こんな疑問に答えます。
この記事では、次の3点について解説します。
- 病気やケガで働けなくなったらどんな保障があるのか?
- 病気やケガで働けなくなるリスクはどれぐらいあるのか?
- 病気やケガで働けない事態にどうやって備えるか?
病気やケガで働けない状態になる可能性は、誰にでもあります。
この記事で、少しでも「もしもの時」のイメージが持てるようになれば幸いです。
目次
病気やケガで働けない場合の保障はどうなのか?
- 事故に遭って、ケガをしてしまった
- がんになってしまった
- メンタル不調を患ってしまった
こういう事情で働けない状態になった時、経済面(家計)はどうなるのでしょうか?どのくらいの保障が受けられるのでしょうか?
会社員の場合は、こうなります。3フェーズです。
- 有給休暇が消化されていく→給与が全額出る
- 傷病手当金を受けられる→給与の3分の2が出る
- 障害年金を受給できる→受給額は人による
順番に見ていきましょう。
①有給休暇が消化されていく
まず、有給休暇が消化されていきます。
- 10日残っているのか
- 20日残っているのか
- 30日残っているのか
人によりけりですが、この期間は働けなくても給与が支払われます。
※もし20日の有給があれば、土日祝日を考慮するとほぼ1ヵ月は休んでいられます。
退院患者の平均入院日数は32.3日ですから、なんとかやりすごせそうです。(出典:厚生労働省「令和2年 患者調査」)
②傷病手当金を受けられる
有給休暇が使い果たされてしまい、会社から給与がもらえなくなったらどうなるのか?
今度は、公的保険である健康保険から「傷病手当金」という保障が受けられます。
傷病手当金は、病気休業中の生活を保障するために設けられた制度です。被保険者が病気やケガのために会社を休み、会社から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。
※注意※ 自営業者等が加入している「国民健康保険」にはこの制度はありません
傷病手当金をもらえる条件は、次のとおり。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
肝心の、受給期間&金額は次のとおり。
- 期間:通算1年6ヵ月
- 金額:ざっくり、直近1年の月収の3分の2
月収30万円の人は、ざっくり最大で20万円×18ヵ月=360万円の手当てが受けられます。
※「一般的なケースでの保障額は?」ということで統計データを見てみると、休業期間は平均31日、給付金額は平均171,655円となっているようです(出典:現金給付受給者状況調査報告_協会けんぽ_令和3年度)
休業期間が数ヵ月~数年と長期化するケースは、意外に少ないのかもしれません。
③障害年金を受給できる
病気やケガが長期化し、1年6ヵ月を超えても働けない状態が継続している場合は、障害年金を受給できる可能性があります。
下記3点を満たせば、障害年金を受給できます。
- 「初診日」を証明できること
- 「初診日」に年金に加入しており、保険料を納めていること(免除や猶予もOK)
- 「障害認定日」に障害状態であること
初診日とは、病気やケガで医師に初めて診察してもらった日を言います。初診日を確定させるには、客観的な証明として、医師による診断書などが必要です。
障害認定日とは、初診日から1年6ヵ月経った日、またはその期間内に治った日(症状固定の日)を言います。この日の状態により、障害年金を受けられる程度の状態かどうかを判断するわけです。
(出典:価格.com「障害年金とは? 受け取れる金額と申請方法」)
受給金額は、等級によって異なります。
障害年金の等級は3つに別れています。ざっくり、こういう区分です。
- 1級:他人の援助を受けなければ、ほとんど自分の用事を済ませることができない
- 2級:必ずしも他人の援助を受ける必要はないが、日常生活を送ることが極めて困難で、労働収入を得ることが難しい
- 3級:日常生活を送ることはできるが、フルタイム勤務に耐えられない、軽作業しかできない
1級・2級は日常生活が制限され、3級は日常生活は送れるものの労働が制限される状態ですね。
受給額(年額)は次のとおり。
- 1級 976,125円+子の加算
- 2級 780,900円+子の加算
- 3級 なし
※子の加算=第2子までは年額224,700円、第3子以降は年額74,900円
ちなみに、これは障害基礎年金の金額です。
会社員の場合は、これに障害厚生年金が加算されます。障害厚生年金の受給額は、その人の年収水準によって変わります。
ここでは、ざっくり
- 夫(年収450万円)
- 妻
- 子供2人
この4人暮らしの家庭で、夫が障害年金2級に該当した場合の受給額を載せておきます。
- 障害基礎年金 78万円+22万円×2人(子の加算)
- 障害厚生年金 60万円+22万円(配偶者の加算)
→合計204万円(月額17万円)
これは、障害が続くかぎり受給できます。
症状が回復することで、等級が下がったり支給停止になったりすることがありますが、働けるようになる分には、問題はないでしょう。
自営業の場合は保障が薄くハイリスク
ゴチャゴチャしてきたので、ちょっとまとめてみましょう。
会社員の場合は、病気やケガで働けなくなった時は次の経過をたどります。
- 有給休暇を消化する(給料アリ)
- 傷病手当金を受給する(1年6ヵ月、月給の3分の2を確保)
- 障害年金を受給する(障害基礎年金+障害厚生年金で、家族4人なら年額200万円ほど)
ここで、自営業者(フリーランス)と比較してみると
- 有給休暇→そんなものはない
- 傷病手当金→国民健康保険にはこの制度はない
- 障害年金→障害基礎年金は受け取れるけど、障害厚生年金はない(つまり、4人家族の場合の受給額は120万円)
こうなります。金額差をシミュレーションしてみましょう。
仮に1年7ヵ月休職状態になったら(会社員の給料が30万円だった場合)
- 会社員…給料30万円(有給)+傷病手当金360万円(20万円×18ヵ月)
- フリーランス…何もなし
ということになります。保障に390万円も差がつくのですね。
障害年金を受給できるようになったら
- 会社員(妻+子2人)…約200万円
- フリーランス(同上)…約120万円
という感じで、年額で約80万円ほどの差がつきます。
そもそも「働けなくなるリスク」はどれくらいあるのか?
