こんにちは、シーウィード@こびとが見える経理マン(@kobito_kabu)です。
こんなレポートを目にしたんですよ。証券業界の今後についてです。
- 2018年、多くの大手証券会社で収益が悪化
- これを受け、コスト削減や業務効率化に取り組んでいる
- とはいえ、利益確保のために真に重要なのは「サービス価値向上」
- 今後は、「サービスの向上」に積極的に取り組んでいくべき…
ここまでは全然違和感はないんですけど、問題なのはここから。
目次
顧客層を庶民と富裕層に分けてアプローチする
顧客層のイメージを2つに分けて、それぞれこうやってサービスを向上させていくと。
- 庶民向け… デジタル × デザイン × エンターテイメント
- 金持ち向け… 安心感 × 信頼感 × 特別感
ナメてんのかと。
何が怖いって、合ってるのがスゴイと思います。このレポート書いたコンサルタント、めっちゃ優秀ですよね。端的にポイントをおさえている。
最近の若者からお金引っ張ろうと思ったら、上記の3つはまさにキーワードだと思います。
結局、今の庶民・若い世代は次の3つの感覚を重視しているということです。
庶民・若い世代が重視する3つの感性
- お得”感”…手数料無料、相談無料、利用料無料(最終的に本当にお得になるどうかはさておき、表向きのお得感が大事)
- お手軽感…ワンタップで購入、AIが自動売買、ワンクリックで口座開設、直感的な操作など
- エンターテイメント感…今までになかった新しいもの、未来を変えそうな何か
資産運用に興味を持って色々と調べている方なら、「あぁ、あれってそうかも」とピンとくるものがあるんじゃないでしょうか?
昔ながらの証券会社が作ってる証券アプリと比べて、最近出てきたサービスの(デザイン・使いやすさ的な)洗練され方ってすごいですよね。
- 口座開設
- 入金
- 投資
- 運用結果のチェック
この流れがめちゃくちゃスマート。今の若者は、たった1回やることが増えるだけで離脱するというのを良く理解しています。
投資対象にしても、
って人も結構いますよね。私の後輩にも結構います。20代前半なんて、特にその傾向が顕著だと思います。
今までになかったものに投資したい。
違う未来が見たい。
そんな感じです。気持ちは分かります。
自分の情報感度が高いのか?企業のマーケティングがうまいのか?
新しいサービスを否定したいわけではなく、ましてマーケティングを駆使して若い世代にアプローチしようとする取り組みが(すべて)悪いとは思いません。
一方で、これらの広告を目にする若い世代の方には、こう言っておきたいと思います。
企業は「こういう人たちにサービスを使ってほしい…!」と狙いを定めたら、実に的確に広告を打ちます。
- 若者が影響を受けているインフルエンサーに接触し
- 若者が良く見る動画の合間に広告を打ち
- 若者が良く見る雑誌に広告を打ち
- 若者がテレビを見る時間帯にCMを打つ…
とにかく効率的・効果的に自社サービスを刷り込みます。ビッグデータの活用により、その費用対効果はますますあがっていくでしょう。
広告を見かけたら「自分は潜在的な顧客層なんだな」と認識すべきです。こっちから情報を取りに行っているというよりは、向こうから情報がきているんだということです。
売りたいのは相手サイドですからね。
- 自分に必要なものを自分のアタマで考えて
- ”自分には届いていない情報”をみずからの足で探す
情報感度が高い人というのは、こういう人のことですね。
長い時間をかけて確立されてきた資産運用スタイルをする
新しいサービスには、これからの世の中を変えていく可能性があります。
とはいえ、資産運用の世界というのは「真剣勝負」の世界です。好景気の時はあまり表沙汰になりませんが、不景気になった時の残酷さには目を覆うばかり。本当に命を絶つ人がいる世界です。
たっぷりと余った資産があるのならともかく、
- 住宅資金
- 教育資金
- 老後資金
(人生で必要になる)こういった資金を捻出するため汗水流して働いている一般庶民に、エンターテイメント性のある投資が必要なのかどうか、私には疑問です。
