こんにちは、こびと株(@kobito_kabu)です。
長らくウォッチしてきた「国内リース業界」について、そろそろ買っても良いかなという水準になってきました。
ということで「リース業界への投資」について簡単にまとめてみたいと思います。
- 高配当株でおこづかいを増やしたい
- じぶん年金を作ってみたい
そういった人には役に立つ情報になると思うので、ぜひお付き合いくださいませ。
目次
リース業界3つの魅力【高配当株投資家目線】
先に業界の上位5社を確認しておくと次の通り。
- オリックス:2兆4,349億円
- 三井住友&ファイナンスリース:1兆5,023億円(※2)
- 東京センチュリーリース:1超0,122億円
- 三菱UFJリース:8,642億円
- 芙蓉総合リース:6,181億円
※1 いずれも2019年3月期の数値
※2 2007年に上場廃止(親会社の持ち株比率:三井住友FG50%、住友商事50%)
オリックスが圧倒的な規模に見えますが、実際のところオリックスのリース部門は全体の10%ちょっとです。売上ベースで3,000億円に届かないぐらいですね。
彼らの魅力は以下の3つ。
- 1株あたり利益(EPS)が安定して右肩上がり
- 配当金も右肩上がり(連続増配を更新中)
- 高配当化している
順番に見ていきましょう。
以下に示すのは2010年3月期からのデータです。
魅力①:1株あたり当期純利益(EPS)が安定して右肩上がり
株式投資で「最も重要」と言える指標、1株あたり利益(EPS)が安定して右肩上がりです。
企業からの要望を受けて、設備を調達して企業に貸し出すということにやっています。レンタルみたいなものですね。
レンタルとの比較で言うと、以下の違いがあります。
- リースではお客(借手)が自由に物件を選定することができるが、レンタルではレンタル会社が所有する在庫の中から選定する(TSUTAYAのDVDとかレンタカーとかは”レンタル”です)
- リースでは原則として契約期間中の解約(中途解約)ができないが、レンタルでは一般的に中途解約が可能
- リースは貸与期間が長期、レンタルは貸与期間が短期
- 借りたい物品を完全に自由に選ばせてあげるけど
- 借りる期間は長期になるし、原則として途中解約ができない
リース会社目線では、長期にわたり安定してリース料を受け取り続けられるということ。ストックビジネスの類ということですね。
こういう特徴が、リース会社の安定した業績を支えているのです。
配当金狙いの投資としては、こういうタイプの業種は好ましいですね。
魅力②:1株あたり配当金も右肩あがり
安定した業績を背景に、配当金は右肩上がりです。
配当性向は20~30%ぐらいの水準で、増配率は5~10%ほど。株主還元に注力しすぎてカツカツになっている米国企業と比べると、まだかなり余裕があるように見えます。
なお、この4社はいずれも連続増配株です。
- オリックス…10年
- 東京センチュリー…17年
- 三菱UFJリース…20年
- 芙蓉総合リース…17年
※2019年3月期終了時点
※オリックスは、かなり手広く多角経営しています。リーマンショックの時には
- 金融部門
- 投資部門
がそれぞれ大きな赤字を出して赤字スレスレのところまで業績が悪化しました(黒字キープに貢献したのは底堅いリース部門)。
株価は最大9割以上下落したという超景気敏感株です。これから触れますが、オリックスの配当利回りが他社より高いのはそういうリスクがあるからです。
魅力③:高配当化している
いくら業績が良くて配当金が右肩上がりでも、配当利回りが低ければ(高配当株投資家としては)投資のしようがありません。
けれども最近のリース会社は、高配当化しています。2015年の頃は2.0%にも満たない配当利回りだったんですけどね。2017年時点でもせいぜい2.5%ぐらい。
2019年8月16日時点での配当利回りはこんな感じです。
- オリックス…5.08%(前期と同額の配当金を想定)
- 東京センチュリー…3.25%
- 三菱UFJリース…4.33%
- 芙蓉総合リース…3.14%
先ほども書いたように、EPS・配当性向・増配率にはまったく問題がありませんから、この状況で高配当化しているというのは魅力的に見えます。
いったんまとめ:リース業界の魅力と罠
現状、リース会社の魅力は以下3つ。