そもそも、「働けなくなるリスク」はどんなイメージで見込んでおけば良いのでしょうか?
そのものズバリのデータは持っていないのですが、参考になりそうなデータを示しておきます。
- 傷病手当金を受け取った人の数と、死亡者数の比較
- 傷病手当金の支給日数
- 障害年金の受給者数
順番に見てみましょう。
傷病手当金を受け取った人の数と、死亡者数の比較
「働けなくなるリスク」と「死亡リスク」を比較したグラフがあったので転載します。
傷病手当金の受給件数が「死亡者数」よりはるかに多いというデータです。
死亡リスクの6倍とな…
(出典:「働けなくなるリスク」は死亡リスクの6倍も。就業不能保険について知っておくべきこと)
これだけ見ると、病気やケガで働けなくなるリスクはかなり大きそうに見えますね。
ただ、このデータには多少注意が必要です。どれくらいの期間働けない状態だったかが考慮されていないからです。
- 働けない期間…30日
- 働けない期間…365日
これを同列に扱うのには無理があります。
ということで、傷病手当金の支給日数をチェックしてみます。
傷病手当金の支給日数
傷病手当金を受け取った人は、実際に何日分ぐらい支給されているのでしょうか?
下記の表を見て頂ければ分かる通り、61日以上にわたって支給されている人は全体の10%程度しかいません。
(出典:現金給付受給者状況調査報告_協会けんぽ_令和3年度)
つまり、およそ9割の人は2ヵ月以内に仕事に復帰できていることになります。
入院患者の平均入院日数は30日程度ですから、そのデータと比べても違和感がありません。
※こうやって見ると、長期間働けなくなるリスクが死亡リスクの6倍あるというのは、割と強引な主張だと分かりますね。
障害年金の受給者数
障害年金の受給者数を見てみます。
障害年金の受給者数は、令和3年年2月末時点でおよそ220万人いると言われています(出典:障害年金の受給者数)。
※1986年には100万人程度だったそうなので、この30年ちょっとで倍増したことになります。精神疾患(うつ等)による受給者数がかなり増えているようです。
15歳~64歳の生産年齢人口は7,500万人ほどです。かなり強引ですが
- 障害年金の受給者数216万人を分子として
- 生産年齢人口の7,500万人を分母とすると
比率は約2.8%ほど。
働ける人が100人いると、そのうち3人ぐらいは日常生活・仕事上で何かしらの制限を受けていることになります。
病気やケガで働けない時のためにどう備えるか?
