追い込まれています。
- 山際大志郎(やまぎわ だいしろう)経済再生相…旧統一教会との深い関係
- 葉梨康弘(はなし やすひろ)法相…「死刑のハンコ」発言
- 寺田稔(てらだ みのる)総務相…政治資金問題
そして、岸田総理本人にも、
- 公職選挙法違反…空白の領収書を提出している(領収書には、”目的”を記載しなければいけない)
- 政治資金規正法違反…政治資金収支報告書に、本来記載すべき「収入」を記載していない
といった疑惑が生じています。
こういった疑惑が次々と明るみに出ていることから、「岸田おろし」の動きが起きているのでは?といった話も出ていますね。
岸田政権が求心力を取り戻すには
- 衆院解散・総選挙に打って出るか
- 内閣改造をするか
くらいしかなさそうですね。
しかし、岸田首相は「内閣改造」については否定しています。
※永田町には、「政権は衆議院解散すれば強くなり、内閣を改造すれば弱くなる」という格言があります。不祥事は、人事=内閣改造だけでは許されないということですね。
禊(みそぎ)を済ませるには、国民に信を問う必要があります。
となると、気になるのは「衆院解散」のタイミングです。
今のところ、年明け解散の可能性は低く、
- 2023年5月のG7広島サミット後
- 2023年6月の通常国会閉会後(※通常国会は、毎年1月中に召集され、会期は150日間)
あたりを予想している人が多いようです。
さて、投資家的には
- 長期安定政権は、株価にプラス
- 政局不安は、株価にマイナス
です。
とにもかくにも、不安定さを嫌うのが投資家ですからね。
こういうグダグダが続くと、伸びる株価も伸びにくいというワケ。
外国株の投資トピックス
お次は、外国株の話題です。
外国株については、この4つの順番で見ていきます。
- 株価指数の推移
- ゴールド・債券ETF等の値動き
- 高配当ファンドの値動き
- 11月のトピックス
①株価指数の推移
G7(主要先進7ヵ国)の、主な株価指数の推移(年初来)はこの通り。
※グーグルファイナンスでは、チャートを5つまでしか同時比較できないので、泣く泣く「FTSE MIB(イタリア)」を抜いています。
- FTSE100(イギリス) +0.90%
- S&P TSX(カナダ) −3.69%
- CAC 40種(フランス) −6.63%
- DAX30(ドイツ) −10.13%
- FTSE MIB(イタリア) −11.25%
- S&P 500(米国) −14.94%
TOPIX(日本)は−2.20%。
唯一、イギリスがプラス圏に浮上しました。
一方、まさかのビリを走っているのが米国です。
「これだけ負けているのだから、今年はさぞ先進国(米国株除く)や新興国株の方が強かったのだろう…」
と思いきや、主要ETFを比較してみるとこの通り。
- VOO(S&P500連動ファンド)…-14.74%
- VEA(先進国(除く米国)ファンド)…-15.50%
- VT(全世界株ファンド)…-15.91%
- VWO(新興国ファンド)…-18.65%
という感じで、普通に健闘しています。
多数の国々をひとまとめにするファンドでは、少なからず「足を引っ張る国」を含みます。
- 米国より成績の良い国もあるけれど
- 米国より成績の悪い国もいっぱいある
その結果が、先ほどのチャートです。
「低成長国には投資したくない」という投資家が、投資先を米国一本にする背景はこういうところにあるワケですね。
なお、11月単月の動きはこの通り。
②ゴールド・債券ETF等の値動き
有名なゴールドETFである、「GLD」の値動きはこの通り。
(出典:グーグルファイナンス SPDRゴールド・シェアーズ(GLD))
「米国の利上げが鈍化するのでは?」
という期待から、急激にゴールドが買われました。
3月以降グダグダと下げ続けてきたゴールドですが、底打ちした可能性があります。
お次は、債券です。
投資額に対して2%~5%ほどのインカム(利息)が欲しければ、米国債券が有望な投資候補になります。
米国の優良債券ファンドを3つチェックしてみましょう。
- AGG:ローリスク・ローリターンな債券(格付け高く、利回り低い)
- LQD:ミドルリスク・ミドルリターンな債券(格付け普通、利回り普通)
- HYG:ハイリスク・ハイリターンな債券(格付け低く、利回り高い)
米国総合債券に投資する【AGG】というファンドのチャートはこの通り。
- 年初来−13.25%
- 現在の分配金利回りは2.19%
- 投資対象の約7割は、格付けがAAA(トリプルエー)の債券です
値上がりの理由は、金利下落です。
「債券」と「金利」は、シーソーの関係にあり、逆の動きをします。
その証拠に、金利のチャートを見てみましょう。
こちらは「米国の長期金利(10年国債)」の推移です(現在の金利は約3.605%)。
