こんにちは、こびと株(@kobito_kabu)です。
以前、個人年金保険の正しい利回りの計算方法を記事にしました。
この記事のなかでIRR(内部収益率)という考えに触れました。IRRを使うと、株式でも不動産でも保険でも、どんな投資商品でも「複利」で比較できます。
本記事では、
という疑問にこのIRRを使って回答したいと思います。
国民年金はリスク・リターンが見合った優良な保険商品
- ざっくり75歳まで生きると、払い損にならない
- 81歳(男性の平均寿命)まで生きると、IRRは2.1%
- 87歳(女性の平均寿命)まで生きると、IRRは2.8%
- 100歳まで生きると、IRRは3.5%
目次
国民年金の損得をIRRで計算した結果
国民年金の仕組み
国民年金は「年金」という名前ばかりが強調されますが、その実態は保険です。
- 保険料を支払う
- それに応じた保障を受ける
そういう制度だということです。
国民年金保険は、こんな仕組みになっています。
保険料
- 20歳から60歳までの40年間加入する
- 月額16,610円の保険料を支払う(保険料は毎年見直しあり)
保障内容
- 65歳からは、毎年780,900円受給できる(令和3年4月以降の受給額)
- 亡くなったり、障害を負った場合も年金が受給できる
IRR(複利)を計算するのに必要な要素はたった2つだけです。カンタン。
- 投資期間
- 投資期間中のキャッシュフロー(お金の出入り)
この2つさえ分かってしまえば、IRR関数を使うとあっという間に複利を計算することができます。
※シンプルなケースを見てみます。例えば
- 1年目に300万円支払って
- 5年目に330万円受け取る
この場合のIRRは下記の通り。
IRR(範囲)だけで良いので、SUM関数と大して変わらないですね。出ていったお金をマイナス、入ってきたお金をプラスで入力するのがポイント。
300万円を複利2.41%で5年運用すると、5年目に330万円になることが確認できます。
投資期間
- 20歳~死ぬまで
キャッシュフロー
- 20歳から60歳までは年間約20万円のキャッシュアウト
- 65歳からは年間約80万円受給
こういう条件で計算します。
※複雑に見えますが、エクセルを使えば簡単に集計可能です。
国民年金の損得をIRRで見てみる
計算結果は、下記表の通り。
受給開始後、長生きすればするほど「受給額の累計」が増えていきます。その結果、約75歳まで生きるとIRRがプラスになることが分かります。
※IRRの欄には、IRR(その年齢までのキャッシュフロー合計額)という算式が入っています
ポイントをまとめるとこんな感じです。
- ざっくり75歳まで生きると、払い損にならない
- 81歳(男性の平均寿命)まで生きると、IRRは1.5%
- 87歳(女性の平均寿命)まで生きると、IRRは2.2%
- 100歳まで生きると、IRRは2.9%
グラフで見ると、こんなイメージですね。
早くに亡くなってしまうと大損することが分かります。
さて、国民年金は
- 終身年金で
- インフレにもある程度対応してて
- 円貨建てなので為替リスクもありません
民間の個人年金保険のIRRはせいぜい0.5~1.0%ぐらいです(障害年金や遺族年金といった保障もありません)。インフレにも未対応です。
参考として、先進国の国債金利(10年モノ)の利回りを見せておくと
- 米国債:約1.6%
- 英国債:約1.2%
- ドイツ国債:約-0.1%
- ノルウェー国債:約1.7%
といった感じ。為替リスクをとっても、せいぜいこの程度の利回りです。
保険機能もついている国民年金がいかに魅力的な制度になっているか、分かるのではないでしょうか。
※なお、
- 国民年金の保険料は毎年見直されていきますし
- 年金受給額も見直されていく
この点には注意してください。上記の表は2021年10月現在で分かっている保険料・受給額がそのまま変わらないものとして計算しています。
節税効果を加味した国民年金のIRR
忘れてはいけないのがコレ。
国民年金保険料には「節税効果」があります。
支払った保険料の全額に節税効果があるため、平均年収レベルの人の場合(年収400~500万円で所得税率10%)、年間4万円ほどの節税効果があります。
- 節税している
- =税金が安くなっている
- =そのぶんお金をもらっているのと変わらない
ということですから、キャッシュフロー上はプラスの扱いになります。
これを踏まえたIRRは下記の通り。
※節税効果なしのバージョンと比較すると、IRRが0.6%前後ほど改善しています。
80歳以上生きると、60年間で複利2.1%で運用できていたことになります。ますます魅力的な数字になりましたね。
年収が高い人は、もっと節税効果が大きくなるので、IRRが4%とか5%とかいくかもしれません。
※公的年金は70万円までは税金がかからないので、国民年金分の受給額ぐらいならほぼほぼ税金がかかりません。つまり、受取時にもしっかり節税メリットがあるということです。
まとめ:国民年金はリスクとリターンのバランスが良い優良な保険
まとめます。
国民年金のリスクは下記の通り。
- 保険料の値上がり
- 受給額のカット
- 75歳までに亡くなる(遺族年金を受け取れる家族がいない場合はソン)
国民年金の保障(リターン)は下記の通り。
- 働けなくなったら、障害年金を受給できる
- 亡くなってしまったら、家族が遺族年金を受給できる
- 老後には、終身年金を受給できる
- 75歳まで生きればプラス、平均寿命まで生きればIRR2.1~2.8%ほどになる(節税効果考慮後)
民間の保険で、このレベルの保険商品を作るのは不可能だと断言します。
年金制度に対する不安も聞きますが、年金制度は破綻しません。
もちろん、超少子高齢化の世の中ですから、基本的にはIRRが少しずつ悪化する方向で、保険料が増えたり年金カットされたりするでしょう。
それでも受給できなくなるなんてことはありえません。給付水準のカットにしても、実際はそこまで問題にならないとの見方もあります。
そもそも国民年金は「世代間扶助(世代間の助け合い)」のための制度ですから、損得で語るのはナンセンスです。加入は義務ですしね。
とはいえ、100%絶対に損するのなら、「国民年金なんて加入したくない!」という人がいても不思議ではありません。でも、国民年金は損得で語っても十分に魅力のある商品なのです。
というわけで「IRRを使って国民年金のリターンを計算してみた」というお話でした。IRRって、どんな種類の投資でもリターンを計算できて便利ですよね~。
参考なれば幸いです。
それではまたっ!
Follow @kobito_kabu