こんにちは、こびと株(kobito_kabu)です。
現在、
- 高配当株投資
- インデックス投資(つみたてNISAやiDeCoのみ)
の両刀で資産運用をやっています。
毎月恒例企画ということで、10月の投資トピックスについて「この2つの投資にどのような影響があるか」という観点で、まとめていきます。
本記事の構成はこの通り。
- 日本株の投資トピックス
- 外国株の投資トピックス
- まとめ:高配当株投資のポジションについて
目次
日本株の投資トピックス
日本株については、以下の順番で解説します。
- 株価指数の推移
- その他指数の推移
- 10月のトピックス
①株価指数の推移(日経平均・TOPIX・J-REIT・マザーズ)
10月31日時点の株価は、この通り。
- TOPIX:1,929pt(-4.96%)
- REIT連動ETF:2,127円(-5.47%)
- 日経平均株価:27,587円(-5.85%)
- マザーズ連動ETF:575円(-23.43%)
※端数は四捨五入。カッコ内は、いずれも「年初来」。
※J-REITとマザーズ指数がグーグルファイナンスから消えてしまったようなので、それらの指数に連動している「ETF」のデータを表示しています。そのため、実際の指数の動きとは誤差があります。
この4つの株価の、年初来の値動きを見てみるとこんな感じです。
10月単月の動きを見ると、この通り。
- マザーズ連動 +5.62%
- 日経平均株価 +5.23%
- TOPIX +4.43%
- REIT連動 +1.07%
今年に入ってから、日本株は
- 下げては
- 上げて
- 下げては
- 上げて
を繰り返す、ボックス相場になっています。
今のところ、日経平均株価が26,000円半ばぐらいをつけてる時は、「割安感があり買いやすい」という感じでしょうか。
株価の動きはさておき、企業のリアルな実態はどうなのか?
4月~9月の決算発表が本格化してきていますが、今のところはこんな感じです。
急速な円安を受け、上場企業が2023年3月期の業績見通しを上方修正する動きが相次いでいる。
28日までに業績予想を発表した企業のうち3割にあたる55社が最終損益の見通しを引き上げ、上方修正額は4300億円を超えた。
電機や化学、機械など外需型企業が多い。
(出典:日本経済新聞「3社に1社が上方修正 23年3月期、急速な円安支え」)※赤字は筆者
32年ぶりの円安水準で、企業の通期予想は大きく変わってきています。
今後、
- 円安に強い企業(輸出企業)と
- 円安に弱い企業(輸入企業)で
ますます業績は二極化していきそうです。
ちなみに、先月までの状況はこの通り。
- 4~6月期の全産業の経常利益は、28.3兆円で過去最高(前年同期比+17.6%)
- 製造業の設備投資額は、コロナ前を超す(新型コロナウイルス流行前である2019年度の平均と比べて5.2%増)
- 1~8月の自社株買い累計額は7兆円を超え、金融危機後の同期間としては最高額
つまり、
- 利益はガッポリ出てるし
- 設備投資にも積極的だし
- 株主還元(配当・自社株買い)も一生懸命
ということ。
引き続き、
- 今年の業績&来期以降の業績見通し、財務状態は悪くないのに
- 株式市場の雰囲気が悪いため、割安で放置されている高配当株
そういうものがあれば、拾っていっても良い状況かなと思います。
②その他指数の推移
この3つをチェックしておきます。
- 日銀短観
- 景気動向指数
- その他の指数(物価、失業率・求人倍率など)
まず、10月上旬に公表された①日銀短観について。
(出典:NHK NEWS WEB「日銀短観 大企業製造業 景気判断は3期連続悪化 非製造業は改善」)
業況判断DIは、景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値です。
- 大企業製造業:プラス8(前回から-1ポイント)
- 大企業非製造業:プラス14(前回から+1ポイント)
製造業は、3期連続の悪化。
3カ月後の見通しも、「1ポイントの改善」にとどまります。
一方、非製造業は、新型コロナの行動制限が緩和され、「運輸・郵便」「不動産」「宿泊・飲食サービス」などが改善して持ち直し。
とはいえ、3か月後の見通しは、「3ポイントの悪化」が予想されています。
- 製造業にせよ
- 非製造業にせよ
足枷になっているのは、「仕入れコストの高騰」です。
石油、石炭、紙、パルプ、電気、小売りなどの業界では
- 原材料価格の高騰
- 円安
のダブルパンチで、仕入れコストが上昇しています。
これを、販売価格に転嫁できなくて収益が圧迫されているワケですね。
次に、②景気動向指数(先行指数)について。
8月の数値(10月26日公表)は、101.3となりました。
(出典:景気動向指数 速報からの改訂状況)
景気動向指数は、
- 景気全体の現状を知ったり
- 将来の動向を予測したりするときに
使われる経済指標です。産業、金融、労働など、経済に重要かつ景気に敏感な30項目の景気指標をもとに指数が算出されています。
色々な指標をミキサーに入れてスイッチをいれると、1つの「景気動向指数」ができるというイメージです。
景気動向指数を見る上で大切なのは、この2つ。
- この数カ月、プラストレンドか?マイナストレンドか?
