目次
キヤノン 2020年12月期期末決算(2020年7月28日公表)
キヤノン株式会社のこびと「かのん」から、2020年1月1日~6月30日の業務報告が届いております。
経営成績の報告
当第2四半期 前第2四半期
売上高 1兆4,556億円 1兆7,703億円
営業利益率 1.0% 4.7%
1株純利益 12.41円 61.22円
配当 40円(中間実績)&期末予想未定
かのんちゃん、2020年4~6月の3ヶ月で、初の四半期赤字を記録しました!
2Q累計期間(1月~6月)ではかろうじて黒字ですが、前期比で
- 売上18%減
- 利益7~8割減
と、見事にボロボロ。
かのんちゃん本人の主張は、一言でいえば
- 売上:2100億円
- 営業利益:700億円
がコロナによるマイナスの影響額とのこと。
つまり、「コロナさえなければ売上6%減、営業利益2%増で、まぁまぁだったはず…!」と言いたいみたいです。
個人的には
という感じ。
セグメント別にみても、
- オフィス:売上19.8%減、営業利益47.1%減
- イメージングシステム:売上23.0%減、営業利益90.3%減
- メディカルシステム:売上3.1%減、営業利益1.6%減
- 産業機器その他:売上16.4%減、営業利益90.8%減
どこもかしこも、もうボロボロ。全て減収減益で良いとこナシです。
カメラの需要が消える、オフィスでのプリントボリュームが減る、頼みの医療機器やネットワークカメラも販売活動ができない、BtoBは景気悪化による投資抑制が響く…そして円高の影響が54億円…。
かのんちゃん自身は、
- オフィス:ペーパーレスや在宅勤務で厳しいけど、紙は不可欠の再認識も!リモートワーク支援とか頑張るっ!
- イメージングシステム:カメラは市場縮小しても採算とれるように頑張る。インクジェットは在宅需要で伸びてる!
- メディカルシステム:コロナで商談ができなくて辛かったけど、下期は政府が医療体制整備に動くと思うから!
- 産業機器:半導体露光装置は悪くないし、非接触・非対面のニーズ拡大でネットワークカメラには未来がある!
と申し述べております。
財政状態の報告
当第2四半期末 前期末
総 資 産 4兆6,707億円 4兆7,684億円
1株純資産 2,414.53円 2,531.03円
自己資本比率 54.1% 56.5%
流動比率 174.51% 192.2%
こちらについては引き続き、
- じわじわ悪化し続けている
- とはいえ、現時点でどうしようもないコトになっているわけではない
という認識です。
※気にかかるとすれば、売上債権が減ってるのに、貸倒引当金が増加している点でしょうか。貸倒実績が増えていないか、若干引っかかります。
キャッシュ・フローの状況
当第2四半期 前第2四半期末
営業C/F 1,408億円 1,132億円
投資C/F ▲729億円 ▲1,108億円
財務C/F 222億円 ▲1,075億円
(あれだけ経営成績がボロボロだと、なんとも言えない気持ちですが)キャッシュフローの改善は良い傾向です。
主な要因は
- 運転資金の改善
- 短期借入金の増加
の2つ。
①売上債権の回収が進んでいるのは、悪いことではありません。(もしも貸倒懸念がじわじわと高まっているなら、なおさらです。)
気にかかるのは、②借入です。
もちろん、コロナ不況による経営の圧迫を考えれば、安全に手元資金が確保できているのは素晴らしいことです。
とはいえ、その借入が「長期債務」ではなく「短期借入金」であるのは喜ばしいことではありません。
今後の見通し
最新のニュース
- コロナ対策関連
- 役員人事
①コロナ対策に関連して、かのんちゃんは
- 「COVID対策支援宣言書」に発起人として参画すること
- 通常業務を再開すること
を発表しています。
COVID対策宣言書への参画することは、つまり
(キヤノン株式会社ニュースリリース「新型コロナウイルス感染症と戦う知的財産宣言に発起人として参画」より抜粋)
という宣言です。
かのんちゃんは、米国特許取得数が34年連続5位内(日本企業では15年連続1位)の特許エリート!(?)
