目次
キヤノン 2018年12月期期末決算(2019年1月30日公表)
キヤノン株式会社のこびと「かのん」から、2018年1月1日~12月31日の業務報告が届いております。
経営成績の報告
当期 前期
売 上 高 3兆9,519億円 4兆800億円
営業利益率(※) 8.7% 7.9%
1株純利益 234.09円 222.88円
配当 80円(中間)+80円(期末)
※:退職金関係の会計基準が変わったために、前期の営業利益率が変動しています。かのんちゃんの実態に変わりはないので、あまり気にしなくて大丈夫だと考えています。
営業利益率0.8%アップはうれしいけれど、1,000億以上の減収はキビシイ。そんな状況のかのんちゃんです。
3Q末時点の着地予想と比べても
- 売上 :未達
- 営業利益:達成
- 税前利益:未達
- 税後利益:達成
と、まだら模様。かのんちゃんほど巨大な会社となると、3ヶ月先の予測も難しいのでしょうか。
営業利益率の上昇要因は
- 前期が特別悪すぎただけ
(前期、商業印刷事業でのれんの減損損失があった) - コスト管理をがんばった
の2つがメインのようです。
営業利益率の過去実績をみると、過去10年の平均では8.9%となっています。確かに、前期が悪すぎただけで、当期は普通の感は否めません。
一方、来期予想の営業利益率は8.3%。当期より0.4%低く見込まれています。
セグメント別にみると、相変わらずイメージングシステムビジネスユニットが足を引っ張っています。
カメラやインクジェット複合機がメインのこのセグメントは、対前年比売上△11.3%という状態です。細かくみると、
- カメラ:△14.6%
- インクジェット:△4.6%
- その他:△10.1%
という感じ。
営業利益はさらにひどく、対前年比△32.6%。
かのんちゃん自身はカメラについて
- コンシューマー市場全体が縮小したんだもん…
- ミラーレスカメラとか大容量インクモデルとかは頑張ってるもん
- 原価低減のための生産自動化はうまくいってるし
- 2019年は「将来の事業の安定化に向けた種まきの年」にしたいな
と語っております。
一方インクジェットについても
- 先進国はプリントボリュームが減っちゃったけどさ
- 新興国は伸びたの!
- でも2019年もイマイチな感じかも…
という感じ。
少なくとも短期的には、このセグメントの低迷は続くということでしょう。売上構成比25.5%の一大セグメントですから、もう少し積極的な打ち手が欲しいようにも思います。
財政状態の報告
当期末 前期末
総 資 産 4兆8,995億円 5兆1,983億円
1株純資産 2,618.76円 2,658.59円
自己資本比率 57.7% 55.2%
流動比率 199.1% 201.2%
財政状態については、特別気がかりな点はありません。
総資産は3,000億円近いマイナスですが、これも特に問題は無いと考えます。
縮小の一番の要因は、キャッシュ2,000億円の減少。一方で負債も2,200億円ほど減っています。ざっくり言えば「現金を払って借金を返した」イメージです。
減少している負債は主として長期債務ですから、返済を迫られて仕方なく支払ったわけでもありません。
キャッシュ・フローの状況
当期 前期
営業C/F 3,653億円 5,906億円
投資C/F ▲1,956億円 ▲1,650億円
財務C/F ▲3,548億円 ▲3,405億円
営業CFが激減しています。前期比、なんと△38.1%…!
主要因は
- 未払法人税等の増減:816億円
- たな卸資産の増減 :647億円
- 買入債務の増減 :362億円
といったところ。
法人税等はともかくとして、たな卸資産の増加によるキャッシュ・フロー悪化には注意が必要です。
かのんちゃんの説明によれば
- 増えちゃったのは:中国等のカメラ。売上が計画未達のため。
- 増やしてるのは :ネットワークカメラ。2019年に売るため!
なんだとか。
計画外の在庫膨張は危険信号ですから、よくよく注意してほしいものです。
ちなみに、来期予想の営業CFは昨年並み。
「投資・債務返済・配当金支払いを考慮しても、キャッシュはほとんど増減しない状況」
を目指しているようです。
- 営業キャッシュ・フロー:3,700億円
- キャッシュの期末残高 :5,200億円
というのは、過去10年でも最低の水準。
今後の見通し
業績予想
「収益力の再強化を目指すけれども、経営環境がキビシイ」…というのが、かのんちゃんの見立てのようです。
- アメリカ:税制改革の効果が薄れる
- ヨーロッパ:ブレグジットで不透明
- 中国:貿易摩擦がヤバそう
そして為替レートは円高の予測(円高による収益への影響予測:売上△1,237億円、営業利益△511億円)。確かに厳しい環境ではあります。
これに対するかのんちゃんの対応は
- 経費の選択と集中
- 自動化や内製化
原価低減と徹底した経費コントロールで、体質強化に取り組むのだとか。150億円のコストダウンを狙っているようです。
セグメント別では、メディカルシステム事業のみ増収増益。他セグメントは軒並み減収減益の見込みです。
配当金について
期末の配当金は、予想通り80円。中間配当と合わせて160円。なんとか今年も配当を維持してくれました。
かのんちゃんは、配当予想を決して出さないこびとです。
とはいえ、
- 減配しない歴32年の実績
- 増配は厳しそうな利益・CF状況
から考えて、2019年も同じ、160円を運んできてくれると思われます。
まとめ:まるで成長していない(シーさんより)
それから約4年が経ち、会社はどうなったのでしょうか?
来期の1株あたり当期純利益(予想)は222円。
こびと株.comのメンバーが目指している配当金投資は、配当金さえもらえていればOKというものではありません。事業の成長を裏付けとした増配・株価上昇にも期待しています。
ぜひ頑張ってほしいものですね。
キヤノンって、IR資料がめちゃくちゃしっかりしてるんですよね。配当政策を見ていても、株主の方を向いているのが良く分かります。こういう企業は応援してあげたくなります。
それではまたっ!
(参考:キヤノン株式会社 期末決算短信等)
Follow @kobito_kabu