- プラス幅(又はマイナス幅)はどれぐらいか?
ココ1年の推移を見てみると、この通り。
- 9月 99.9(前月比-1.7ポイント)
- 10月 100.6(前月比+0.7ポイント)
- 11月 102.0(前月比+1.4ポイント)
- 12月 102.9(前月比+0.9ポイント)
- 1月 101.3(前月比-1.6ポイント)
- 2月 100.2(前月比-1.1ポイント)
- 3月 100.7(前月比+0.5ポイント)
- 4月 102.3(前月比+1.6ポイント)
- 5月 100.7(前月比-1.6ポイント)
- 6月 100.3(前月比-0.4ポイント)
- 7月 98.9(前月比-1.4ポイント)
- 8月 101.3(前月比+2.4ポイント)←New!!
わりと大きく持ち直しましたね。
要因は
- 在庫が減っている(=出荷が順調。逆に、増え続ける在庫は不景気の前触れです)
- 住宅の新設・増改築の届け出が増えている
- 消費者マインドが改善している
といったところ。
景気動向指数の大幅改善を受けて、「景気後退確率」は54.9%に低下しました。
(出典:日本経済研究センター「8月の景気後退確率は54.9%に低下」)
訴求改定ベースでは、景気後退確率の直近3ヶ月の推移は次の通り。
- 2022年6月:69.5%
- 2022年7月:68.7%
- 2022年8月:54.9%←New!
過去を振り返ると、
- 本景気後退確率が67%を2カ月連続で上回ったとき
- その後多くの場合、内閣府が景気後退入りと認定した時期にほぼ対応しています
今は、赤の点線ライン(67%のライン)付近にいます。
最後に、③その他の指数について。
まず、消費者物価指数(10月21日発表)。
こちらは、前年同月比+3.0%となりました。
(出典:NHK NEWS WEB「9月の消費者物価指数 3%上昇 消費増税影響除けば31年ぶり水準」)
値上げが目立つ品目は、
- 食用油…+37.6%(前年同月比。以下同じ)
- 食パン…+14.6%
- 電気代…+21.5%
- ガス代…+19.4%
- エアコン…+14.4%
- ドラム式洗濯機…+32.1%
など(なかなか激しいですね)。
なお、政府は、円安に伴うコストプッシュ型のインフレは「一時的」なものと見ています。
政府の目論見が外れインフレが高止まりすると、国民の生活は非常に厳しいものとなりそうです。
※こびと株家には外国株からの配当金があり、増配・円安のおかげで十分なキャッシュフローを得ています。
仕事一本に絞るのではなく、収入を分散させたことの強みを実感しています。やはり、何事も備えが重要です。
最後に、雇用関係(失業率、求人倍率)の指標です。
- 9月の完全失業率…2.6%(前回は2.5%)
- 9月の有効求人倍率…1.34倍(前回は1.32倍)
※完全失業率が2.2%ぐらいまで戻ればほぼ完全雇用=ゴール。
(出典:日経新聞「9月の求人倍率1.34倍、9カ月連続上昇 失業率は2.6%」)
失業率が若干悪化しましたが、有効求人倍率は明らかに上昇トレンドにあります。
日本における雇用環境は「悪くない」と言えそうです。
③10月の国内トピックス
日本株について、今月のトピックはこれ1つです。
