こんにちは、こびと株(@kobito_kabu)です。
最近、友人たちからこんな質問を立て続けに受けました。
- がん保険に加入するか
- がん保険に加入しないか
最終的な判断は人それぞれですが、その判断は「バランスの良い情報」を前提になされるべきです。保険会社のセールストークは偏りすぎているということです。
この記事では、がん保険に加入する前に知っておきたい5つのことを紹介します。
先にネタバレしておくとこんな感じです。
- 「2人に1人はがんになる」はホントだけど、若いうちはならない
- がんの治療費は意外にかからない(自己負担は平均で100万円ぐらい)
- 高額療養費の認知度の低さが、保険の普及に一役買っている
- 「先進医療」は「最先端の医療行為」という意味ではない
- がん保険が流行ってるのは北東アジアだけ
目次
がん保険に加入する前に知っておきたい5つのこと
①「2人に1人はがんになる」はホントだけど、若いうちはならない
こういうセールストーク、聞いたことがないでしょうか?
こう聞くと、50%の確率でがんになるならちゃんと備えておかないと…という気持ちになりますよね。ところが、これは「一生涯でがんになる確率」です。
一生涯でがんになる確率ではなく、「今後10年間でがんになる確率(年代別)」を見てみましょう。これが非常に重要です。
- 20歳→0.3%
- 30歳→0.6%
- 40歳→2.0%
- 50歳→5.0%
- 60歳→15.0%
- 70歳→29.0%
上記の通り。
- 男子校の卒業生400人が、20歳の時に同窓会をする
- その10年後、みんなが30歳になったときにまた同窓会をする
- そうすると、400人のうち1人はがんになっている
そのぐらいの確率です。
※ちなみに、がんで死亡する確率となると、さらにさらに低くなります。
がんになる確率が高まるのは50歳以降です。グラフで視覚的に見てみると、こんな感じになります。
(出典:最新がん統計)
- 最終的には2人に1人はがんになるとはいえ
- 若いうちにがんになる確率は非常に低く
- 加齢とともにがんになる確率が高まる
そういうことであれば、時間をかけて貯金で備えても十分ということなります。わざわざ保険という手段をとる合理性はありません。
※30年間保険料を払い込んで、30年後にがんになり保険給付を受けるというのは、手数料を払いながら貯金しているようなものだからです。
②がんの治療費用は意外にかからない
保険の営業マンに、よくこういうことを言われます。
ウソではないのですが、誇張されているのも事実です。
アフラックの「がんに関する意識調査」によると、
- がんになったことがある人
- がんになったことがない人
この2者の間には、その治療費のイメージにだいぶ差があることが分かります。
がん経験あり | がん経験なし | |||
300万円より多い | 5.2% | 32.1% | ||
300万円程度 | 6.9% | 21.1% | ||
200万円程度 | 20.2% | 21.0% | ||
100万円程度 | 29.5% | 18.9% | ||
50万円程度 | 36.3% | 3.7% |
3人に2人の割合で、50~100万円程度の治療費で済んでいることが分かります。私も親族をがんで亡くしていますが、家計が破綻するような治療費はかかっていませんでした。
もっとも、がんの種類や進行状況によって、治療費は大きく変わります。平均額を用意するだけじゃ不安だ!という人がいるのも事実でしょう。そういう人には保険の価値があるのかもしれません。
③高額療養費制度の難しさが、保険人気に一役買っている
それは、高額療養費という制度があるからです。
医療費がかかりすぎた場合「一部を払い戻しますよ」という制度です。
高額療養費とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です
(出典:全国健康保険協会)
例えば、こんな感じです。
- 大きな手術をして、100万円の医療費がかかった
- 自己負担は3割なので、30万円支払う必要がある
- 高額療養費制度を使えば、平均所得の世帯では自己負担上限は9万円になる
- 結論:100万円の手術代がかかっても、9万円負担すればOK
上記で見たように、がんの治療費の大半が50~100万円程度の自己負担でおさまるのは、高額療養費制度があるからです。
※保険会社が、顧客に高額療養費制度の存在を知らせずに「がんの治療には大金がかかる!」といって保険を販売していたことが問題視されたこともあります。
ここ数年で高額療養費制度の認知度自体はだいぶ上がってきていますが、それでも要件がけっこう複雑なので、
- 自分の場合、自己負担額がどの程度かかるのかいまいち分からない…
- 高額の医療費が毎月かかってしまったらどうなるの…?
