【勘違い多発】個人年金保険の節税効果を考慮した『正しい利回り』の計算方法

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主婦
将来に備えて個人年金保険を検討しているんだけど、この保険って節税効果があるのね。節税を考慮すると利回りが5~10%ぐらいになるから、やらないと絶対に損よね

こんな勘違いにツッコミを入れたいと思います。

こびと株.com(@kobito_kabu)はマネー系のブログなので「個人年金保険ってどう思いますか?」みたいな質問もたくさんきます。

本記事でまとめてお答えさせて頂きます。

結論
  1. 個人年金保険は超低利回り
  2. 皆がやってる利回りの計算はだいたい間違ってる
こびと株
それでは、本題に入ります。

 

個人年金保険の2つの特徴

まず、個人年金保険の特徴をおさらいしておきます。特徴は下記2つ。

大きな特徴
  1. 私的年金である
  2. 節税効果がある

 

特徴①私的年金である

1つめの特徴は、私的年金であるということです。

  • 公的年金:国民年金や厚生年金など、国が運営している年金(対象者は強制加入
  • 私的年金:iDeCoや企業年金や個人年金保険など、その他の年金(任意加入

公的年金だけじゃ足りない!という人のための、上乗せ部分の年金ということですね。

 

そして、ひとくちに個人年金保険と言っても、受給期間受給額は商品によってまちまちです。次の2つは、自分でアレンジすることになります。

  1. 受給期間(5年・10年の有期なのか?終身なのか?)
  2. 受給額(契約時に受給額が確定するのか?受給する時にならないと分からないのか?)

 

サンプルイメージとして、明治安田生命の個人年金保険のシミュレーションを載せておきます。

  • 10年有期で受け取り
  • 契約時に受給額が確定する

こういうタイプの個人年金保険です。

シミュレーション結果
  1. 30歳~65歳で、総額420万円払う
  2. 65歳からの10年間で、総額441万円受け取る
  3. 年金受取率は105.2%
こびと株
圧倒的に低利回りですね。

しかし、高利回り商品にあふれていた昔ならいざしらず、この超低金利時代に個人年金保険に「高利回り」を求めているユーザーはいません。

みんな、次の「節税効果」を狙っているのです。

 

特徴②節税効果がある

2つめの特徴ですが、個人年金保険には節税効果があります。

個人年金保険料控除という制度があり、これを活用すると税金を減らせます。

具体的には、支払う保険料の金額に応じて、MAXで下記金額を『所得』から減らすことができます(※これを所得控除と言います。

  • 所得税:年間40,000円
  • 住民税:年間28,000円

収入が増えれば税金は増える。収入が減れば税金は減る。ここまでは分かりますよね。

個人年金保険料を払うと収入が減ったことになるので、納付すべき税金が減るというワケ。

 

所得税の税率を10%、住民税の税率を10%とすると、節税効果はこれぐらい。

  • 40,000円×10%=4,000円
  • 28,000円×10%=2,800円

合計で年間6,800円の節税になります。収入が多い人は所得税率が高くなるので節税額が大きくなります。

ここから、勘違いが始まります。

 

個人年金保険の利回りの計算方法

よくある勘違い

よくある勘違いは、こういう勘違いです。

  • 年間で12万円(毎月1万円)の保険料を支払う
  • 節税効果は6,800円
  • 6,800円÷120,000円=5.67%
主婦
すごい!この低金利の時代に5.67%の利回り!雀の涙とはいえ、個人年金保険自体の運用益もあるし、投資と違ってリスクもない。すごい商品ね

所得税率が高い場合や、個人年金保険料控除のために保険料の額を最適化している人は、利回り7%とか8%とかいう計算をしていることもあります。

こういう考え方をする人の頭の中は、こうなっています。

ところがこれは正しくありません。複利で計算されていないからです。

 

多くの人が見落としているポイントですが、節税効果があるのは保険料を支払った年のみです。

  • 1年目に支払った120,000円には6,800円の節税効果がありますが
  • 2年目の時点では、1年目に支払った保険料には節税効果がありません(つまり何も生み出さない死に金になっているということ)

