こびと株.com(@kobito_kabu)がお送りする、毎月更新の定例記事です。
※データが多すぎて記事が重いです。すみませんm(_ _”m)
抽出時期 :各月末
対象市場 :東証一部、東証二部、東証JASDAQ
配当利回り:税引き前3.75%以上(税引き後3%)※復興特別所得税は無視
目次
サマリー
2021年7月30日時点
全体指標
- 日経平均:27,283.59円(前月比−1,507.94円)
- 日経平均PER:13.34倍
- 日経平均PBR:1.19倍
- 日経高配当株50配当利回り(※):4.48%(前月比+0.06%)
- 円/ドル:1$=109.70円
配当利回りが3.75%(税引き後3%)以上の企業数
全部で336社。先月より4社減少しました。
- 一部上場 :272社(前月比− 2社)
- 二部上場 : 31社(前月比− 2社)
- JASDAQ上場 : 33社(前月比± 0社)
全体感
7月の投資トピックスについては、こちらの記事で解説しています。
まとめると
- 日経平均&TOPIXはグダり気味。主要国で「一人負け」状態
- J-REITは堅調(とはいえ、コロナ前に復活した程度)
- 景況感を見るに「実体経済」は良くなってきている(「株価」との乖離を埋めていっている)
- ただ、コロナ感染拡大で、政治・経済の先行きの不透明感が増す
- S&P500やナスダックは史上最高値を更新
- アメリカでは、2022年初めごろにテーパリングが開始される可能性
- 「チャイナリスク」が顕在化し、中国株暴落
という感じ。
現状の日本株は
- 割高じゃなくなってきたというだけで
- 「割安」と言える水準でもないので
- 条件に合う銘柄”だけ”、丁寧に拾う
そんなイメージですね。
配当利回りランキング(東証一部上場)
- ※エクセルオンラインのデータが表示されます
- 証券コードをクリックすると、Yahooファイナンスのページに飛びます
※1 「-」は、前月ランク外であった銘柄
※2 2017年1月以降で、月末の配当利回りが3.75%を超えていた月の数
今月は、この3本立てで行きます
- 第1四半期の決算状況
- 高配当株のリスク
- 高利回り銘柄・新規登場銘柄
まずは、決算ラッシュの現状をチェックしていきましょう。
テーマ①:第1四半期の決算状況
日本企業の多くは、3月決算です。
大企業の多くが
- 第1四半期にあたる2021年4月~6月の業績を
- 7月~8月に集計して、公表する
というスケジュールになっています。
この第1四半期の決算は、4人制リレーの第一走者のようなもの。
- ココで良いスタートダッシュが切れたら、今年度の成績には期待が持てます
- 一方で、もしズっこけてしまえば、今年度の成績は「お察し」です
責任重大の第1四半期決算。
結論:だいぶ良い
こちらの記事をご覧ください。
上場企業が業績の先行きに自信を持ち始めている。
2021年4~6月期の決算発表時に年間の最終損益予想を上方修正した企業は製造業を中心に7社に1社に上る。
わずか3カ月で見直したことになり、リーマン・ショックからの回復時を上回るペースだ
(出典:日経新聞「上場企業、7社に1社が3カ月で上方修正 製造業回復」)※赤字は筆者
「通期予想を修正した企業の比率」の、過去推移をご覧ください。
(出典:同上)
上方修正をした企業の比率は15%と、過去の水準から見てズバ抜けていることが分かります。
※下方修正をおこなったのは、全体の3%。陸運(JR東など)や電力(中部電力)など、インフラ系が弱いです。
全体として見ても、それなりに利益が出ています。
7割の企業が、すでにコロナ前の業績を上回っています。
企業業績が新型コロナウイルス禍を乗り越えつつある。
30日までに21年4~6月期決算を発表した約500社のうち、7割の企業の最終損益がコロナ前の19年4~6月期を上回った
(出典:日経新聞「企業業績、7割がコロナ前回復 製造業先行」)※赤字は筆者
また、ダイワ投資情報ウィークリーによると、
- 一部上場企業の「予想EPS(1株あたり純利益)」は
- コロナ前の「予想EPS」を上回っています
※下記チャートの下段を参照
こんな感じで、好決算を叩き出している企業は多いですが、「考慮すべきネガティブなシナリオはないのか?」というと…
私が考えるネガティブなシナリオはこんな感じです。
- 2021年度は、ある程度順調に利益回復