- 1株あたり利益(EPS)が安定して右肩上がり
- 配当金も右肩上がり(連続増配を更新中)
- 高配当化している
高配当株投資にとって最も重要な指標たちが魅力的な水準にあります。
じゃあガツンと投資すべきか?というと、そうはならないのが株式投資の難しいところ。
以前から何度も書いている通り、高配当化するのにはワケがあります。
- 業績に安定感がない
- 記念配/特別配当を含んでいる
- トラブルを抱えている
- 国策と合わないビジネスモデル
- 近々、業績の悪化が見込まれている
- 長期的な成長性に乏しい
今のところリース会社は、①、②、③の要素とは無関係です。④に関しては、むしろ国策(金融緩和による金利低下)の恩恵を受けて業績を拡大してきたフシがあります。
※リース会社は多額の借入れを行って設備を調達し、ユーザーに貸し出しを行います。だから、設備の調達金利が下がるのはビジネスにかなり有利に働くのです。
リース業界3つの懸念
というわけで、現状リース業界が抱えている懸念点がこちらになります。
懸念①:リース取引の規模は伸び悩んでいる【成長余力低い】
リース業界がもっとも盛り上がっていたのは1991年で、リース契約の総額は8.8兆円でした。その後はだいたい7兆円ぐらいの規模で推移していたのですが
- 2008年の会計基準改正(リース業界にとっては最悪の改正だった)
- 2009年のリーマンショック
このダブルパンチを受けて取引高は一気に低迷。
2010年には4兆円台にまで取引規模が縮小しています。ピークの半分ぐらいですね。
リース取引高の推移は、以下の感じです。
(単位:億円 出典:リース統計 リース事業協会)
停滞しているのが良く分かります。
※このような状況で、リース業界は「海外」に活路を見出しています。海外事業は拡大の一途を辿っており、これがどれぐらい成長するかがリース業界を評価する重要なポイントになります。
海外事業売上は、この数年で3倍以上の規模に成長しています。お見事。
- 2012年:約5,000億円
- 2018年:約1兆5,000億円
懸念②民間の設備投資に影響されやすい【景気敏感】
リース業界の業績は、民間の設備投資に大きく影響されます。
2010年を底として、2019年現在に至るまで
- 景気の回復局面における、比較的旺盛な設備投資需要
- 圧倒的な低金利
に支えられて、リース会社は好調な業績を維持してきました。
現在、世界経済は「リセッション(景気後退局面)に入るのではないか」という懸念のなかにあります。
- 中国の工業生産は2002年以来の低い伸びにとどまる
- ドイツ経済は輸出不振の中マイナス成長に陥る
- ユーロ圏の鉱工業生産は3年余りで最大の落ち込み
- 米国債と英国債のイールドカーブが逆転し、金融危機以降で最も顕著に景気後退を示唆
(出典:ブルームバーグ 積み上がるリセッション警報-中国とドイツ経済低迷、米英逆イールド)
世界経済が停滞し日本経済に悪影響が及べば、リース業界も間違いなく停滞します。
先ほどリース業界はストックビジネスと言いましたが、設備投資需要に左右される景気敏感業種であることは間違いありません。
今高配当化しているのには、
- リース業界の成長性にそもそも疑問符がついている
- 世界経済・日本経済の先行きに暗雲が立ち込めている
という理由があることを意識しておいた方が良いでしょう。
懸念③代替されやすい【オリジナリティが薄い】
このような環境でも「他社に負けない特異性」があれば生き残っていけるのですが、リースというビジネスモデルは代替されやすいビジネスモデルなのです。
- 銀行と競合する
- 自社調達切り替えリスクがある
- 同業他社との価格競争が激しい
銀行など他業種との差別化が難しく、法改正により「リース取引」の優位性が失われている状況で、どうやって「ならでは」の存在感を発揮していくのか難しい状況にありますね。
商品によって付加価値をつけられないので、業界内での価格(リース料率)引き下げ競争は、比較的激しいと言えます。
PCを使いたいと思ったとき、
- オリックスからリースするか
- 三菱UFJからリースするか
単に安い方選べばいいだけですからね。
まとめ:十分投資対象になる水準と考えるが、分散は必須
まとめると、次の通り。
- 1株あたり利益(EPS)が安定して右肩上がり