- 32年ぶり円安・日銀は姿勢変えず
32年ぶり円安・日銀は姿勢変えず
10月21日の外国為替市場で、円相場は1ドル=151円台を記録。
1990年以来、32年ぶりの円安となりました。
ご覧の通り、10月に入ってからも円安トレンド=円の価値の下落が止まりません。
(出典:NHK「サクサク経済Q&A」)
これに対応して、政府・日銀の「円買い・ドル売り介入」も続いています。
こちらのドル円の為替チャートをご覧ください。
(出典:日本経済新聞「連日の円買い介入か 政府・日銀、150円巡り市場と攻防」)
- 10/21:突然、5円以上の円高に
- 10/24:突然、4円以上の円高に
という感じで、数兆円規模の介入があったものと推測されています。
(参考:FNNプライムオンライン「【速報】連日の為替介入 24日は1兆円、総額10兆円に迫るか 日銀が残高速報値を発表」)
「推測されている」と煮え切らない表現になってしまうのは、今月の介入が、覆面介入だったから。
覆面介入というのは、為替介入の事実を明らかにしないタイプの為替介入のことです。
- 「投機による過度な変動は容認できない」というスタンスを示しつつ
- あえて動向を明らかにしない
これによって市場関係者の「なにか自分が気づいていない円高要因があるのかも?」という不安を煽り、為替の動きを封じよう、という作戦です。
(参考:NRI「異例尽くめの為替介入の背景には何があるのか」)
介入の事実は、10月31日の財務省の発表で初めて明確になりました。
公表されたのは、「直近1カ月での総額」。
こちらは約6.3兆円と、円買い・ドル売り介入として過去最大を更新しました。
※ちなみに、「日ごとの介入実績」は、来年2月まで非公表となっており、いまだに「推測されている」状況です。
(参考:日本経済新聞「円買い介入、10月単月で6.3兆円 一連の介入で9兆円」、朝日新聞デジタル「為替介入、1カ月6.3兆円と最大規模 「覆面」が正式に判明」)
さて、この円買い介入ですが、「効果」「限界」はどう見るべきか?
効果:微妙
- 介入した直後は一時的に円高になるが、結局はジリジリと円安になっている
- 「何もしなかった場合」よりは円安進行を抑えられていると思われるが(投機筋に対する牽制になるため)、効果的かと言うと疑問符がつく
限界:いっぱいある
- 限界①:介入では、「日米金融政策の方向性の違い(米国は利上げする。日本は利上げしない)」「日本の多額の貿易赤字」「潜在成長率の低さ」といった、そもそも円安の主要因は変えられない
- 限界②:ドル売り・円買いをするには、言うまでもなく「ドル」を持っている必要がある。政府が持っているドルは無限ではなく、いずれ弾が尽きる
- 限界③:米国政府は「ドル高」を容認している。つまり、円高に誘導するために米国が協力してくれるワケではない
円安要因の一つとされている、日米の金利差。
ご覧のとおり、非常に大きな差になっていますね。
(出典:日本経済新聞「日米金利差 円安・ドル高の一因に」)
日本の金利は0%近辺、アメリカの金利は4%近辺となると
と思う人達が出てくるのも当然のことです。
それならば、日本も金利を上げれば少しは円安を止められるのでは…?
