こんにちは、こびと株(@kobito_kabu)です。
投資関係の雑誌や本を読んでいると、こんな言葉を目にすることがないでしょうか。
- もし、〇〇〇に投資すれば
- 長期的に〇〇〇%のリターンが得られる!
例:米国株に投資すれば7%のリターンが得られる
台風の進路予想について
突然ですが、台風の進路予想について語ります。
※投資のリターンに関係している話ので、ぜひこのまま読みすすめてくださいm(_ _”m)
こういう進路予想図、目にしたことないですか?
(出典:気象庁HP)
いくつも登場している白い円。これを予報円と言います。
答えは、約70%です。
気象庁から発表される予報円は70%の確率で台風の中心が到達すると予想される範囲を示しています。
(出典:ウェザーニュース「予報円の大きさを決める2つの要素」)
そう、70%なんです。
この台風はジグザグと気まぐれに進んでいきますが、その中心は70%の確率で予報円の内側におさまります。この予報円の内側で生活している人は、この数値を頭の片隅に置きながら
- 対策が必要か
- 対策が不要か
- どの程度備えるべきか
判断するわけですね。
ではなぜニュースでこういう伝え方をしないかというと、この情報にピンとくるためには「統計学」を理解している必要があるからです。
日本国民の大半は「統計学なんて知らん」という世界で生きているので、「70%の確率で~」なんて言われると、かえってワケが分からなくなります。
だから、マスメディアは無知な(失礼)国民を気づかって、わざわざこういう情報をカットしているんですって。
※今度、台風の進路予想が出てきたらテレビに映った図の下部を見てください。局によっては70%という数字が出ているかもしれません。
中心線のみの進路予想に、意味はあるのか?
もし、この進路予報が中心線(※)のみの予想だったら、役に立つでしょうか?
※予報円の中心部分をつないだ、白い点線
中心線のそばで暮らしている人は対策をするでしょうが、中心線から離れたエリアにいる人達(例えば、九州の人達)は何の対策もとらないでしょう。
そして、もしも中心線から離れたところに台風がきたら、「気象庁め!使えない予想出しやがって!」と大騒ぎするに違いありません。中心線で準備していた人達も、肩透かしを食らった気分になるでしょう。
何が言いたいのかというと、つまりこういうことです。
「幅」と「確率」が分からない予測はあまり使えないのです。
- 幅を持たせること
- 確率で把握できること
冒頭で述べた「投資リターン」の話題に話を戻します。
とあるファンドの投資リターン(将来期待できる収益率)は、7%である
この情報は、まさにただの中心線に過ぎません。ただの中心線が、将来予測にあまり役立たないことは台風の進路予想の例からも明らかです。
これをもう少し意味のある数字にするには、先ほど述べたように
- 幅を持たせること
- 確率で把握できること
が重要です。そのために使うのが「リスク」という情報なのです。
※下図:縦軸=リターン、横軸=リスク
(出典:わたしのインデックス myINDEX)
これを例に、リスクについて説明します。
- 約70%の確率でこの範囲におさまる
→(リターン-リスク) ~ (リターン+リスク) - 約95%の確率でこの範囲におさまる
→(リターン-リスク×2) ~ (リターン+リスク×2)
算式を見ると「うげぇ」と思うかもしれませんが、実際に数字をいれてみると大したことはありません。
例えば、上記の図で日本株のリターンは4%、リスクはおおよそ18%になっています。
この場合、あなたが投資したお金は
- 70%の確率で
- 下限:▲14%(4-18)
- 上限:22%(4+18)
この範囲におさまります。1回自分のアタマで計算すればマスターできてしまうほど、簡単ですね。95%の確率にしたいなら、リスクを2倍にするだけです。
- 日本株に投資すると、4%のリターンが期待できるよ!
- 日本株に投資すると、70%くらいの確率で▲14%~+22%のリターンにおさまるよ!
どちらの方が役に立つ情報か、言うまでもないでしょう。これで、ようやく幅と確率が分かる意味のある予測になったというわけですね。
もし運用結果が▲20%になっちゃったら、かなり運が悪かったということ。逆に+30%ならラッキーです。
いずれにせよ、(確率的に考えると)今後、長く続くパフォーマンスではないということです。
※統計学を勉強したくない人は、この結論だけは覚えておきましょう。過程はさておき、投資をするのなら必ず理解しておくべき基礎概念です。
まとめ:将来予測をするのなら「幅」と「確率」も意識しよう
最近では、コロナ禍で不明瞭な環境のため、企業の業績予測も「レンジ」形式で発表する企業も増加しました。
先行きが見えないけど、おおむねこのレンジに収まるだろうと予想する訳ですね。
各企業がどうやってこの予想を組み立てているのか知りませんが、
- 売上や利益に変動を与える要因を分解し
- 各要因ごとに、最悪のケース、最高のケースを想定して
- ごにょごにょやって
おおむね、7割方このレンジにおさまるだろうという分析をしているのではないかと思います。米国企業だと、レンジで予想を公表しているところも多いですね。
※経理マンやFP&Aの「腕の見せ所」は、今後まさにこういうところになってきます。分析や予測、その要因のコントロールですね。
70%という数字はあくまで統計的な数字で、実際にどうなるかは分かりません。
- この確率を高いと見るか、低いと見るか
- 勝負しても良いと思える確率なのか、そうではないのか
- あくまで過去の確率なのか、未来にも当てはまる確率なのか
このあたりを判断するのが投資家の「カン」と「経験」といったところなのでしょう。
最近次々に生まれている新しい金融サービスは、利用者に統計知識がないのをいいことに「期待リターン」にしか触れません。
投資なんだから危険もあるよ、みたいな意味合いでちっちゃくリスクについて触れているだけのところも多いです。リスク=危険っぽい雰囲気ですからね。
しかし、本来、リスクというのは「幅」と「確率」を表す概念です。
これが分からない金融商品に投資する気は(わたしは)起きないですね。分の良い勝負なのか、悪い勝負なのか、判断できないからです。
いわゆる「雰囲気投資」の正体は、幅と確率を無視した投資のことです。後は野となれ、お花畑となれ。
カッコつけたことを言っていますが、算数の成績は2でした(5段階評価)。
文系です。
それではまたっ!
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