つまり、保険料は累計で見ていくべきということになります。

累計でどんなにたくさんの保険料を支払っていったとしても、毎年の節税額はロックされています(今回のシミュレーションでは6,800円)。

だから、時間が立てば立つほど過年度に支払った「死に金」が累積されていって、単年度の利回りは低下していくというわけです。

※新規契約→節税効果をゲット→翌年解約→新規契約を繰り返せば毎年5.67%の利回りを維持できますが、解約すると元本割れするので通常はそんなことはできません。

こびと株
ここまではあくまでイメージ。これから、正しい利回りの計算の仕方をご紹介します

 

正しい計算方法

個人年金保険の利回りを正しく計算するには、IRR(内部収益率)という考え方を知っている必要があります。

主婦
難しい専門用語を出されても分からないわ…

という人のために、概念は説明せずに計算方法だけ伝えます。ここでは、とりあえずIRR=複利だと思っておいてもらえればOKです。

 

用意するものはエクセルだけです。

これだけで計算できる
  1. エクセルを準備する
  2. IRR関数を使う

先ほど紹介した明治安田生命の個人年金保険をベースに、試算してみましょう。

  • 30歳から毎年12万円支払って(毎年の節税額は6,800円)
  • 65歳から10年間、毎年44万円受け取る

というケースでのシミュレーションです。

 

とりあえず、計算結果だけ先に見せておきます。

結論としては、この商品の最終利回りは0.47%(最下部黄色のセル)です。

※収入が増えて「節税額」が増えても雀の涙です。全期間で所得1800万円超(所得税率40%)のエリートでも、IRRは0.96%にしかなりません。全期間で所得税率20%だと、IRRは0.63%

 

上記の表を、もう少し詳しく解説します。

難しい計算をしているように見えますが、やっていることは2つだけです。

  1. 投資期間を決める
  2. 投資期間内のキャッシュフローを計算する

 

ひとまず、簡略化した表でIRR関数を使ってみましょう。

  • 1年目に300万円支払って
  • 5年目に330万円受け取る保険を契約

複利は、IRR関数を使ってこう計算します。

sum関数とほとんど同じ使い方ですね。300万円が毎年2.41%ずつ増えると、5年目に330万円になりますから、ちゃんと複利を計算できていることが分かります。

※IRR関数の記述方法

  • IRR関数=IRR(キャッシュフローの範囲 , 入力不要
  • 出ていったお金は負の数
  • 入ってきたお金は正の数

入力するのがポイントです。

 

こびと株
これを応用すると、個人年金保険の利回りも計算できます

 

重要なことなのでもう一度言いますが、IRR関数を使って複利を計算するには次の2つが分かるだけでOKです。

  1. 投資期間
  2. 投資期間内のキャッシュフロー

 

今まで見てきた個人年金保険の場合、①の投資期間というのは45年です。

  • 35年かけて保険料を払い込んで
  • 10年かけて年金を受け取る

だから、合わせて45年です。

 

②のキャッシュフローというのは、お金の出入りのことですね。

  • 出ていくお金=保険料
  • 入ってくるお金=節税額年金受給額

 

①投資期間と②キャッシュフロー。

この2つをエクセルに打ち込んでいくと、先ほど見せたこの表ができあがるというわけです。

黄色いセル=IRR関数のところは太枠を範囲指定しているだけです。

こびと株
これが、節税効果も考慮した、個人年金保険の本当の利回りです。

結局、この年金保険は、45年の間に

  • 最初の35年で、毎年113,200円支払って(節税効果を考慮)
  • 36年目から10年間で、毎年441,000円受けとる
  • 純益は448,000円

という商品です(キャッシュフローを表している太枠内を見ると分かる)。

45年という超長いスパンで、たったこれだけのキャッシュフロー。複利はたったの0.47%

 

これ、本当にお得な商品だと思いますか?

インフレ率を考慮した時に、資産を保全できる利回りだと思いますか?