そのかのんちゃんがこういった宣言に積極的に参画することには、大きな社会的意義があると思われます。
通常業務の再開は、6月1日から始まっています。
かのんちゃんは、コロナの感染拡大防止のため、
としてきました。
原則全従業員を休暇扱い&休業手当を支払うということで、世論的にも好評だったのではないかと。
②役員人事の目玉は、なんといっても御手洗さんの再登板です。
5/1付で代表取締役が「健康上の理由」で辞任。
御手洗さん、
- 1995年~2006年
- 2012年~2016年
に続き、3度目の代表取締役社長就任です。
- 御手洗氏が実質25年もトップだから、キヤノンが低迷する
- キヤノンの最大のリスクは後継者が育っていないこと
などと批判も多い模様。
業績予想
個人的には、ともかく業績予想が公表されたことにホッとしています。
かのんちゃんなりに現在のコロナの状況を見積もり、下半期の見通しをたてているということ。
- 売上:前期比14%減
- 利益:前期比6~7割減
ではありますが、ともかく黒字確保の予想となりました。
予想の前提となる想定は
(キヤノン㈱ 2020年12月期 第2四半期決算短信より抜粋)
- 大規模な財政出動と大胆な金融政策で今の状況を底に上向くだろう
- でも回復ペースは限定的だろう
- だってコロナ自体の収束目途がたってないんだもん
という感じですね。
ちなみに、今回の業績予想、2019年12月期期末決算時に発表していた予想と比べると、
- 売上:17%減
- 営業利益:80%減
- 税前利益:71%減
- 純利益:73%減
という悲惨な数字になっています。黒字を確保できるとはいえ、株主に配当できるほどの余裕があるかどうかはまったくの別問題。むしろ、そんな余裕はないと断言できるレベルの利益水準です。
配当金について
かのんちゃん、とうとうやってくれました。こびと株オーナー最大のショック、大・減・配。
中間配当は、80円→40円。なんと50%オフです!
シーさんもこんなことを言ってましたね。
母が62歳で人生初書籍を出したタイミングで、キヤノンが33年ぶりに減配しました。私はこの日を一生忘れません。
— こびと株.com (@kobito_kabu) July 28, 2020
※この日の晩ごはんは玄米とたくあんだったそうです(本当かどうかは知りません)
いえいえいえ。分かってたんです。
えぇ。知ってましたとも。
そのために毎四半期、こうやって決算発表をチェックしているわけですから。
実際過去の記事でも
- 2020年12月期第1四半期決算時:
「さすがにそろそろ減配も覚悟しなきゃいけないかな…」 - 2019年12月期期末決算時:
「こびと株たちの中で1番の問題児」 - 2019年12月期第3四半期決算時:
「「借入金で配当金を払う」ような真似を、いつまでも続けられるはずはありません。」
といったコメントをしています。
それでも売らなかったのは、自分たちの運用プランにヒビが入ったわけではないからです。
こびと株のメンバーは
- ポートフォリオ全体として、長期的に元本を割らないこと
- ポートフォリオから、投資額に対して税引後3%以上の配当金を得続けること
を目的として投資をしています(現状、税引き後4%超の配当金を得ています)。インカムを産み続ける『成長する債券』を持ち続けるイメージです。
現状、日米その他、トータルで100銘柄以上の株式に分散しており
- ポートフォリオ全体が生み出す配当金のうち、1社からの配当金が占める割合は最大でも3%程度
- ポートフォリオ全体が生み出す配当金のうち、1セクターからの配当金が占める割合は最大でも10%程度
といった感じになっています。
仮にかのんちゃんが無配転落したとしても、こびとポートフォリオ全体に与えるダメージは2%未満です。ポートフォリオ全体としては、100円もらえると思っていた配当金が98円になるだけです。
※他の保有銘柄は増配しているものも多く、むしろポートフォリオ全体としては増配を続けています。
未来永劫、100%絶対に減配しない会社を探し当てられるのなら、その会社に100%の資金を投下すれば良いだけです。それをしないで分散しているのは、まさにこういう時のため。
- どこかの会社が沈んでも
- どこかの会社でフォローする
- そして、全体として「勝てる」ポートフォリオにする
それが分散です。
分散しまくっている以上、「沈む企業」が出てくるのは、想定内です(もちろん、コロナによるトドメは想定外)。
同業種で、キヤノンに代わる「優良高配当株」があれば良いのですが、コニカミノルタ、リコー、ニコン、ブラザーなど、同業種の会社も軒並み苦戦を強いられている状況。
キヤノンへの投資を「失敗」と考えるならば、そもそもにおいてデジカメ・プリンタなどを主力とするビジネスに投資したのが良くなかったということになりますね。
景気は、必ず循環します。キヤノンのような景気循環株は
- 不景気で業績が落ち込み
