こんにちは、シーウィード@こびとが見える経理マン(@kobito_kabu)です。
「金融庁が、老後に2,000万円足りなくなるよって言った問題」が盛り上がってますね。
報告書では夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯では、毎月平均5万円の収支不足が生じているとし、今後30年の人生があるとすれば、単純計算で2000万円が必要と試算
この「2,000万円不足」という言葉だけが一人歩きして、
- 「年金だけで安泰の老後を送るのは無理なんだ!」
- 「もう国が年金制度が破綻したって認めたぞ!」
みたいな変な炎上が起きているのですが、これについて、私の意見を記事にしておきます。
- 公的年金制度は破綻しません
- 破綻しないけど所得代替率は下がっていくので、年金問題を抱えていない人はいません
- 金融機関の営業トークに気をつけましょう
上記の3つですね。この記事で
- 変な不安から、年金を未納にしてしまったり
- 変な不安から、ぼったくり金融商品買わされたり
みたいな人が1人でも減ってくれると嬉しいなと思います。
それでは本題にはいりましょう。
目次
公的年金が完全に破綻する3つの条件【全部満たすのは非現実的】
年金制度が破綻するのはこういう時です。
- 現役世代が誰も年金保険料を納めない
- 誰も税金を納めない
- 積立金が完全に枯渇
これらのすべてが100年以内に起きるというのは非現実的です。
どういうことなのか、純に説明していきます。
前提:公的年金の財源について
あらためて、公的年金の財源を確認してみましょう。
※自分が将来「年金」をもらうことになったとき、どこからお金が出てくるのか?という話です。
公的年金には3つの財源があります。
- 現役世代が負担する保険料
- 税金等
- 積立金
公的年金は仕送り方式です。①あなた(現役世代)が今支払った保険料は、そのまま高齢者世代へとわたっていきます。自分が将来受け取る年金を、自分で積み立てているわけではないということです。
②消費税などの税金も、年金へと姿をかえて高齢者へ支払われます。国が負担している分があるということです。
残りは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用している③積立金から、高齢者へ支払われます。
具体的な数字を見てみましょう。
例えば、平成29年には公的年金制度全体で52兆円の収入がありました。
(出典:「厚生年金・国民年金の平成29年度収支決算の概要」より筆者編集)
※積立金は、人口がもっと減ってきたら取り崩されることになっているのでまだ出番がほとんどありません。
現状は、保険料と税金等で賄われていることが分かります(いきなり横道にそれますが、年金未納の人は、税金は負担しているのに将来的に年金をもらえないので、めっちゃ損してますね)。
上記の52兆円が、ざっくり高齢者に対する年金給付として使われています。
こうやって財源を確認してみると、年金制度が完全に破綻する(1円ももらえなくなる)条件が分かります。
こういう時です。
- 現役世代が誰も年金保険料を納めない
- 誰も税金を納めない
- 積立金が完全に枯渇
上記の通りです。
本当にこんなことが起きるのか?
それぞれ、状況を考察してみましょう。
①現役世代が誰も年金保険料を納めない世界は「非現実的」
国民年金には3種類の加入者がいます。
- 1号被保険者
- 2号被保険者
- 3号被保険者
難しい言葉に聞こえますが、イメージ的にはこんな感じです。※厳密な定義とは異なります
- 自営業者
- 会社員・公務員
- 会社員・公務員の妻(専業主婦)
それぞれの人数はこんな感じ。
(出典:政府広報オンライン)
年金の未納率が40%に!なんてことがニュースになったりしますが、それは第1号被保険者(自営業者)のみに限った話です。
計算が細かいので結論だけ書いておくと、『年金制度全体』で見た本当の未納率は2%程度です。
サラリーマンや公務員の方は身をもって分かっていると思いますが、第2号被保険者の年金保険料は「給与から天引き」されてしまうため、そもそも未納の問題は起きません。
つまり、約4,000万人以上は、好むと好まざるにかかわらず、必ず年金保険料を納めているということです。強制的に。
現役世代が減っていくとしても、会社員や公務員がゼロになることは絶対にありません。
国民全員フリーランスにでもなれば別ですが、安定した収入を求める人が多い日本人ならなおさらです。
- 年金保険料を誰もおさめなくなるなんてことは、ありえない
※現状、年間32兆円もの保険料徴収に成功?しています。
②税収ゼロの世界は「非現実的」
誰も税金を納めなくなったら、日本はすでに年金がどうのこうのという世界ではなく、修羅の国になっていると思われます。
想定するだけムダですね。国家・国民が存在する以上、税金は必ず発生します。そして、当選したい議員は、税金を年金財源に充てることで有権者からの支持を得ようとするでしょう。
社会保障を厚くすることで文句を言う高齢者はいないからです。
- 税金を誰もおさめなくなるなんてことは、ありえない
- 社会保障を軽視する議員ばかりになることは、ありえない
※現状、年間20兆円もの税金徴収→年金への充当に成功?しています。
③積立金が数十年内に枯渇するのは「非現実的」
2018年12月末時点で151兆円あります。
2001年度以降、現在までに約57兆円の運用益をあげています。
※ちょっと評価額がマイナスになっただけで一部のマスコミが騒ぎ立てますが、トータルでかなり優秀・堅実な運用をしていることが分かります。
この積立金は、
- 人口が多い今のうちに残高を増やしておいて
- 現役世代が減っていくとともに取り崩しを行っていく
こういう予定になっています。
取り崩しの段階になったら、
- 年金財源の20%に充てられ(60%が保険料、20%が税金、20%が積立金)
- 約100年後に積立金がほぼなくなる
ざっくりこのように計算されています。
積立金の残高水準は経済の好況・不況にも左右されますが、とにもかくにも急激な人口減少・少子高齢化に対応できるように設計しているということです。
- 積立金は、規律ある運用でしっかり運用されている
- 仮に数十年内に枯渇したとしても、そもそも公的年金の財源の約20%にすぎない
※人口が右肩下がりでどこまでも永遠に減り続けるということは考えにくいです。
どこかで底を打ち、人口は増え始めます。その時には、保険料や税金だけで年金制度を維持できますから、積立金の有無は問題にならないでしょう。
以上見てきた通り、この3つの条件が満たされるというのは非現実的です。
- 現役世代が誰も年金保険料を納めない
- 誰も税金を納めない
- 積立金が完全に枯渇(100年後にはなくなる)
公的年金制度が完全に破綻する(年金がもらえなくなる)という可能性は著しく低いです。
年金制度は破綻しないけど「所得代替率」という言葉は知っておこう
「仕組み的に公的年金制度は破綻しなさそうだ」という雰囲気は分かっていただけたかなと思いますがそれとこれとは別の話があります。
- 年金がゼロになることはなさそうだけど
- じゃあいくらもらえるのか?