- 2022年度は、コロナ再拡大等により、思ったより利益が伸びず前期並み(なお、市場はこの年度も利益2桁成長を予想)
- 市場にガッカリされて、日経平均株価は24,000円程度に
この場合、日本株(日経平均・TOPIX)のPER・PBRは「いつもの低空飛行」の水準になります。
ざっくり
- PERは約12~13倍
- PBRは約1.1~1.2倍
という感じ。
世界中の株式市場がクラッシュするような「空前絶後にヤバいこと」が起きなければ、ネガティブなシナリオはこんなもんじゃないかなと。
というワケで、
- コロナウイルスの感染再拡大など、リスクが顕在化して世界経済が減速した場合
- 日経平均株価は24,000円ぐらいになりうる(あくまで個人的な予想です)
こんな可能性を考慮しつつ
と思える銘柄があれば買う感じ。
テーマ②:高配当株のリスク
次に、「高配当株投資家”必見”の参考データ」を紹介しておきます。
こちらをご覧ください。
(出典:Guide to the Markets)
インカム系資産の
- 利回り(上段)
- リスク(下段)
が、それぞれ棒グラフで比較できるようになっています。
今回注目して欲しいは、下段の「リスク」です。
日本株に関しては、こんな感じ。
- 日本株式のリスク:18%
- 日本高配当株式のリスク:14%
ちがいます。
投資でいうリスクというのは、値動きの大きさのことを言います。
仮に、
- 日本株式の期待リターンが4%
- リスクは18%
であれば、1年間のリターンは「期待リターン4%を中心にして、上下18%の間で変動する確率が約68%」であることを意味します。
一方で、
- 日本高配当株式の期待リターンが4%
- リスクは14%
であれば、1年間のリターンは「期待リターン4%を中心にして、上下14%の間で変動する確率が約68%」になります。
この値動きの大きさこそが、リスクです。
なお、95%の確率でおさまる幅を知りたければ、リスクを2倍にして計算すればOKです。
先ほどの例(日本株)の場合、期待リターン4%を中心にして、上下36%の間で変動する確率が95%になります。
これは、統計学的に「そういう計算になっている」というだけなので、機械的に覚えればOK。そういうもんなんです。
日本の高配当株は、日本株全般よりも4%リスクが低いですから、値動きが小さいことが分かります。
14%というリスクは、ヨーロッパの投資適格社債と同等のリスク(為替ヘッジをしない場合)です。株式のわりに、低リスクと言えます。
一方で、J-REITやUS-REITは、リスクが20%~25%もあります。まさにハイリスク。
日本の高配当株は
- 日本株全般よりもリスクを抑えつつ
- 高利回りの
- 安定した円建てインカムを狙うには
使いようのある資産クラスだと言えそうです。
一方、米国株に関してはどうでしょう?
- 米国株のリスク:20%
- 米国高配当株のリスク:19%
という感じで、高配当株の方が若干低いものの、目立った差にはなっていません。
値上がり益も含めたトータルリターンは、成長株を含む「米国株全体」の方が高いですから
米国高配当株は
- 米国株全体よりリターンは低いにもかかわらず
- 米国株全体と同じぐらいのリスクを引き受けている
ということで、要するに「コスパが悪い」状態になっています。
おいしくない時期が続いちゃってますね。
とはいえ、これはあくまで「傾向」に過ぎません。
- 2007年1月~現在までのデータをもとにしている(未来もこうなるとは限らない)
- あくまで「特定の指数」を対象としており、「個別銘柄」や「他のファンド」が同じ動きをするとは限らない(というか、絶対同じ動きはしない)
こういったデータを踏まえつつ、
- 自分の投資目的
- 自分のリスク許容度
これにマッチした投資手法を選んでいきたいですね。
テーマ③:高利回り銘柄・新規銘柄
というわけで、低リスク・高配当のイイ感じの銘柄を探していきます。
あえてね
- 今月の高利回り銘柄
- 新規銘柄
まずは、今月の高利回り銘柄。
毎月公開している「モデルポートフォリオ」では、配当利回りの平均が4.0%ほど。
- それ以上の利回りがあって
- 過去にこのブログであまり触れていない
そんな「スパイス的な銘柄」について語ります。
【9769】学究社(配当利回り4.81%)
東京を中心に、小中学生向け塾『ena』を展開している学習塾です。
都立中高一貫校の受験に強みがあります。
気持ちは分かる。
私もそう思います。