- デジタル × デザイン × エンターテイメント
- お得感 × お手軽感 × エンターテイメント感
投資の目標が達成されるのなら、デジタルかどうかは関係ありません(お手軽に越したことはないですけど)。
投資の目標が達成されるのなら、デザイン性も関係ありません(オシャレに越したことはないですけど)。
投資の目標が達成されるのなら、エンターテイメント性も関係ありません(そりゃ楽しくてワクワクした方がいいですけど)。
魅力的な要素であることに間違いはないけれど、どれもこれも本質論ではないということです。
私は、長い間、多くの研究者・実務家が確立してきたオーソドックスな考え方を採用します。
資産運用で大切なことは
①目的に応じたアセットアロケーションを決めること
②できるだけ税金を払わないこと株式、債券、REIT、ゴールドなど、王道資産クラスの優良投資信託・ETFを中心にポートフォリオを作る。手数料はミニマムで。
NISA、つみたてNISA、iDeCoの枠を使って税金を回避する。
— こびと株.com (@kobito_kabu) March 18, 2019
- アセットアロケーションを決める
- 出来る限り手数料を払わない
- 最大限、優遇税制を活用する
- 資産運用でどれだけのリスクをとれるか?どれだけのリターンが欲しいか?
- そのためには株式や債券、REITや金の割合をどうすればいいか?
- そのためには日本、先進国、新興国の割合をどうすればいいか?
- 売買手数料などの手数料をできる限り負担しないためにはどうすればいいか?
- 税金を支払わないために活用できる税制はないか?
これが、資本主義社会でお金を増やしていくために答えるべき”重要な問いかけ”です。
これらを勘案した結果、長期国際分散投資にたどり着くのもいいでしょう。人によっては、数銘柄の集中投資にたどり着くこともあるでしょう。
資産運用の目的や、受け入れられるリスクの大きさが人によって違うのだから、投資スタイルに差があるのは当たり前です。
こういった過程をすっ飛ばして、お得感・お手軽感・エンターテイメント感に流されてしまうのは、(言葉は悪いですが)ネギがカモ背負って、渋谷のスクランブルエッグ交差点を歩いているのと変わりません。
※新しい金融サービスの弱点は、それを提供する会社に財務的な体力がないことです。慈善事業ではありませんから、彼らが食べていけるように必ず彼らにも利益が必要になります。
これが、サービス利用者の収益を圧迫する要因になるということ、不正や詐欺の誘因になるということを、意識しておいて損はありません。
まとめ:信頼と実績のブラックロック
世界最大の資産運用会社に、ブラックロックという会社があります。
その運用資産はなんと700兆円です。彼らが運用しているファンドのなかには、運用コストが0.05%程度しかないものもあります。
国内の某証券会社が『預かり資産こそ顧客からの信頼の証。当社は800億円もの預かり資産があります』という広告を打っていましたが、同じ理屈で考えるならブラックロックとはすでに勝負がついてますね。
- 預かり資産が多いから低コストのファンドが作れる
- 低コストのファンドだから長期的に見ると運用成績が良くなる
- 運用成績が良いファンドだからますますお金が集まる
- ますます低コストのファンドを作れるように…
これが世界最大の資産運用会社と、他の運用会社の明確な差でしょう。
資産運用は規模の世界ですから、この差は開きこそすれ縮まる可能性は低いです。
新しい金融サービスは、確かに未来を変える可能性があります。新しい市場を形成する可能性もあるでしょう。
とはいえ、私個人の感想としては、そういう新しい金融サービスの人柱には金持ちがなってくれよ…という感じですね。カネがあるんだから。
私は伝統的なスタンスで資産運用していきたいと思います。
なぜ広告がないのか、もうお分かりですよね。
それではまたっ!
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