という話です。
- 自分が受け取れる年金額が
- 現役時の収入の何%をカバーしているか?
これを「所得代替率」と言います。
たとえば、厚生労働省によると平成26年度のモデルでは、所得代替率は62.7%です。
※さすがに勘違いしている人はいないと思いますが、年金は現役時の収入を100%保障する制度ではありません。
現役時に34.8万円の収入があった人は、年金で21.8万円もらえるということになります。国は、この「所得代替率」という考え方を重視しているのですね。
年金給付について、0か100かの話なんかしていないということです。論点は、割合補填。
国は色々なケースを想定していて、
- 物価上昇率
- 賃金上昇率
- 運用利回り
- 出生率
- 寿命
こういった指標をベースにして、今後どれぐらいの所得代替率をキープできるか検証しています。
年金制度が破綻して1円ももらえなくなることはありませんが、所得代替率は減っていくことが分かっています。概ね40~50%の所得代替率になるとのことです。
- 所得代替率:現役時の収入の何%ぐらいを、年金でもらえるかという指標のこと
- 所得代替率は40~50%になっていきそう(妻子ありの一般モデルケースで。)
年金は、現役時の収入を100%保障するものではありません。
- どんなに給与が高くても
- どんなに給与が低くても
制度設計上、所得代替率が40~50%である以上は
- 足りない分(失ってしまう50~60%分の収入)を自分で備えておくか
- その分だけ生活水準を下げるか
どちらか(あるいは両方)の対応をとらざるをえないのです。
言い方を変えれば、年金問題を抱えていない人はいないということ。
現役時の収入の多い少ないにかかわらず、年金だけで老後どうにかしようという発想が、そもそもズレているというわけです。
金融機関のセールストークに気をつけよう
今回の「金融庁が老後に2,000万円足りなくなるよって言った問題」が追い風になるのは、金融機関ですね。
この言葉を使えば
- ぼったくり保険
- ぼったくり投信
- ぼったくり金融サービス
を売りたい放題です。まさに水戸黄門の印籠ですね。
「天下の金融庁様がこう仰られてるんですよ、何も対策しなくて大丈夫なんですか?」
この言葉を使ったセールストーク、営業資料が大量に作られる未来が見えますね。こういった言葉に乗せられてしまう人の老後不安が解消されることはありません。
嬉しいのは収益を中抜きできる金融機関だけです。本当に、くれぐれも気をつけましょう。
まとめ:公的年金制度は破綻しないけど、自助努力は必要です
というわけで、結論は金融庁のレポートと一緒ですね。
- 公的年金が、老後の収入の柱であり続けることは間違いない
- 支出の再点検や保有資産を活用した資産運用などで、資産寿命を延ばす取り組みが必要
ゆとりある生活水準は人によって違うのだから、一律に「2,000万円不足」という文言が必要だったかどうかはさておき、レポートとしてはおかしなことは言っていないと思っています。
今回の件、
- 金融庁の対応が悪い
- マスコミの取り上げ方が悪い
- いや、読み手が情弱なのが悪い
とか色々な意見がありますが、そもそも年金制度って難しいですよね。誰の立場に立っても、正解と呼べる対応が分からないw
右肩下がりの経済が見えていると、みんな余裕もなくなりますよね。
こびと株.comとしては、結果こうなりました。
どうも『じぶん年金デザイナー』のこびと株です
国民/厚生年金のプラスαとして、
・その他公的制度(iDeCo、NISA、小規模企業共済など)
・民間商品(個人年金保険、養老保険など)
・投資商品(高配当株、高配当株ETF、債券)などを組み合わせお客様に最適なじぶん年金を設計致します#言ってみただけ
— こびと株.com (@kobito_kabu) June 8, 2019
じぶん年金を作りたい人がいっぱいいるなら、もっとそういう記事を増やしていけば誰かの役に立つかな~。
※こびと株.comメンバーは、老後に不足されると言われている「月4~5万円」を配当金でほぼほぼ確保しています。他のじぶん年金も育成中。毎日小魚食べて骨を強くする地道なタイプです(*ノωノ)
とにもかくにも、ぼったくり金融商品を売りつけられないで(変な新しい金融サービスのCMとか始まりましたねw)、まっとうな投資商品買っていきましょう。
それではまたっ!
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