と思うかもしれませんが、日本政府にその気はありません。
10月27日~28日に行われた金融政策決定会合では、これまでと同様に大規模な金融緩和を維持することが決まっています。
黒田総裁は、会見で
「今すぐ金利の引き上げや出口は来るとは考えていない」
と述べました。
(出典:日テレNEWS「日銀・黒田総裁「今すぐ金利引き上げは考えてない」)
外国株の投資トピックス
お次は、外国株の話題です。
外国株については、この4つの順番で見ていきます。
- 株価指数の推移
- ゴールド・債券ETF等の値動き
- 高配当ファンドの値動き
- 10月のトピックス
①株価指数の推移
G7(主要先進7ヵ国)の、主な株価指数の推移(年初来)はこの通り。
※グーグルファイナンスでは、チャートを5つまでしか同時比較できないので、泣く泣く「FTSE MIB(イタリア)」を抜いています。
- FTSE100(イギリス) −5.47%
- S&P TSX(カナダ) −8.52%
- CAC 40種(フランス) −13.17%
- DAX30(ドイツ) −17.27%
- FTSE MIB(イタリア) −18.31%
- S&P 500(米国) −19.28%
TOPIX(日本)は−4.96%。
いずれも年初来でマイナス圏に沈んでいます。
日本株は-4.96%で、G7単独トップになりました。
一方、米国は-19.28%で最下位に沈んでいます。
10月単月では、持ち直しの動きが見られました。
米国株は、全体的には上げているものの、GAFAMを筆頭とするハイテクグロースの弱さが際立っています。
- Appleの-17%はかわいい方で
- 30%以上のマイナスは当たり前
- Meta(旧フェイスブック)に至っては、70%以上のマイナス
です。
10月単月で見ても、プラスの成績はAppleだけ。
全体として決算の内容は悪く、完全に勢いを失っています。
長い間相場を牽引してきたGAFAMですが、成長率の鈍化は顕著。
潮目は変わっていますね。
一方、オールドエコノミー中心のダウは様子が異なります。
31日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前日比128ドル(0.4%)安の3万2732ドルで取引を終え、月間では14%上昇した。
1カ月の上昇率としては1976年1月以来、46年9カ月ぶりの高水準を記録した
(出典:日本経済新聞「10月のNYダウ上昇率、46年ぶり水準 利上げ幅縮小観測」)
バリュー・グロース別に、主要ETFで成績を比較すると
- バリュー株は、年初来で-約6%
- グロース株は、年初来で-約32%
「上がり続ける株はない」
「景気・相場にはサイクルがある」
この当たり前の現実を見せつけられている感じですね。
②ゴールド・債券ETF等の値動き
有名なゴールドETFである、「GLD」の値動きはこの通り。
(出典:グーグルファイナンス SPDRゴールド・シェアーズ(GLD))
2022年に入り、比較的健闘してきたゴールドですが、年初来-9.75%とマイナス圏に沈んでいます。
- 金利がつかないゴールドより
- 金利がつくドルの方が好まれる
このトレンドは、利上げが落ち着くまで変わらないでしょう。
お次は、債券です。
投資額に対して2%~5%ほどのインカム(利息)が欲しければ、米国債券が有望な投資候補になります。
米国の優良債券ファンドを3つチェックしてみましょう。
- AGG:ローリスク・ローリターンな債券(格付け高く、利回り低い)
- LQD:ミドルリスク・ミドルリターンな債券(格付け普通、利回り普通)
- HYG:ハイリスク・ハイリターンな債券(格付け低く、利回り高い)
米国総合債券に投資する【AGG】というファンドのチャートはこの通り。
- 年初来−16.24%
- 現在の分配金利回りは2.21%
- 投資対象の約7割は、格付けがAAA(トリプルエー)の債券です
値下がりの理由は、金利上昇です。
「債券」と「金利」は、シーソーの関係にあり、逆の動きをします。
その証拠に、金利のチャートを見てみましょう。
こちらは「米国の長期金利(10年国債)」の推移です(現在の金利は約4.06%)。
(出典:三井住友銀行「マーケット情報チャート」)
