簿記1級の独学は可能だけどおすすめしない。基本無理だと思う5つの理由

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簿記2級合格者
簿記2級に合格した!せっかくだから次は1級を目指したいんだけど、2~3級みたいに独学でもいけるかな?
簿記2級合格者
日商簿記1級は難関試験って聞くけど、独学で何とかしたいなぁ。独学はやめておけっていう意見も多いけど、どんな人なら独学でも合格できるのかしら?

こんな疑問にお答えします。

こびと株.comのメンバーは全員が日商簿記1級ホルダーの実務家です。4人のうち1人は独学で、残り3人はスクールを利用して合格しています。

上場企業で経理を務める実務家ならではの視点を交えながら、

  • 簿記1級の独学が基本無理だと思う5つの理由
  • 簿記1級の独学が可能な人たち

について解説していきたいと思います!ちなみに、うちの職場の簿記1級合格者の学歴はこんな感じになっています。

 独学予備校利用
旧帝大クラス0人2人
早慶クラス2人2人
MARCHクラス0人3人
その他1人1人

※予備校利用者には、公認会計士講座の受講者を含みます
※独学合格者のうち、1発合格者は0人です

 

簿記1級の難易度・概要

まずは、簿記1級の難易度について簡単に確認しておきましょう。

簿記1級と言えば、一般には「日商簿記1級」を指します。この検定試験を主催する商工会議所は、日商簿記1級を「極めて高度」な会計スキルと位置づけています。

公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門。合格すると税理士試験の受験資格が得られる。

極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析ができる。

大学等で専門に学ぶ者に期待するレベル。

(出典:商工会議所)

これが本当かどうかは、合格率を見ると一目瞭然です。なんと1桁台の合格率で、年間を通して合格者が1500人程度しかいません。1回の試験では数百人の合格者しかいないのです。

ちなみに簿記2級は合格率20~40%、合格者は年間20,000~30,000人もいます。簿記1級は、まさに桁違いの難易度です。

ちなみに、簿記1級に受かっていると税理士試験の会計科目は8割ほど学習済になっています。税理士試験の会計科目より、簿記1級の方が難しいなんて意見もあるぐらいです。

 

試験概要はこんな感じです。

合計4科目、トータル180分の試験です。各科目25点で100点満点、合格ラインは70点です。足きりがあるのが特徴で、苦手科目があるとトータルで70点を超えても合格できません。

簿記1級ホルダー
合格率数%(合格者は数百人)ということで、その難易度の高さがお分かり頂けるのではないでしょうか。難易度と試験概要をさらっと確認したところで、「簿記1級の独学が基本無理だと思う5つの理由」について見ていきましょう! 

 

簿記1級の独学が基本無理だと思う5つの理由

独学が無理な理由①:受験生のレベルが割と高い

簿記1級の受験生で、簿記3級や簿記2級に合格していない人はほとんどいないでしょう。簿記3級の合格率は40%程度、簿記2級の合格率は30%程度です。

100人いたら、2つの級に連続で合格する人は12人しかいない計算になります。このような人達が、簿記1級を受験することになります。この時点で、すでに10人に1人の人材というわけです。

簿記1級はある程度受験生が絞られている試験です。FPのように「誰でも気軽に受ける」という試験ではありません。

さらに!日商簿記1級の受験生には、相当程度「公認会計士試験の受験生」が含まれています。日商簿記1級を腕試しとして受ける受験生が多いのです。

彼らは高学歴であるだけではなく、トータルで2,000~3,000時間以上も勉強する熱心な受験生です。しかも公認会計士試験の受験生はほとんどが予備校利用者です。受験ノウハウもばっちり持っています。

結局、簿記1級の受験生のほとんどは

  1. 簿記2級合格者
  2. 公認会計士試験・税理士試験の受験生

です。簿記試験は競争試験ではなく(受験者の〇%を合格させる)、絶対評価の試験です(70%以上得点したら誰でも合格)。だから、それほど他の受験生のレベルを気にする必要はないと思うかもしれませんが…

簿記1級ホルダー
こういう人達ですら、合格率は数%(合格者は数百人)なのです。これって、結構大変なことだと思いませんか?

 

独学が無理な理由②:それなのに合格率が低い

参考ですが、司法試験の合格率は20%強です。高いように感じるかもしれませんが、難関の法科大学院卒業者・予備試験合格者に限った試験なので、これで適正レベルなのです。合格者数をうまくコントロールしています。

ところが、簿記1級の場合はこのような配慮はまったくありません。70点を超えられなければ絶対に不合格です。試験回によっては、合格率がひどく低下します。

  • 平成18年11月試験の合格率は3.5%
  • 平成29年11月試験の合格率は5.9%

合格率だけで見ると、公認会計士・税理士試験よりよっぽど低いですね

簿記1級ホルダー
予備校利用必須」と言われる難関士業の試験。時にはそれより低い合格率になってしまうのが簿記1級です。スクール通いの簿記1級受験生に勝つのは容易ではありません。