というわけで、次は「病気やケガで働けない時のために、どう備えるか?」という話題です。
対策としては、下記5点です。
- 公的保険
- 貯金
- 副収入
- 親族による支援
- 民間保険
順に解説していきます。
対策①:公的保険で備える
ここまで見てきた通り、国としてそれなりの制度を設け、保障を用意してくれています。
- 健康保険→傷病手当金
- 国民年金保険→障害基礎年金
- 厚生年金保険→障害厚生年金
しかし、フリーランスの場合は、①と③がありません。
せめて、国民年金には必ず加入しておましょう。国民年金は保険機能もしっかりしてますし、金融商品としても十分ペイできるマトモな制度です。
対策②:貯金で備える
公的保険でカバーしきれない分は貯金で備えることになります。
問題は、働けない期間をどれぐらいの期間で想定するかです。ここが非常に難しいところで、当然、結論は人によって異なるでしょう。
一般論としては、『公的保険+貯金』で2年分ぐらいの生活費を確保できていると、かなり安心できると思います。そこまで長期化するケースは珍しいからです。
それ以上の長期にわたり(3年~50年)、病気やケガで仕事ができない状態が継続することを想定するならば、民間保険の活用を検討することになるでしょう。
対策③:副収入で備える
収入源を増やしておくというリスク対策もあります。
- 不動産からの家賃収入
- 株式からの配当金収入
- 事業収入
などです。
ハードルが高く感じられるかもしれませんが、こういったかたちで収入を補填する仕組みを持っている人は、民間保険の重要性が下がります。
※こびと株メンバーは、配当+事業収入だけでも生活費の大半を賄える仕組みを作っているので、民間保険は不要と判断しています。
フリーでの働き方は、雇われて働くことに比べ、裁量がとても大きくなります。働く時間も場所も内容も、自分でコントロール可能です。
会社員としてフルタイムで働くのは厳しくても、ネットビジネスで気ままに稼げるという人は、リスクコントロール上はかなり有利になりますね。
対策④:親族による支援を頼む
イザというときは、親族を頼るという方法もあります。
当然ですが、実家は太いほど有利です。幸せに暮らせるように、そして、困った時に助け合えるように普段から良い関係を築いておくことは重要ですね。
私などは、大変恥ずかしながらイザというときは「実家に転がり込む」という算段でいます。コロコロ。
※喜んで受け入れてもらえるように、普段から欠かさずにプレゼントを贈ってゴマをすっているわけですが、保険料の方が安いんじゃないかと思い始めました\(^o^)/
対策⑤:民間保険で備える
- 公的保険じゃ物足りない
- 貯金も準備できない
- 副収入なんかない
- 頼れる親族もいない
- だけど、病気やケガのリスクが怖い
こういう人は、民間の保険を活用することになります。
最近は「就業不能保険」という、病気やケガで働けない時に保険金が支払われる商品があります。
イマイチ使い勝手の悪い保険なのですが、アクサダイレクト生命の「働けないときの安心」は、一応検討余地があるかなと。
- うつなどの精神疾患もカバー(精神疾患を保障の対象外にしている保険も多いです)
- 支払条件が明確(障害年金1級2級に該当する場合は保険がおります)
- 保険料が業界最安水準(男性30歳、月10万円の保障で、月額1,800円の保険料)
とはいえ、精神疾患の場合は、最大18回までしか払われません。ここが非常に大きなデメリットです。
現代において「病気で働けないケース」のNo.1はうつなどの精神疾患だと言われています(次に多いのがガン)。
保険会社としても、うつに対する保険金の支払を無制限にしたら、商品として成り立たなくなってしまうということなのでしょう。
(確率的に)最も備えたい精神疾患で十分保障を受けられないということで、かゆいところに手が届かない商品になっています。実に微妙です。
個人的には
- 会社員の場合…基本は不要(もちろん資産状況によります)
- フリーランスの場合…検討の余地あり(但し、万全に備えられる良い商品はない)
といった感じです。
まとめ:働けないリスクに備え、状況に応じて適切な対策を!
以上をまとめます。
会社員が「ケガや病気で働けなくなった場合の保障」は、こうなります。
- 有給休暇が消化されていく→給与が全額出る
- 傷病手当金を受けられる→給与の3分の2が出る
- 障害年金を受給できる→受給額は人による
自営業(フリーランス)の場合は、有給休暇も傷病手当金も障害厚生年金もありません。
金額的に、どれほど差が出るでしょうか?
仮に1年7ヵ月休職状態になったら(会社員の給料が30万円だった場合)
- 会社員…給料30万円(有給)+傷病手当金360万円(20万円×18ヵ月)
- フリーランス…何もなし
ということになります。保障に390万円も差がつきます。
障害年金を受給できるようになったら
- 会社員(妻+子2人)…約200万円
- フリーランス(同上)…約120万円
という感じで、年額で約80万円ほどの差がつきます。
その他、このあたりの事実は知っておいてソンはないでしょう。
- 傷病手当金を受け取った人(病気やケガで働けなかった人)は、死亡者の6倍います
- しかし、2ヵ月以上にわたり受給した人は全体の12%ほどしかいません
- 傷病手当の受給理由で、最も多いのは精神疾患(約3割)、次はガン(約2割)です
- 平均入院日数は30日程度です
- 15歳~64歳の生産年齢人口は7,500万人、障害年金の受給者は216万人ほどいます
上記リスクへの対策は下記の通り。
- 公的保険
- 貯金
- 副収入
- 親族による支援
- 民間保険
民間保険については、下記の感じです。
- 会社員の場合…基本は不要(もちろん資産状況によります)
- フリーランスの場合…検討の余地あり(但し、万全に備えられる良い商品はない)
※確率的に最も備えねばならない「精神疾患」への保障が弱いのが最大のデメリットです
病気やケガで長期間働けなくなることは、人生における大きなリスクのうちの1つです。しっかりリスク管理しておきたいところですね。
それではまたっ!
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