こんにちは、こびと株(@kobito_kabu)です。
決算短信サマリー(期末)に載っている3つの利益率はなんでしょう?
さぁどうでしょう?
分かりますか?
正解はーーーー
この3つ。
- 自己資本当期純利益率(ROE)
- 総資産経常利益率(ROA)
- 売上高営業利益率
これが即答できたらかなりマニアックな人じゃないでしょうか。もしかしたら、上場会社で決算短信を作成している人かも知れませんね。
さて、今日は上記の指標のうち②の総資産経常利益率(ROA)についてのお話です。
決算短信サマリー(期末)の重要性
本題に入る前に確認しておきたいのが、決算短信サマリーの重要性です。
決算短信は、上場企業が四半期ごとに作成・開示している資料です。
決算短信には、投資に役立つ様々な情報が記載されているのですが、その1ページ目と2ページ目がとにかく重要です。
- 売上高
- 当期純利益
- 1株当期利益
- 1株純資産
など、本当に重要な指標しか記載されていません。
イメージでいうと体脂肪率5%台のアスリートです。それほど無駄のない資料です。
ニホンフラッシュのニフラくんの短信サマリーを見てみましょう(期末の決算短信は、四半期の決算短信と比較して内容がより一層充実しています)。
(※赤枠内の指標が、冒頭で問題に出した3つの利益率です)
見落として良い指標はなに1つありません!
と、言いたいところなのですが、経理歴10年超の目から見て余計(余計は言い過ぎか…)なものが2つあります。
- 包括利益
- 総資産経常利益率(ROA)
です。
包括利益の問題点は次回以降に譲るとして、総資産経常利益率(ROA)の何がそんなにダメなのかお伝えしたいと思います。
ここがダメだよ総資産経常利益率(ROA)
分子と分母が対応していないんです。
これが結論です。
分子と分母の対応関係、これを意識しながら、順を追ってみてみましょう。
まずはこちらをご覧下さい。
総資産経常利益率というのは、分子に”経常利益”、分母に”総資産”をとっています。
企業が持っているすべての資産を使ったら、何パーセントの利益をうみだすことができたか?
やろうとしていることは、なんとなく合っているように見えますね。
この利益(経常利益)、この後誰に分配しましょうか?
利益は、最終的には債権者or出資者に分配される
利益というものは、稼いだらそれで終わりではなく、必ず誰かに分配されます。
企業が稼いだ利益は、最終的にどこへ行くのか?
それを考えるために企業のB/Sを確認してみます。
B/Sの右側を見ると、資金の調達先が分かります。
企業は、銀行からの借入や株主からの出資を受けて、商品の仕入れや設備投資等を行って事業を運営します。
そして、事業運営によって企業が稼いだ利益は、最終的にはその資金提供者である「債権者」か「株主」に分配されることになるのです。
理解しやすいROEから、分子と分母の対応を確認
ROEはW・バフェット氏も重視している指標なので、聞いたことがある方も多いと思います。
ここ最近では、日本でも「ROE経営」などと言われ脚光を浴びていますよね(日本は常に米国の後追いですね)。
ROE = 当期利益 ÷ 自己資本
株主から出資を受けたお金で、株主へ何パーセントのリターンをうみだすことができたか?
ROEはそういう指標です。
株主から100億円出資を受けて、5億円の当期純利益を出せたらROEは5%です。
当期利益は、すべての費用が差し引かれたあとの最終的な利益なので、もう絶対に株主のものにしかなりません。
当期純利益が株主のものだということは分かりました。
では、もう1人の資金提供者である債権者のとりぶんは、どこの利益から払われるのでしょうか?
正解は、営業利益です。
営業利益とは、本業の利益です(例えば、任天堂なら、DSやニンテンドースイッチを売って得た利益です。)
この営業利益に、自分達(企業)が受け取る預金利息などを足して、借金に対する利息を支払うと、経常利益が出来上がります。
営業利益+受取利息-支払利息=経常利益です。※厳密にはもう少し加減算する項目があります
ご覧のとおり、経常利益の時点では、支払利息はすでにマイナスされています。
つまり、経常利益は債権者への分配が済んだ後の利益なのです。
あらためて確認してみましょう。
分子と分母の対応がとれていませんね。
分子である経常利益からは債権者への支払いが控除されていますが、分母には債権者の持ち分が含まれてしまっています。
難しい話ですね。ごちゃごちゃ考えずに、あるべき姿を見てみましょう。
ROAのあるべき姿はこうです。
(※営業利益に受取配当金や受取利息をプラスしたものを、事業利益と言います。)
ROA=事業利益 ÷ 総資産
これがROAのあるべき姿です。
この算式なら、債権者からの資金提供・株主からの出資を受けて、それらすべての財産を使って事業利益(本業の利益である営業利益と、資産の運用結果である利息や配当金)を得た。これを、債権者と株主に分配していきますという意味になりますからね。
分子と分母の対応がとれています(※厳密には、総資産の方ももう少し調整する必要がありますが、あまりにややこしいので割愛)。
なぜこんなことが起きるかというと、日本の損益計算書には「事業利益」という概念が表示されていないからです。
分子として適切な利益がP/Lに表示されていないため、こんな不思議なことになってしまっているのだと思います(しっかりしたテキストやサイトには、「事業利益が正解」ということがきちんと書いてあります。)
まとめ
というわけで、本日お伝えしたかったことは次の3点です。
- 総資産経常利益率(ROA)は、分子と分母の対応がとれていないので理屈的に不自然
- ROAの分子は「事業利益」を使うべき(事業利益は、営業利益+受取配当金・利息など)
- 決算短信に記載されているROAは他の指標と比べると重要ではない
重要なのは、ROEや営業利益率です。
企業のIR資料は、見る人が見ると「おかしなもの」「重要性が低いもの」がちらほら見受けられます。
それではまたっ!
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