(出典:三井住友銀行「マーケット情報チャート」)
長期金利が天井を打ったと見るなら、ここから先は比較的「下値不安」が小さい状態で債券を買えますね。
米国優良社債に投資する【LQD】というファンドのチャートはこの通り。
- 年初来−17.81%
- 分配金利回りは3.08%ほど
- 投資対象の約8割は、格付けがBBB(トリプルビー)~Aの債券です
- ギャンブル性の低い「投資適格」な債券であるものの、AGGよりは安全性が低いです
こちらも、金利下落を背景に、若干価格が上昇しています。
最後は【HYG】です。
「ジャンク」「ゴミ」と言った呼ばれ方をする「投資不適格の債券」を集めた、ハイリスクな債券ファンドです。
- 年初来−13.00%
- 現在の利回りは5.06%ほど
- 投資対象のほぼすべてが、格付けCCC(トリプルシー)~BBの債券です(リスクが高いぶん、長期的なトータルリターンは大きい傾向)
こちらも、AGGやLQDと同様に、長期金利の下落を受けて価格は上昇しています。
まとめると、
- AGG(総合債券)…−13.25%
- LQD(優良社債)…−17.81%
- HYG(ジャンク債)…−13.00%
いずれも年初来で大きなマイナスリターンです。
債券の投資家にとっては、数十年ぶりの「総悲観」な年になりましたが、風向きは変わりつつあります。
金利上昇に一服感が見られることから、「買い場」になりつつあるという認識です。
「ポートフォリオに債券を入れたい」と考えている投資家は、投資を検討する価値があるタイミングと言えるでしょう。
※当然、為替リスクには十分な配慮が必要です。
③インカム系ETFの値動き
私の愛する高配当株ETFについて。
- キャピタル(売却益)も
- インカム(分配金)も
両方狙えるポテンシャルのあるファンドたちです。
HDV、VYM、SPYDの年初来のチャートは、この通り。
分配金を無視して価格だけ見ると、順位はこの通り。
- 1位がHDV…+6.92%
- 2位がVYM…+0.45%
- 3位がSPYD…−1.56%
高配当ETFは3~5%近いインカムがあり、ここも含めるとかなり健闘していると言えるでしょう。
現在の利回りはというと
- SPYD:約3.95%(過去平均は約4.7%)
- VYM:約2.90%(過去平均は約3.1%)
- HDV:約3.41%(過去平均は約3.5%)
という感じ。
一見、「過去と同水準の利回りならまぁ買っても良いか」という感じですが、景気後退入りの可能性は忘れずに。
景気が悪化して企業業績が落ち込めば、減配もありえます。
- 今の分配金利回りが3.0%でも
- 1割減配すれば、分配金利回りは2.7%に低下します
- 2割減配すれば、2.4%です
「悪い水準ではないけれどバーゲン価格だとは思わない」
これが個人的な感覚です。
④11月の海外トピックス
最後に、外国株のトピックスです。
この2つを順番に見ていきます。
- 逆CPIショック
- アメリカ中間選挙
逆CPIショック
11月、株式相場で最もインパクトのあった出来事はこれでしょう。
その名も「逆CPIショック」。
10日は10月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回ったのをきっかけに急速な金利低下とドル安、株高が進む「逆CPIショック」の様相をみせた。
(出典:日経新聞「米市場揺らす「逆CPIショック」 物価減速ペース見極め」)※赤字は筆者
今、アメリカでは7~8%もの高インフレが起きています。
- 高インフレが続く
- →インフレをおさえるために、中央銀行が金利を上げる
- →金利上昇は、一般に株価にマイナス
最近は、この流れで「株安」が続いてきたワケです。
ところが、11月10日発表されたCPI(消費者物価指数)は、市場予想よりも低いものになりました。
こちらのグラフは、CPIの「予想と実績の差」です。
(出典:日経新聞「米市場揺らす「逆CPIショック」 物価減速ペース見極め」)
今までは、
- 予想より「上振れ」していたことが多かったのに
- 最近、予想より「下振れ」し始めている
ということが分かりますね。
※今までは、「予想してたよりCPIが高い!金利が上がるぞ!株は売れ!」という感じで、株価が急落する場面が多々ありました(CPIショック)。
また、CPIの推移(実績値)を見てみると、ピークアウトしているようにも見えます。
(出典:第一生命経済研究所「逆CPI ショック~一変する米引き締めと日本経済への影響~」)
ということで、投資家の頭の中はこうなったワケです。
- インフレが抑えられそう
- →インフレが抑えられるなら、中央銀行の利上げペースは鈍化しそう
- →金利上昇が止まれば、株価も下げ止まる=このあたりが底?