- 配当金も右肩上がり(連続増配を更新中)
- 高配当化している
高配当株投資にとって最も重要な指標たちが魅力的な水準にあり、十分投資対象として検討の余地があります。財務面も大きな問題はありません。
一方で、業績・財務面でこれほど魅力的な状況にあるにもかかわらず、高配当化しているのにはワケがあります。
- 業界の成長性に疑問符(1991年の8.8兆円と比較して、現状5兆円程度の市場規模にとどまる)
- 景気敏感業種であり、世界経済の先行きに暗雲が立ち込めている
- 代替可能性が高い(銀行との競合、自社調達への切り替えリスク、値下げ競争)
また、もし今後金利が上昇局面に入れば、それは非常に大きなデメリットになるでしょう。REITと同じく、かなり大きなダメージを受けることになると思われます。
これ以上金利が下がる余地はあまりないですから、そういう意味でも業績へのプラスのインパクトは期待しづらい状況ですね。
今回紹介した
- 「魅力」
- 「懸念点」
はそれぞれほんの一部ですが、こうやって洗い出したうえで投資の可否を自分のアタマで考えていくのが大切かなと思っています。
上記の議論をふまえて、これが結論。
- リース業界上位3~5社をまとめ買い
- ポートフォリオ全体の2~3%にとどめる
こんな感じでやっていこうかなと。
上位3~5社をまとめて1つの会社と見る感じです。業績の相関性が高いからですね。良いときはどこも良くて、ダメなときはまとめてダメになるでしょう。
- MIXしても配当利回り4.0%超
- 各社10~20年の連続増配
- 配当性向も増配率も文句なし
- 格付けも問題なし
業界全体としてはなかなか難しいところもありますが、海外事業が伸びているという実績もありますし、リース業界にちょっとだけ賭けても良いかなと。
※私たちがこういう買い方をしている業界としては、他に「総合商社」があります。上位5社をまとめて1つの会社とみなして購入・長期保有しています。
とにもかくにも、高配当株の基本は「徹底した分散投資」です。
× 業績安定・財務優良企業に集中投資するのではなく
◎ 業績安定・財務優良企業にひたすら分散投資する
そうやって、元本の安定性を測りながら、長期的に配当金をもらい続けようという投資スタイルです。以前書いたように、最低でも50銘柄ぐらいは目指したいところ。
国内リース業界は、分散投資の一角を小さな割合で占める分には、まぁ検討の余地があるかな。
そういう結論です。
こうやって優良株を少しずつ自分のポートフォリオにくわえて布陣を強化していくのが楽しいんですよねぇ。
参考になれば幸いです。
それではまたっ!
※ちなみに、もし上記企業に投資しようとすると東京センチュリーが40万円、芙蓉総合リースが60万円もするので、ちゃんと分散投資しようと思うならSBI証券とかを使わないとバランスがとりづらいですね。
資産200万円の人が東京センチュリーと芙蓉総合リースに投資したらそれだけでポートフォリオの50%になってしまいますので…
参考:最安コストで少額分散投資をするための証券口座
高配当株投資は「財務優良銘柄への分散投資」がキモになりますが、個別株に投資する場合は投資額が1,000万円とか2,000万円を超える人でなければ効果的な分散投資は難しくなります。
ところが、SBI証券を活用すれば、最安コストで少額分散投資をすることが可能です。
- 1株から購入できる(単元未満株の売買手数料無料)
- 最大手・国内株式個人取引シェアNo.1
- 口座開設・口座維持手数料無料
口座開設・口座維持利用料がかからないのはもちろんのこと、単元未満株の買付手数料が0円なので少額分散投資にうってつけです。
個別株投資では信託報酬なども取られませんから、コスト面では一切文句なしですね。
総合商社やリース業界の上位企業をまとめ買いしたい時などは、まさに最適な証券口座です。
※投資にはリスクがあることを正しく認識し、ご自身の判断と責任により行って下さい。
もっと詳しく知りたい方は、下記記事を参照してください。
具体的な銘柄選びで悩んでいたら、こびと株の一覧や直近の高配当ランキング記事を参考にしてみてください。なお、日本株の高配当ETFは微妙だと思ってます。
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