信用度の高い米国債券で4%超というのは、なかなか美味しい水準になってきたという認識です。
米国優良社債に投資する【LQD】というファンドのチャートはこの通り。
- 年初来−22.70%
- 分配金利回りは3.20%ほど
- 投資対象の約8割は、格付けがBBB(トリプルビー)~Aの債券です
- ギャンブル性の低い「投資適格」な債券であるものの、AGGよりは安全性が低いです
こちらも、金利上昇を背景に、価格推移は「総悲観」レベルになっています。
日本人投資家の場合、ドル円のレートが
- 年初 1$=約115円
- 現在 1$=約148円
という感じなので、ざっくり29%ほどの為替差益が出ているはずです。
米国人にとっては債券は「阿鼻叫喚」の状況だと思いますが、日本人はプラスの人も少なくないかなと。
良くも悪くも、為替リスクの大きさを感じざるにはいられません。
最後は【HYG】です。
「ジャンク」「ゴミ」と言った呼ばれ方をする「投資不適格の債券」を集めた、ハイリスクな債券ファンドです。
- 年初来−15.57%
- 現在の利回りは5.12%ほど
- 投資対象のほぼすべてが、格付けCCC(トリプルシー)~BBの債券です(リスクが高いぶん、長期的なトータルリターンは大きい傾向)
こちらも、AGGやLQDと同様に、長期金利の上昇を受けて価格は下落しています。
ハイイールド債の金利は上昇し続けており、ちょっと危険な感じがしますね。
ハイイールド債は、不景気になるとデフォルト(債務不履行)が増えリターンが悪化します。
高金利につられて投資すると痛い目に合うので、注意が必要です。
まとめると、
- AGG(総合債券)…−16.24%
- LQD(優良社債)…−22.70%
- HYG(ジャンク債)…−15.57%
いずれも年初来で大きなマイナスリターンです。
※総合債券は、この水準で年末を迎えれば、データをさかのぼれる1976年以降で最悪の年になります。
③インカム系ETFの値動き
私の愛する高配当株ETFについて。
- キャピタル(売却益)も
- インカム(分配金)も
両方狙えるポテンシャルのあるファンドたちです。
HDV、VYM、SPYDの年初来のチャートは、この通り。
分配金を無視して価格だけ見ると、順位はこの通り。
- 1位がHDV…+1.80%
- 2位がVYM…-5.47%
- 3位がSPYD…−7.93%
高配当ETFは3~5%近いインカムがあるので、ここも含めるとかなり健闘していると言えるでしょう。
現在の利回りはというと
- SPYD:約4.17%(過去平均は約4.7%)
- VYM:約3.07%(過去平均は約3.1%)
- HDV:約3.51%(過去平均は約3.5%)
という感じ。
一見、「過去と同水準の利回りならまぁ買っても良いか」という感じですが、景気後退入りの可能性は忘れずに。
景気が悪化して企業業績が落ち込めば、減配もありえます。
- 今の分配金利回りが3.0%でも
- 1割減配すれば、分配金利回りは2.7%に低下します
- 2割減配すれば、2.4%です
「悪い水準ではないけれどバーゲン価格だとは思わない」
これが個人的な感覚です。
④10月の海外トピックス
最後に、外国株のトピックスです。
この3つを順番に見ていきます。
- 英国、トラス首相退陣
- 習近平政権が3期目に突入→中国株急落
- ドル高が招くリスク
英国、トラス首相退陣
通貨安・株式安・国債安の「トリプル安」で話題になっていたイギリス。
10月20日、トラス首相の辞任が発表されました。
在任わずか49日。英国史上最短での退陣となりました。
ざっくりした流れは、こんな感じ。
- 9月6日:トラス政権発足
- 9月23日:大規模減税策発表→トリプル安に
- 10月14日:法人減税を撤回&財務相を解任
- 10月17日:大規模減税策の大半を撤回
- 10月20日:トラス首相辞意表明
ゴタゴタを収拾すべく様々な手段を講じたものの、結局辞任せざるを得なかったワケですね。
トラス政権が倒れた理由を一言で説明すると、「大規模減税をしようとしたから」です。
トラス政権の「大規模減税」の発表を受けて、世界中の投資家が
- え?イギリスの財政にそんな余裕あったっけ?