 

独学が無理な理由③:試験範囲が膨大

簿記検定試験出題区分表に簿記1級の試験範囲が明示されています。しかし、ほとんどの方はこの出題区分表を見てもそのボリュームの多さをイメージできないでしょう。

なので、メジャーな予備校であるTACの「簿記1級対策講座」でそのボリュームを見てみることにします。上記出題範囲を網羅するために必要な授業回数はなんと【91回】です。総時間は250時間です。

最低でも、復習のために講義時間と同じだけの勉強時間を確保する必要があります。つまり、予備校利用した場合の最短学習時間は500時間程度ということです。

簿記1級は、理解するのが難しい難関論点が目白押しですから、500時間という想定はかなり甘めです。

授業時間の3倍である750時間~で見込んでおいた方が現実に近い数値でしょう。独学で戦う人は、このレベルの受験生に打ち勝って、10人のうちの1人に入らなくてはいけません。

使用教材もこんなにあります。繰り返しになりますが、最短ノウハウでこのボリュームです。

使用教材
  • 1級商会合格テキストⅠ・Ⅱ・Ⅲ(TAC出版):3冊
  • 1級商会合格トレーニングⅠ・Ⅱ・Ⅲ(TAC出版):3冊
  • 1級商会合格テキスト解答用紙Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ(TAC出版):3冊
  • 1級工原合格テキストⅠ・Ⅱ・Ⅲ(TAC出版):3冊
  • 1級工原合格トレーニングⅠ・Ⅱ・Ⅲ(TAC出版):3冊
  • 1級工原合格テキスト解答用紙Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ(TAC出版):3冊
  • 1級工原原価計算基準レジュメ
  • 1級商会ミニテスト
  • 1級工原ミニテスト
  • 1級商会基礎演習(添削課題):5回
  • 1級工原基礎演習(添削課題):5回
  • 1級商会応用講義演習テキスト
  • 1級的中答練(添削課題):10回(商会:5回/工原:5回) ※2
  • 1級全国公開模試:1回
簿記1級ホルダー
独学したい人は、この膨大な試験範囲のなかで、各論点の「重要度」を踏まえながらメリハリのある学習をする必要があります。「優先度の高い問題」と「優先度の低い問題」の区別がつかないというのは、大変なデメリットなのです…予備校なら講師が教えてくれるんですけどね…

 

独学が無理な理由④:苦手分野・難関論点を捨てられない試験制度

もう一度、試験科目を見てみましょう。

合格基準のところに「ただし、1科目ごとの得点は40%以上」とあります。足切りがあるということです。

4科目の各配点は25点。その40%ということは足切りラインは10点です。つまり、こういう点の取り方をすると不合格になります。

  • 商業簿記・・・24点
  • 会計学・・・18点
  • 工業簿記・・・19点
  • 原価計算・・・9点
  • 合計:70点→合格ラインの70点を超えたが、足切りラインの科目があるため不合格

この制度があるせいで、簿記1級では苦手分野・難関論点を放置できません。捨て論点は絶対に作れないということです(運悪く出題されたらその時点で不合格が確定します)。

どんな受験生にも苦手分野はありますが、独学の場合その苦手分野を自力で克服しなければいけないのです。自分一人じゃ理解できないから苦手分野になるというのに、それを一人で解決しなければならないというジレンマですね。

簿記1級ホルダー
解ける=楽しい=得意分野、解けない=つまらない=苦手分野となるのはいたって普通の感覚です。問題なのはそこから。スクール生は苦手分野を放置せずに、講師とトレーニングを積むことができますが、独学生の場合はそのまま苦手分野として放置しがちなのです。そこが最後に合否の明暗を分けます。

 

独学が無理な理由⑤:つまづくポイントが多すぎる

一部上場企業で10年間経理実務に携わっている私の感覚として、商業簿記・会計学の出題区分表をパっと見ただけでも以下の論点は独学では正確な理解が難しいだろうなと感じます。

取引の内容を感覚的に把握しづらい、テクニカルな論点だからです。

  • 退職給付会計
  • 売価還元原価法
  • デリバティブ取引
  • ヘッジ会計
  • 資産除去債務
  • リース会計
  • 税効果会計
  • 新株予約権
  • 連結会計

実務家の経理マンですら理解が難しいような論点を、実務未経験の初学者が独学で…というのは相当にハードルが高いのです。工業簿記・原価計算も同様です。

簿記1級が「暗記すればなんとかなる」4択形式の試験ならともかく、計算問題が豊富な記述式試験となると手を抜くことはできません。

どの論点もキッチリ理解する必要があるのですが…やっぱりつまづきそうな論点が多すぎますね。まさに罠だらけのジャングルです。

簿記1級ホルダー
初見でこれらの論点を理解するのは大変難しいです。予備校の講師はどこの論点で受講生がつまづくかデータ・ノウハウを持っているので、受講生としては安心して授業に臨めます。しかし、独学の場合は学習を進めるたびに理解できない論点が増えて、最終的には挫折する可能性が高いでしょう。