- →株高へ
実際、CPIの公表を受けて株価・為替は大きく動きました。
- ナスダックは前日比+7.4%と、約2年半ぶりの急騰
- ダウ平均株価は+1201ドルと、約2年半ぶりの大きさを記録
- 対ドルの円相場は、一時1ドル=140円台前半をつけ、CPI公表前から6円もの円高・ドル安が進行
現在、米国の金融政策を決定しているFOMCでは、会合参加者の多数が
- 近いうちに利上げペースを減速させることが適切になる
- 利上げの最終的な金利は、従来の予想よりもやや高くなる
こう判断しています。
- 0.75%というハイペースの利上げはもう終わり。0.5%とかに減速させる(投資家にとって”ポジティブ”な話)
- 最終的な金利は、4.5%とかじゃなくて、5%ぐらいいきそう(投資家にとって”ネガティブ”な話)
というイメージです。
高金利が長く続くと、消費者マインド・企業収益は悪化します。
今後は、利上げ後の金利水準がどれぐらい長い時間続くのかが焦点になってくるでしょう。
- 短期間で、利下げに転じられるのか?→転じられるなら、株高へ
- それとも、利下げできない期間が続くのか?→利下げできないなら、株価低迷へ
結局、利上げペースが鈍化しても、FOMCの動向から目が離せない状況は変わらないということですね。
アメリカ中間選挙
11月8日、アメリカで中間選挙が行われました。
中間選挙とは、大統領選挙と大統領選挙の「中間」の年に行われる、議員選挙・州知事選挙のこと。
現職大統領への信任投票の意味合いが強いと言われています。
(出典:日本経済新聞「図解 米中間選挙」より一部抜粋)
今回2022年の中間選挙で言うと、
現職大統領である民主党・バイデン大統領に
- 満足です!→民主党が勝つ
- 不満です!→共和党が勝つ
こういう図式になるというワケ。
さて、今回の連邦議会の選挙では、改選対象は
- 上院100議席のうち35議席(任期6年。2年毎に約3分の1ずつ改選)
- 下院435議席すべて(任期2年。2年毎に全員改選)
です。
結論、この通りです。
- 上院の多数派:民主党→民主党
- 下院の多数派:民主党→共和党
(出典:NHK「アメリカ中間選挙2022」)
※12月に決選投票が行われる州がある等、大勢は決したが詳細は未定という状況です。
連邦議会下院の多数派を、4年ぶりに共和党が奪還しました。
上院と下院で多数派が異なる「ねじれ議会」が誕生したということです。
前評判では「共和党の圧勝か?」という話もありましたが、結果は大接戦。
民主党が意外に善戦した、という状況です。
- アメリカ国民「高インフレによる生活苦で、大きな不満」
- 共和党「今のインフレは、民主党のせい!」
共和党は、ここぞとばかりに攻勢をかけ大勝利をおさめるはずだったのですが…
求心力の低下が明らかとなり、支持者達の「トランプ離れ」が進んでいるのが現状です。
さて、民主党であるバイデン大統領の政権運営は、「ねじれ議会」となったことで不自由なものとなります。
予算案や法案は、共和党の賛成がなければ成立しなくなるからです。
特に経済政策について、与野党の意見の違いは大きいので
- 大規模な経済対策
- 社会保障の拡充
- 富裕層や企業への増税
といった政策は、実行しにくくなりました。(参考:日本経済新聞「政策実現にハードル」)
投資家にとっては、
- 富裕層や企業への増税
- 金融規制の強化
といった、株式市場に悪影響を与える政策が出づらくなったことは安心材料の1つと言えるでしょう。
一方で、民主党・共和党の「膠着状態」は、基本的な政権運営の滞りも意味します。
米政府は「債務上限問題」など様々な問題を抱えており、経済的なリスクが再燃する可能性は低くありません。
米国の政治は、世界経済を動かします。
まとめ:高配当株投資のポジションについて
以上をまとめると、この通り。
- 11月の日本株、TOPIXは+2.4%。+5~8%程度の外国株に比べるとおとなしめ
- 日本企業の業績・株主還元は過去最高レベルもリスク要因は少なくなく、将来の業績悪化が懸念される
- 岸田内閣の支持率低下止まらず
- 日本の高配当株は、比較的選びやすい状況
- 逆CPIショックで米株急騰&円高に。利上げペースは鈍化する見通し。
- 米中間選挙でねじれ議会誕生、増税・金融規制の歯止めとなるも政権運営が滞るリスクあり
- 金利上昇に一服感。ゴールドや債券は底打ちか
- 米高配当株は悪くない水準だが、バーゲン価格とは言えない
という感じです。
個人的には、
- インデックス運用(iDeCoやつみたてNISA)は、淡々と継続
- アクティブ運用(高配当株投資)は、日本株については「割安」なものがあればピンポイントで買う。米国株は、「急落場面」があればぼちぼち拾う
というスタンスです。
今年は、なんだかんだ
- 過去最高益
- 過去最高の配当金
を記録することとなり、うまく乗り切れた感があります。
残すところあと1ヵ月、どうなるでしょうか。
この記事を仕上げている11月30日に、パウエルFRB議長から利上げペース減速を示唆する発言があったようです。
米国のインフレ・金利動向が落ち着いてくると、多少動きやすくなりますね。
- 急激に株価が上がる「お祭り要因」はあまりないと見ていますが
- 一方で、「暴落を招くような要因」もあまり見当たりません
もしインフレ・高金利が長期化すればパっとしない株価が続くと思いますが、見方を変えれば「仕込みチャンスが長く続いてハッピー」とも言えます。
長い目で、焦らずにやっていきましょう。
それではまたっ!
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