- 減税って言っても、財源は?え?国債の増発?そんなに国債発行して大丈夫?
- ポンドも、国債も、もう信用できるか!売れ売れ!
という感じで、パニックに陥りました。
後に、ハント英財務省はこう述べています。
ハント氏は「英国の財政は中期的に持続可能でなければならない」と述べ、大幅な減税は適切ではないとの認識を示した。
(出典:産経新聞「英、大型減税策をほぼ撤回 トラス首相に辞任圧力」)※赤字は筆者
※日本でも、何かにつけて「減税せよ」という話題が出ます。減税の議論をする際には、他国から見て「日本の財政に不安を持たれないかどうか」という目線も持つべきだという、良い教訓になる出来事ですね。
トラス首相の退任後、10月25日にはスナク氏が新首相に就任。
通貨(ポンド)は最安値から1割上昇し
(出典:日本経済新聞「スナク英首相、打てぬ財政出動 登板すぐに正念場」)
国債利回りも、減税策発表前の水準まで戻しています。
(出典:日本経済新聞「スナク英首相、打てぬ財政出動 登板すぐに正念場」)
とはいえ、「これで万事解決!」というワケではありません。
イギリスの経済は、
- インフレ率が非常に高い(9月は前年比10.1%)
- 景気後退入りが濃厚
(参考:日本経済新聞「スナク英首相、打てぬ財政出動 登板すぐに正念場」)
といった苦しい状況下にあるからです。
この状況下において、「経済の安定と信頼」を掲げるスナク首相は
- 増税
- 歳出大幅削減
など、緊縮的な経済政策を取るとみられています。
習近平政権が3期目に突入→中国株急落
10月23日、中国の習近平国家主席は
- 自身に忠実な人物を集めた新たな指導部を発足させ
- (「国家主席は2期10年まで」という憲法を改正して)異例の3期目政権に突入しました
これを受けて、中国からは世界の投資マネーが退避しています。
中国・香港金融市場に24日、記録的な売りが広がった。
~中略~
香港株式市場では中国本土銘柄から成るハンセン中国企業株(H株)指数が7.3%安で引け、党大会後としては1994年の導入後で最大の下落率となった。
テクノロジー大手のアリババグループやJDドットコム(京東)、テンセント・ホールディングス(騰訊)、フードデリバリーの美団はいずれも香港市場で11%以上値下がり。
ハンセンテック指数は9.7%安で終了した。
(出典:ブルームバーグ「中国・香港金融市場に記録的な売り-習氏への権力集中に警戒感」)※赤字は筆者
外国人投資家の売越額は約3,680億円。
これは、2016年からのデータで過去最大とのこと。
懸念されているのは、権力の集中・暴走です。
共産党指導部には、以下の24名が選出されました。
- 序列1位:総書記
- 序列2位~7位:政治局常務委員
- 序列8位~24位:政治局員
序列2位以下のほとんどが「習氏の側近」で固められています。
習近平氏は
- IT企業への罰則強化
- ゼロコロナ政策
など、市場に優しくない政策を抵抗なく実行しており、こういった政策がより強固なものになるのではと懸念されているワケですね。
習近平氏は「台湾」「尖閣諸島」にも強いこだわりがあり、地政学リスクの高まりも同時に指摘されています。
中国株は、バリュエーションだけで見ると割安な水準にあると判断しますが、カントリーリスクの大きさを考えると安易な買い増しは禁物でしょう。
※全世界株の指数:ここでは、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスのこと。日本を含む先進国23ヵ国と新興国24ヵ国を合わせた計47ヵ国・大型中型株計2900銘柄で構成される。
ドル高が招くリスク
ドル高が止まりません。
アメリカでは、高いインフレを抑え込むために利上げが続いています。
- 米国の金利が上昇する
- ドルの魅力が高まる
- ドル以外の通貨が売られて、ドルが買われる(ドル高要因)
このトレンドが続いているワケですね。
年初来で見ると
- 円
- ユーロ
- カナダドル
- イギリスポンド
- オーストラリアドル
などは、ドルと比較して7~22%ほど価値が下落しています。
ドル高に、何か問題・デメリットはないのか?