でも、2013年以降、着実に業績は伸び続けてるんですよね。
(出典:学究社2021年3月期決算資料)
彼らが経営する塾は
- 有名私立中学への受験という激戦区で戦わず
- 都立中高一貫校への受験というニッチジャンルを開拓
ご覧のとおり、驚愕のシェアを達成しております。
(出典:同上)
都立高への新入生たちが、ワクワクドキトキしながらいざ教室に入ってみたら
enaのクラスメイトばっかりだった
みたいな感じになりそうな割合ですね。
配当金に関しては
- 2011年時点で、15円。そこから現在にいたるまで減配はなし
- 2016年~2020年の5年間は、60円で横ばい
- 2021年に65円に増配し、今期も65円を維持の予定
という感じ。
収益力は高め、財務はまぁ及第点といったところです。
なお、塾業界の市場規模は、2040年までに1割近く縮小する見通しです。
2019年以前の学習塾・予備校市場は拡大と縮小を繰り返していたが、2020年(約9522億円)以降は縮小傾向が続きそうだ。
市場規模は2035年に約8970億円と9000億円台を割り込み、2040年には約8644億円と2019年から約1割減る見通しだ
(出典:矢野経済研究所) ※赤字は筆者
【5334】日本特殊陶業(配当利回り4.36%)
自動車用プラグ・排気系センサーで世界一。
(出典:日本特殊陶業 公式HP)
スパークプラグというのは
配当金の推移はこんな感じです。
(出典:日本特殊陶業「株主還元について」)
2012年以降、着実に配当金を増やしてきました。
コロナ禍において、70円→60円と減配しましたが、ぶっちゃけ業績はそんなに悪くありませんでした。
減配の背景としては
未来の話をします。
2025年3月期に向けた中期目標は、強気です。
(出典:日本特殊陶業「新中期経営計画」)
これからの4年間で
- 売上は約1.5倍
- 利益は2倍以上
に成長させる計画ですね。
現在の株価は、これらの成長を織り込んでいる水準とは思えません。
もし本当にこの数字を狙えるなら、今の株価は十分にバリュー(割安)です。
成長投資を優先するため、配当金の増配ペースにはあまり期待できませんが、現時点でもそれなりの利回りがあるので魅力はありますね。
【9104】商船三井(配当利回り8.41%)
海運業界の大手企業、商船三井。
そんなイメージを持っている人もいるかもしれません(私です。)
7月30日に業績と配当予想の修正を発表し、突如「高配当株」のトップに躍り出ました。
- 当期利益:32.4%アップ(1700億円→2250億円)
- 配当予想:260%アップ(150円→550円)
というわけで、株価も急上昇。
始値5050円→終値5650円と、1日で約12%の上昇となりました。
(出典:Yahoo!ファイナンス)
10年チャートを見ると、ロケットが打ちあがってますね。
まさに、「割安株」が評価された瞬間です。
配当利回りは、なんと8.41%。
修正後の業績予想によれば、当期の1株当たり当期純利益は2797.15円になる見込みなので、配当性向は20%弱。
問題は
- この水準の業績が続くのか?
- この水準の配当が続くのか?
の2点ですね。
海運業は、典型的な景気敏感業種。
商船三井も、
- 当期はコロナ禍で苦しんだ前期に比べて荷量が増加する等して好調だが
- 去年は営業赤字
- 売上もここ数年右肩下がり(※当期は増収予想)
- 配当政策は「連結配当性向20%を目安として業績に連動した配当」
という感じ。
現状、海運業は息をするように赤字になる業種です。
新規銘柄
新規登場銘柄は、この2社です。
当然、「四電工」と「ダイコー通産」も私を愛していないでしょう。
お互い様ですね。
配当利回りランキング(東証二部上場)
- ※エクセルオンラインのデータが表示されます
- 証券コードをクリックすると、Yahooファイナンスのページに飛びます
※1 「-」は、前月ランク外であった銘柄
※2 2017年1月以降で、月末の配当利回りが3.75%を超えていた月の数
配当利回りランキング(東証JASDAQ上場)
- ※エクセルオンラインのデータが表示されます
- 証券コードをクリックすると、Yahooファイナンスのページに飛びます
※1 「-」は、前月ランク外であった銘柄
※2 2017年1月以降で、月末の配当利回りが3.75%を超えていた月の数
まとめ:もしこびと株メンバーが今月から高配当株投資を始めるとしたら?