 

いずれにせよ、節税効果で毎年5.67%(人によっては7%とか8%)の利回り!というのとはかけ離れた数字であることが分かります。

まさに、数字のマジックですね。

 

補足:IRRの魅力

世の中にはたくさんの『利回り』があります。例えば

  • 貯金:利率(利息÷貯金額)
  • 保険:返戻率(返戻金÷掛金総額)
  • 不動産:表面利回り(年間家賃収入÷不動産購入額)
  • 株式:配当利回り(配当金÷株価)

こんな感じです。これらの利回りを単純比較しても、どれが優秀な投資先か分からないですよね?計算式が違うからです。

 

しかし、どんな投資商品でも、投資商品である以上は

  1. 投資期間
  2. キャッシュフロー(お金の出入り)

この2つは必ず存在します。

 

そして、この2つを使ってIRRを計算できれば、上記のような種類の違う投資商品のリターンを”同じ基準で”簡単に比較することができるというわけです。

こびと株
どんなにお化粧した投資商品も、IRRの前では無力。ワシはIRRを「投資界におけるラーの鏡」と呼んでおるよ

ドラクエ世代にしか伝わらない例えをしてすみません。

 

保険会社の保険営業の特徴

保険会社の営業マンの説明は、下記のようになりがちです。

  • リスクは小さく見せる
  • リターンは大きく見せる

勘違いさせられてツマラナイ保険商品を買わされないために、十分に注意しましょう。オオカミにむしゃむしゃされる子羊さんになってはいけません。

 

リスクは小さく見せる

個人年金保険には、下記のようなリスクがあります。

  1. 流動性リスク(早期に解約すると元本割れする)
  2. 金利リスク(契約後に金利が上昇すると相対的に損する)
  3. インフレリスク(物価の値上がりに負ける可能性がある)

先ほど算出した0.47%の複利リターンというのは、こういったリスクを引き受けた結果というわけです。

 

ところが、営業マンは「売りたい」という気持ちが先行するため、上記のリスクをちゃんと説明しないか、もしくはさらっとしか説明しません。

個人年金保険に限らず、投資商品のリスクは、私たちが認識するよりも過小に説明されがちです。

常にそういう意識をもって話を聞きましょう。

 

リターンは大きく見せる

明治安田生命の個人年金保険は、節税効果を加味しなければ複利0.22%にしかなりません。もうほとんど定期預金と同じか、それに負ける利回りです。

  • 複利0.22%の年金保険ですと説明するか
  • 返戻率105.2%の年金保険ですと説明するか

あなたが営業マンならどちらの数字で売り込みますか?

 

また、

  • 節税効果を加味した複利は0.47%ですと説明するか
  • 節税効果は年利5.67%ですと説明するか

こちらなら、どちらの数字を使って営業しますか?

 

選択肢が複数あるのなら(そしてそれが合法なら)、少しでも顧客にとって魅力的に見える数字を使いますよね。

他人からあなたに提示されるリターンは、想定される最大限魅力的な数字であるということを意識しておきましょう。

こびと株
リスクを大きく、リターンを小さく見せたら、何も売れないからね

 

まとめ:節税効果を考慮しても、個人年金保険の利回りはまっとうな投資に劣る

以上をまとめると、下記の通り。

個人年金保険には2つの特徴があります。

  1. 私的年金である(受給期間や受給額はアレンジできる)
  2. 節税効果がある

 

低利回りの時代ですが、節税効果を加味すると魅力的な商品だと思われています。

ところが、わりと多くの人はその計算方法を勘違いしていて、個人年金保険の利回り計算を正しくできていません(=投資判断の役に立つ利回りになっていない)。

正しい投資判断をするための利回りを求めるには、IRRの考え方を取り入れる必要があります。

  1. エクセルを準備する
  2. 投資期間を把握する
  3. キャッシュフローを把握する(出ていったお金は負の数で、入ってくるお金は正の数で入力)

IRR関数を使えば、これだけで簡単に計算できます。

 

保険会社は、リスクは小さく、リターンは大きく見せようとしてきますから、十分に気をつけましょう。

結論
  1. 個人年金保険は超低利回り
  2. 皆がやってる利回りの計算はだいたい間違ってる(僕も間違ってたらごめんね(*ノωノ))
こびと株
以上です。お付き合い頂きありがとうございました~

それではまたっ!

 

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ABOUTこの記事をかいた人

こびと株.comの管理人。一部上場企業での経理/財務の実務経験10年超、日商簿記1級、証券アナリスト、FP資格を有する「企業と個人のお金の専門家」。4つの財布(給与/配当/不動産/事業収入)を駆使して経済的自由を達成することを目標に奮闘中。