- 数字が多すぎて理解不能
という人も多いと推察されます。
④「先進医療」は「最先端の医療行為」という意味ではない
これも、よくあるセールストークです。
ここで、先進医療の定義を確認しておきましょう。
× 先進医療=最先端の医療行為を幅広く指す一般名詞
〇 保険適用の対象となっていないものの、保険適用できるかを評価するため、厚生労働省が保険診療との併用を限定的に認めた行為
先進医療=とにもかくにも最先端の医療行為というように認識している人は少なくありません。実際は、もう少し限定的な用語なのです。
厚生労働省の調査(平成29年)によると、がん治療を受けている推計患者数は
- 入院患者126万人
- 通院患者183万人
と、約310万人程です。
実際にがん治療でよく使われる先進治療は「陽子線治療」と「重粒子線治療」ですが、これらの実地件数は年間5,000件に満たない数です。
がん患者の0.16%ですね。
実際、これらの治療を受けると自己負担額が300万円と高額になりますが、確率としてはかなり低いことがお分かり頂けるかなと思います。
- どんな時に先進医療が必要になるか分からない
- そもそも先進医療の意味が分からない
- 先進医療にどれぐらいのお金がかかるか分からない
⑤がん保険は北東アジアでしか流行っていない
2019年時点で、がん保険の加入率は男女ともに40%程度と言われています。この数字にウソはありません。
みんなやっていますよ、というのは最も強力なセールストークの1つで、これにコロリといってしまう消費者は後を絶ちません。
ここで、興味深い情報を1つ。
実は、がん保険が流行っているのは北東アジアだけということです。がん保険が圧倒的な人気を誇っているのは
- 日本
- 韓国
- 台湾
だけなんだそうです。エリア狭っ!
欧米では、心臓病や脳梗塞も含めた重大疾病保険として売られているため、がんだけに特化した(言わば、謎の)商品は少ないとのこと。
※ちなみに、北東アジアに住んでいる人だけがんになりやすいというデータは、私は見たことがありません。日本でここまでがん保険が浸透したのは、巧みなマーケティング戦略の賜物です。
まとめ:保険会社の言い分を鵜呑みにするのはバランスが悪い
以上、まとめると次の通り。
がん保険を検討する際には、下記の情報も知っておきましょう。
- 「2人に1人はがんになる」はホントだけど、若いうちはならない
- がんの治療費は意外にかからない(自己負担は平均で100万円ぐらい)
- 高額療養費制度の難しさが、保険人気に一役買っている
- 「先進医療」は「最先端の医療行為」という意味ではない
- がん保険が流行ってるのは北東アジアだけ
私は、保険が
- 誰にとっても
- どんな時でも
- 絶対に不要だ
などと言うつもりは一切ありません。保険が役に立つ人もいますし、保険が必要になるときもあります。
問題は、保険の売手は「自分に有利な情報しか出さないし、自分が有利になるような情報の見せ方しかしない」ということです。
あなたが保険の営業マンに見せられた資料、言われたことは、保険会社の超優秀なマーケティング部門の人たちが作り出したセールス資料をもとにしています。
- 保険のメリット
- 保険のデメリット
できる限り多くの情報をテーブルに乗せて、広い視点で検討したいところですね。そのうえで、自分に合ったリスク管理をやっていきましょう。
それではまたっ!
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