ランキングの解説は以上です。
最後に、2019年7月からシリーズ化を開始した「もしこびと株メンバーが今月から高配当株ポートフォリオを作るとしたら」というモデルを出して終わりにします。
※「私たちならこうする」という事例であって、下記銘柄への投資を推奨するものではありません。株式投資には元本割れのリスクがありますので、くれぐれも自己責任でお願い致します。
30万円で今月スタートならこんな感じにします。
※1:ピンクマーカーは、景気敏感株。
※2:待機資金は、高利回りの「中・小型株(※ディフェンシブな業種)」が出てきたら買うお金です。宝印刷やエックスネットなどのような会社ですね。
待機枠の資金で配当利回り4.0%ほどの株を買えれば、トータルで3.98%の利回りになります。
- TOPIXの予想平均利回りが約2.3%
- 日本国債(10年)の利回りが約0.01%
であることを考えると、それなりの利回りです。
今後の増配にも十分期待できるメンバーでしょう。
セクターの割合は、この通り。
個人的には、今は「キャッシュを厚くしていく時期」かなという認識です。
多少割高感が薄れてきたとはいえ、日本株の高配当株投資戦略をとっている人はつかの間の「休憩時間」かなと。
もちろん、買い場を狙っているうちにスルスル~っと株価が上昇してしまうこともあるでしょう。
そんな感じで「機会損失=買い場を逃してしまった!」というのがイヤな人は、成長株も含むインデックスファンドを定期的に積み立て続ければ良いですね。私はそうしてます。
なお、これまで、高配当株ポートフォリオを自作する人には、SBIネオモバイル証券をおすすめしてきました。
低コストで、少額からの分散投資が可能だからです。
- 1株から購入できる(「超優良企業」をおこづかいレベルの金額から買える)
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※SBIネオモバイル証券を使った高配当株投資の始め方はこちらの記事をどうぞ。
大手ネット証券を使うと手数料負けする…というのが従来の状況だったワケです。
けれども最近、マネックス証券が1株から取引きできる「単元未満株」の買い付け手数料無料を打ち出しました。
ということで、少々様子見中。
資産形成上、手数料は非常に重要な要素なので、大手証券会社の手数料再編がどうなるか要注目ですね。
ちなみに、
- 今、SBIネオモバイル証券を使っている人
- これから、SBIネオモバイル証券を使おうと思っていた人
も、焦る必要はありません。
「これはもうSBI証券(楽天証券)に一本化だね!」という日がきたら、「株式移管」という手続きをとってお引越しすれば良いだけだからです。
やりたい人は始めれば良いし、すでにやっている人もそのまま続ければOK。
いずれにせよ、そのあたりをフォローする記事は出す予定です。
2022年9月26日、
株式会社SBIネオモバイル証券は、株式会社SBI証券と経営統合することが発表されました。
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- ①追加投資、②配当金再投資、③増配でひたすら配当金を増やし続ける
こうすることで、誰でも月10万円ぐらいの配当金は作れる可能性があるんじゃないかなと思っています。
※日米高配当戦略は、外国株100%と比較して
- 為替影響を低減できるし
- 働いていて収入が高いうちは「外国税額控除」で、海外の税金を取り返す
- 仕事をやめて収入が低くなったら「配当控除」で、日本の税金を取り返す
といった感じで、税金コントロールの面でもバランスが良いです。
月10万円あれば、
- 水道光熱費が払える
- 家賃が払える
- 通信費(スマホ代など)が払える
- 保険料が払える
といった感じで、独身なら固定費のほとんどを賄えるでしょう。
ちょっと働けば生きていける水準ですから、セミリタイアも視野に入ると思います。
あるいは、月10万円の配当金を趣味に使えば、相当遊び倒せるでしょう。サラリーマンのお小遣いの平均は3~4万円ぐらいですからね。
全部使い切っても「老後は安泰」ってのは良いですよね。
いずれにせよ、配当金は人生の選択肢を増やしてくれます。コツコツと配当金を増やして、生活を豊かにしていきたいですね。
それではまたっ!
※関連記事です
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