こんにちは、こびと株(@kobito_kabu)です。
制度が複雑で理解するのが難しい年金制度。
ちまたでは、
- もらえなくなってしまうのではないか?
- めちゃくちゃ少なくなって、生活が成り立たなくなるのではないか?
こういった悲観的なコメントが目立ちます。安心安心!という声はほとんど聞かないですね。
この記事では、悲観的になりすぎなくて良い3つの理由を書きます。
- 所得代替率は2~3割減るが、受給額はそこまで減らない
- インフレ率も考慮されている
- 現状、年金財政は想定の範囲内
上記の通り。
以下、順番に見ていきましょう。
目次
前提について
①年金制度の完全破綻について
私の考えでは、年金制度の完全破綻はありません。
なぜかというと、この3つの条件が同時に満たされることはありえないから。
- 現役世代が誰も年金保険料を納めない
- 誰も税金を納めない
- 積立金が完全に枯渇
※詳細については、この記事をご参照ください
②所得代替率について
年金制度が完全破綻=もらえる年金がゼロになるということはありえないと思いますが、「所得代替率」は減っていくことが分かっています。
所得代替率とは「現役時収入の何%を年金で賄えるか」という指標です。
※年金受給額:会社員+専業主婦世帯の標準的な受給金額
※現役時代の手取り収入:被保険者(男性)の平均手取収入
厚生労働省が出しているモデルでは、平成26年度の所得代替率はこのようになっています。
- 現役時の月収は34.8万円だったけど
- もらえる年金は21.8万円
- 結果、所得代替率は62.7%
ということになります。
公的年金の給付水準は所得代替率で考えることになっているのですが、この数値は最終的に40~50%ぐらいになると予測されています。
- 年金制度が完全破綻する可能性は著しく低い
- 所得代替率は62.7%→40~50%に減少する(なんと2~3割も減る!?)
2~3割も年金が減るかもしれないのに、なぜ悲観的にならなくても大丈夫なのか?
3つの理由を確認していきます。
【40年後】年金の受給額はどこまで「減る」のか?→悲観的にならなくて良い3つの理由
理由①:所得代替率は2~3割減るが、受給額はそこまで減らないから
減少するのは、あくまでも「所得代替率」です。受給額がどうなるかは、その時の現役時の収入水準によります。
図で示すと、こういうことです。
実質賃金上昇率を1%とすると、40年後には手取り収入が34.8万円から51.5万円に増加していることになります。
だから、所得代替率が62.7%から42.0%に減っても、受給額そのものは21.6万円とあまり減っていないというわけです。なんだか不思議な感じがしますね。
私自身、感覚的には正直ピンとこないところもありますが、あくまでデータ上は『ちょっと減るだけ』なのです。
※ちなみに、所得代替率は50%を切らないように調整することになっているので、ひたすら所得代替率が下がり続けるというのは、わりと保守的な見方です。
上記で記載した数値・考え方は「人生100年時代の年金戦略」田村正之著 を参考にさせて頂いています。年金制度について非常に分かりやすく、そして網羅的にまとめられている良著なので、興味のある方はぜひ購入してみて下さい。
という意見もあると思いますが、上記のシミュレーションは、政府が作った8つのシナリオのうち下から2番目のシナリオに基づいています。
つまり、比較的「経済成長が弱い」シナリオということ。
想定通りにいくかどうかはさておき、政府は色々なシナリオを考えて年金財政を検証しているということは、知っておいて良いと思います。
理由②:インフレ率は加味されている
これは誤解、インフレ率は加味されています。
年0.9%の物価上昇が44年続くとすると、2058年時点での年金受給額は32.0万円にまで上昇することになります。この数値をそのまま使ってしまったら
「いくら年金額が増えても、インフレが続いてお金の価値が減ってるのだから、実質的な年金の価値は目減りしている」
という主張がそのまま正解になるでしょう。
しかし、最初に言った通り前述のシミュレーションではインフレ率は加味されています。だから、年金受給額は32.0万円から21.6万円に調整されているのです。
小難しく感じるかもしれませんが、結論としては、これだけ覚えておいてください。
現状のシミュレーションでは「現時点と同じような感覚で使える21.6万円が将来も手に入る」いうことになります。
理由③:現状、年金財政の推移は堅調
年金記録問題を筆頭に、年金制度は過去に大小さまざまな不祥事を起こしてきています。こういった事件や、制度の複雑さが年金制度の信頼を揺るがしているのは間違いのないところでしょう。
とはいえ、客観的な数値を見てみると、年金財政の各種指標はそこまで悪くありません。想定した数値と現状を見比べてみると
- 被保険者数 6,556万人 → 6,731万人 (想定以上)
- 実質賃金上昇率 ▲2.0% → ▲2.0% (想定並み)
- GPIFの運用利回り ▲1.0%~0.3% → ▲4.3%~11.1% (2015年度以外想定以上)
- 合計特殊出生率 1.35% → 1.44% (想定以上)
などなど。
被保険者数が増えているのは、働く女性・働く高齢者が増えているからです。こうやって「働いて制度を支える人」が増えれば増えるほど、年金制度の持続性は高まります。
年金制度は超長期にわたって運営していくものですから、たった数年の状況を見ただけでは何とも言えません。
しかし、政府は5年に1回こういった数値を見直して、年金制度の持続可能性を検証し、メンテナンスに努めています。今後も、冷静に年金制度の状況をチェックしていきたいところですね。
まとめ:年金制度に過度な悲観は無用。ほどほどの距離感で自分にできることをやろう
以上をまとめると、この通り。
- そもそも公的年金制度が完全破綻する可能性は低い
- とはいえ、所得代替率は減っていくことが想定されている
ただ、そこまで悲観しすぎる必要はありません。
- 所得代替率は2~3割減るが、受給額はそこまで減らない
- インフレ率も考慮されている
- 現状、年金財政は想定の範囲内
8つのうち「下から2番目」のシナリオでも、受給額は21.8万円→21.6万円の微減にとどまっています。
ここから何が言えるかというと、公的年金が老後生活の柱であることは変わらないということ。
- 公的年金制度に全幅の信頼を置くことはできないかもしれませんが
- かといって、メチャクチャで破綻している制度なんかではありません
国が公表している受給モデルや「年金定期便」などの資料をこまめに確認しつつ、自分の生活に足りないと感じられる部分は自分で準備していく。
そういう姿勢が大切だと思います。
年金制度についてしっかり学びつつ、家計も強化していきましょう。
それではまたっ!
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