 

簿記1級の独学が可能なのはこんな人たち

以上、独学が無理な5つの理由を見てきました。

独学が無理な5つの理由
  1. 受験生のレベルが割と高い
  2. それなのに合格率が低い
  3. 試験範囲が膨大
  4. 苦手分野・難関論点を捨てられない試験制度
  5. つまづくポイントが多すぎる

とはいえ、独学で合格している人たちがいるのも事実です。その人たちはどのような人たちでしょうか?参考までに、当社の簿記1級合格者のバックグランドをもう一度掲載しておきます。

 独学予備校利用
旧帝大クラス0人2人
早慶クラス2人2人
MARCHクラス0人3人
その他1人1人

※予備校利用者には、公認会計士講座の受講者を含みます
※独学合格者のうち、1発合格者は0人です

 

偏差値60以上の大学合格者

他社の経理マンとの会合や、付き合いがある監査法人の会計士などに聞くと、独学で簿記1級に合格できるような人は高学歴の人が多いです(もちろん、必ずそうというわけではありません。傾向の話です)。

  • 受験勉強が得意

こういう人が独学に向いているのは言うまでもないですね。

そもそも、簿記1級の合格者は受験生1万人のうち数百人レベルです。予備校利用者が相当数含まれていることを考えると、独学で合格を勝ち取れる人は受験エリートと言って良いでしょう。

MARCH以上(偏差値60前後)の大学に入れる人は、小学校1クラス(30人)のうち上位5人~7人程度と言われていますから、まぁ感覚的にもそんなものかなという感じがしますね。

 

商業高校の卒業者/経済学部・商学部で簿記を専攻していた人

商業高校でみっちり簿記を学んだ経験のある人、経済学部や商学部で簿記を学んでいたことがある人は、独学でもイケる可能性があります。

なぜかというと、一度でもプロに教わった経験があるからです。簿記の勘所を学んでいるのです。

  • どこかで聞いたことのある専門用語
  • どこかで見たことのある論点

こういうことが多ければ多いほど、独学で勉強を進められる可能性が高まります。

 

大企業/会計事務所等で経理に携わっている実務家

大企業や会計事務所で実務に触れている人も、独学でイケる可能性があります。なぜなら、やはり実務を通じて簿記の勘所を学んでいるからです。商業高校や経済学部/商学部の出身者同様、

  • どこかで聞いたことのある専門用語
  • どこかで見たことのある論点

はかなり多いはずです。これが大きなアドバンテージになります。また、こういう職場に勤務していれば、分からないことがあった時に周りの簿記1級ホルダーに質問できるというのも大きなメリットですね。

簿記1級ホルダー
ちなみに、上記のどのパターンの人たちでも予備校利用者以上に勉強時間を確保できるというのは最低条件です。いくら基礎能力が高くても、勉強時間を確保できなければ絶対に独学で合格することはできません。

 

まとめ:簿記1級はモトがとれる資格。可能なら素直に予備校を利用しよう

簿記2級合格者
う~ん、簿記3級とか2級とは別次元の試験みたいだね。同じノリで独学でどうにかするってのはかなり厳しそうだと分かったよ…予備校行かなきゃダメなのかぁ…そんなお金ないよ~
簿記2級合格者
かなりハードルが高いってことは分かったけど、それでも私はなんとか独学でやってみようと思うわ。どうしても無理なら、そこからまた考えれば良いかな…

こんな方々に、一言だけアドバイスさせて下さい。

簿記1級はお金をかけて取得してもモトが取れます!

簿記1級を取ると生涯賃金が増える可能性があります。それこそが簿記1級の一番の価値なのです。その他の自己啓発の資格とはワケが違います。就職・転職・昇進に影響する価値ある資格なのです。

むしろ、簿記1級に合格しても年収を増やせる見込みがないという人は、簿記1級を受験する必要がありません。こんな難しい資格、趣味でチャレンジするものじゃないですね(簿記が大好きなのでどうしても!というなら止めはしませんがw)

以下の記事で、

  • 簿記1級を取得する5つのメリット
  • 簿記1級を取得しても意味がない人

についてまとめてあるので、興味のある人は是非ご覧くださいませ!

簿記1級は価値ある資格!5つのメリットを現役経理マンが教えます【取る意味アリ】

2018.04.11

それではまたっ!

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ABOUTこの記事をかいた人

シーウィード

こびと株.comのボス(役割:投資対象の選定)。お金の話と健康をこよなく愛するアラサーリーマン。一部上場企業の経理/財務部で財務諸表を作成している会計の専門家(日商1級・証券アナリスト)。40歳時点で給与以外の収入(配当/不動産/サイト運営)を月額20万円にすることを目標に活動中。187cmの大男。