考えられるのは、大きく3つです。
①新興国への経済的ダメージ
米国の金利が上昇すると、投資マネーは新興国から米国に移ります。
すると、新興国経済は「株価下落」「通貨安」等でダメージを受けることになります。
また、ドル高は新興国政府・企業のドル建て債務の返済負担が増すことを意味します。
要は、新興国にとっては「勘弁してくれ」ということです。
ドル高に伴う新興国・低所得国の債務危機問題については、ちらほら話題になり始めていますね。
米国などはインフレ抑制に向けて金融引き締めを加速しており、金利上昇とドル高が相まって低所得国の債務危機が深刻化する恐れがある。
(出典:日本経済新聞「低所得国の債務支払額 最高に 今年505億ドル ドル高など重荷」)※赤字は筆者
②米国の国際競争力低下
ドル高は、世界で稼ぐ米国企業にとっては逆風になります。
たとえば、Appleが日本で発売した新型iPhone「14」の価格は、一番安いモデルで11万9800円。
1年前の前機種「13」より2万1000円高くなっています。
※米国では、13も14も変わらず829ドル(出典:PR TIMES「日本のiPhoneは過去3年でアジアワースト1位の値上げ率。世界では3番目」)
高くなればなるほど売れにくくなり、Appleの競争力は低下していくことになります。
ドル高の継続→米国輸出企業の業績悪化→国際競争力の低下、という流れですね。
最近発表されたGAFAMの決算を見ると、ドル高要因で既に収益性が大きく低下していることが分かります。
③ドルの信認が揺らぐ
ドル高が進むと、貿易収支の悪化・景気の悪化を通じてドルの信認が揺らいでいくことになります。
すると、どこかの段階で
- ドル高の懸念よりも
- 行き過ぎたドル高の反動を懸念する声の方が大きくなり
ドルの急落・暴落が起き得ます。
ドルが暴落すると、投資マネーは米国から海外へと逃げてゆき、米国では株安・債券安・通貨安の「トリプル安」が起きかねません。
結局のところ、「行き過ぎた為替」は大きなリスク要因だということです。
- 為替が安定した世界
- 為替が乱高下する世界
どちらが投資しやすい環境かは言うまでもないですね。
まとめ:高配当株投資のポジションについて
以上をまとめると、この通り。
- 10月の日本株は、9月の下げを取り戻す動き
- 企業業績や雇用環境は悪くないが、仕入れコストの高騰が足枷に
- 政府・日銀は円買い介入継続、直近1カ月で約6.3兆円と過去最大規模
- 大規模な金融緩和は継続、円安トレンドも継続か
- イギリスでは大減税撤回からのトラス首相退陣、スナク新首相は緊縮的な経済政策か
- 中国では習近平政権3期目突入からの中国株暴落
- 止まらぬドル高、新興国経済・米輸出企業にダメージ。長期化に要警戒。
- ゴールドも債券も、米利上げの影響で相変わらず下落中
- 高配当株は悪くない利回りだが、景気後退入り(減配)の可能性は忘れずに
という感じです。
個人的には、
- インデックス運用(iDeCoやつみたてNISA)は、淡々と継続
- アクティブ運用(高配当株投資)は、日本株については「割安」なものがあればピンポイントで買う。米国株は、「急落局面」があればぼちぼち拾う
というスタンスです。
- 現金のままにしておくと、インフレでやられる
- 債券を買うと、金利上昇で価格が下落する
- 株を買うと、下落相場に巻き込まれる可能性がある
- コモディティは、意外と価格変動が大きく短期の守りには向いていない…
どのように資産を守り、そして増やしていくか、難しいフェーズですね。
長い目で、焦らずにいきましょう。
それではまたっ!
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