- 好景気で業績が向上します
不景気がきたときに「鬼ホールド」を続けられるのは
- 不景気で受けるダメージよりも、好景気における成長の方が強い
という見込みを持てるからこそですが、ここに疑義が生じると投資プランを見直す必要が出てきますね。
「デジカメ・プリンタ、10年後にもうないんじゃない?」
こう考えるなら、このセクターは「分散投資の一角」としても不適切になります。アフターコロナの世界で、今一度、キヤノンへの長期投資について考える時期に来ているのかもしれません。
※キヤノンのような大企業は、中小企業と違って「新たな市場を創出する力」もありますから、別な産業を作れれば逆転の芽はありますけどね。
大減配を食らわない投資をするのは、高配当株投資の大前提ですが、そうはいってもビジネスは生き物。
- 減配しない銘柄を選定しようと努力することと
- もし減配してしまったら?を事前に考えておくこと
は別問題。
ひとつの企業を過信せず、減配してしまった時にあわてないポートフォリオのバランスにしておくことが重要です。
現状、かのんちゃんの減配でポートフォリオの屋台骨が揺らぐことはありません。
そしてさらに、こびと株メンバーは、思わぬ減配を食らった時のリカバリープランも想定済みです。
こびと株メンバーは、配当金は「出口のお金」として贅沢に使う方針です。しかし、不景気が来た場合は別。
- 減配したり
- 倒産したり
そういったことが起きたら、配当金再投資で”イケてる会社”を補充する。そうすれば、ポートフォリオ全体が生み出す「キャッシュフロー」の水準は維持できます。
景気が回復すれば、このタイミングで仕込んだ銘柄が大きく成長し、アクセルになってくれるでしょう。
こういったプランは、数年前からずーっと予定していたこと。
今は、まさに”不景気到来フェーズ”。配当金再投資で、ポートフォリオの足腰を強くするタイミングだという認識です。
配当金をお小遣いにして遊ぶのはいったんお休み。配当金を原資に”イケてる会社”を補充していきたいと思います。
まとめると、この通り
- キヤノンの減配がポートフォリオに与える影響は軽微
- 分散投資の一角として「電気機器・精密機器業界」に投資するかどうか、再考するフェーズに来ている(コロナや33年ぶり減配は想定外だった)
- 景気循環株が、不景気でダメージを受けるのは想定内。減配があった時は「配当金を使う」→「配当金再投資でメンテ」に切り替え。キャッシュフローの水準を回復させる
ポートフォリオ全体として含み益が維持できており、配当金水準も問題なし。
かのんちゃんは現在、
です。
もちろん期末配当金をいくらと予想するかによりますが、中間配当と同額の40円(前期比50%オフ)とすると、
- 年間配当額:80円
- 7/29の終値:1,797.5円
で、税引き前の配当利回りは約4.5%。ぶっちゃけ、配当を出している場合じゃないという業績なので、これですら決して「手堅い」利回りではありません。
短期目線では、間違いなく「失敗の投資」になってしまいました。ただ、長期でどうなるかは分かりません。
沈んだように見えて復活した企業は、枚挙に暇がありません(そのまま消えていく企業も多いですけどね)。
短期での正解が、長期の正解になるかは…神のみぞ知るところですね。
もちろん、一度投資した銘柄に過剰な愛着を持って「信じぬく」みたいなスタンスは、資産運用の世界では非常に微妙です。これは強調しておきます。
こびと株メンバーは、鬼ホールドを是としていますが、それはもともと確固たる「投資プラン」があってこそ。
このマスタープランにヒビが入れば、ドライに投資方針を見直すつもりです。今は、ヒビが入っていないというだけですね。
ちなみに、企業は株主のものです。
私のかのんちゃんが、関係各所にご迷惑をおかけしていることを、深くお詫び申し上げますm(_ _”m)
株主として責任をとり「株価下落」と「減配」を謹んで受け止める所存です。
それではまたっ!
(参考:キヤノン株式会社 四半期決算短信等)
分散が鉄則の高配当株投資。きちんと分散していれば、かのんちゃんみたいな大減配株が混ざってしまっても大丈夫。分散の重要性は、強調しすぎることはありません。
少額で分散投資をやりたいならSBI証券が最有力候補。理由は2つ。
- 1株から買える(NTTドコモなどの注目している企業を3000円程度で買えます)
- サービス利用料が安い(単元未満株の買付手数料が無料!)
口座開設料・口座維持利用料はもちろん無料で、個別株なら投資信託と違って信託報酬などの保有コストもかかりません。
SBI証券を使った少額分散投資は、コスト面で優秀ですね。
関連記事です。
高配当株投資をはじめて、配当金を受けとりたい人のためのスタートマニュアルです。
「もっともっとわかりやすく!初心者の中の初心者でもわかるように!」というご要望に応える、専門用語を使わないバージョンのスタートマニュアルはこちら。
Follow @kobito_kabu