こんにちは、こびと株(kobito_kabu)です。
4/13付けの日経新聞で、こんな記事を見かけました。
2019年の超大人気ファンド「グローバル3倍3分法ファンド(通称:グロ3)」の暴落に関する記事ですね。
グロ3は、債券を組み合わせたバランスファンドなのですが、今回のコロナショックでは株式インデックス以上に暴落しました。
2月21日から3月19日までの下落率は、下記の通り。
- NYダウ…▲30.7%
- 日経平均…▲29.2%
- グローバル3倍3分法ファンド…▲37.1%
※さらに、NYダウはすでに暴落からの「半値戻し」を達成していますが、グロ3はまだそこまで回復していません。
この記事では、下記について解説します。
- グローバル3倍3分法ファンドとは?
- グロ3の暴落原因
- グロ3の暴落から学ぶべき3つのこと
目次
グローバル3倍3分法ファンドとは
グローバル3倍3分法ファンドとは
グローバル3倍3分法ファンド(以下、グロ3)は、世界中の
- 株式
- 債券
- REIT
に投資を行うバランスファンドです。
投資比率は、以下の通り。
- 株式 20.0%
- 債券 66.7%
- REIT 13.3%
グロ3が特徴的なのは、レバレッジを利かせて純資産額の3倍相当額の投資を行っていることです。「どうやって、そうやるか」は小難しいテクニックの話なので、結論だけ抑えておけばOK。
3倍のレバレッジをかけることで、上記の投資比率はこうなります。
- 株式 60%
- 債券 200%
- REIT 40%
図で示すと、下記の通り。
(出典:交付目論見書より)
なんでこんなヤヤコシイことをするかというと、「投資効率を良くするため」です。
投資効率というのは
- とったリスクに対して
- どれだけ高いリターンを期待できるか
ということ。ハイリスク・ハイリターンより、ローリスク・ハイリターンの方が嬉しいですよね。
グロ3は、
- 株式やREITと、同じかもしくはそれより低リスクで、
- 株式やREITより、高いリターンが期待できる
そういう設計で作られたファンドです。以下の図が分かりやすいですね。
(出典:同上)
横軸(リスク)を見ると、株式やREITよりも若干左側にいます。これは、株式やREITよりもリスクが低いということです。
縦軸(リターン)を見ると、株式やREITよりも上方にいます。これは、株式やREITよりもリターンが高いということです。
理屈は良いから、実績を見せてみろ。
ということで、バックテストで過去の値動きを見てみると、この通り。
- 株式やREITほど暴落しないのに
- 株式のような回復力・成長力がある
ということで、ダントツの成績を誇っています(黒線がグロ3)。
15年で10倍ですってよ奥さん。
(出典:もっとしっかり理解するためのOnePoint3倍3分法)
(出典:同上)
こんな感じで、グロ3は
- 分散投資をしているくせに
- 運用成績がいつも上位にいる
という珍しいポジションを獲得しました。
※「守るための分散」ではなく「増やすための分散」という謎?のセールストークも生まれた模様
通常、バランスファンドは信託報酬(運営コスト)が高めです。1.0%前後のファンドも多いなか、グロ3の信託報酬は税込み0.484%と比較的良心的なコストになっています。
というわけで、まとめるとこんな感じになります。
- 王道の国際分散投資をしながら
- リスク・リターン効率に優れ
- 運用コストもそれほど高くない
バックテストもバッチリ!(2003年~2018年で10倍に成長!)
こ れ は 売 れ る
こんなに売りやすいファンドもなかなかないかもしれません。私が営業マンだったとしても、ゴリゴリ売ろうとすると思います。
事実、2019年の資金流入額は5,000億円超と、日本の投資信託のなかでは実質的にトップでした。
こうして、グロ3を買った投資家は、末永く、幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
となるはずでした。
グロ3の暴落理由
- 株式やREITほどは下落せず
- 株式並みの成長性・回復力を誇る
そういう謳い文句だった「グローバル3倍3分法ファンド」ですが、今回のコロナショックでは、株式以上に暴落しました。
- NYダウ…▲30.7%
- 日経平均…▲29.2%
- グローバル3倍3分法ファンド…▲37.1%
グロ3が株式インデックス以上に暴落した理由は、主として下記の2つです。
- 債券が値上がりしてくれなかった
- REITが株式以上に暴落した
通常、株式と債券には逆相関があります。
- 株式が下落すれば
- 債券が上昇する
こういう関係です。ところが、今回は債券が思ったほど値上がりしてくれませんでした。要するに、株式の下落を相殺する働きをしてくれなかったということです。
そして、一方でREITは株式以上に暴落しました。
REIT(不動産投資信託)は一般にミドルリスク・ミドルリターンと言われますが、金融市場が混乱した時には「株式以上にリスクがある」ということは、知られた話です。
日米のREITの下落率は▲40%を超えており、これがグロ3に大きなダメージを与えました。
結局、
- 増やす分散投資どころか
- 守る分散投資としてすらも、機能しなかった
悲しいかな、これがコロナショック相場における「グロ3の実績」です。
グロ3の暴落から学ぶべき3つのこと
グローバル3倍3分法ファンドというのは、非常によく設計されたファンドで、今回の一件をもって「ダメファンド」と断ずる必要はないと思っています。
国際分散投資+低コストというのは、やはり王道です(レバレッジという危険ツールは使ってるけど)。
※販売の時点でも「バランスファンドだけど、株式程度のリスクはある(=それなりにハイリスク)」ということはちゃんと説明されていたようで、暴落で解約が殺到!ということにはなっていないようです。
とはいえ、示唆に富むことはあったので、あらためて確認しておきましょう。
- 分散が効かなくなっている
- 新ファンドに全力でお金を突っ込んではいけない
- 暴落前に、暴落要素をできる限り洗い出す
以下、順番に説明します。
①分散が効かなくなってきている
分散というのは、資産運用の大原則と言われるほど重要な考え方です。
しかし、ここ最近、「分散投資が機能しなくなってきている」と言われています。統計的なデータがあるわけではありませんが、実務家の間では、よく言われているようです。
その理由は、言うまでもなく、経済のグローバル化です。
現在は、もはや各国が、それぞれ独自に「自己完結的」な経済活動を行っている時代ではありません。グローバル・サプライチェーンが確立され、まさに「世界一連托生」と言える経済社会になっています。
例えば、米国や中国が不景気になった時に、日本だけがどこ吹く風というわけにはいかないのです。
こうなってくると、今までより広い考え方で分散を徹底する必要が出てきます。
分散の目的は、究極的には「資産保全=生活を守ること」なので、なにも金融資産だけに着目する必要はありません。
人的資本も含めてケアすることで、より盤石にしていこうということです。
- 資産クラス(株、債券、不動産、コモディティ、通貨)の分散
- 時間の分散
- 地域分散(日本、アメリカ、その他先進国、新興国…)
上記にくわえて、さらに
- 夫婦が、相関性の低い業種でそれぞれ働く
- 副業などによって、給与以外の収益源を確保しておく
- いつでも転職できるようにする(就職可能な勤め先を増やしておく)
グローバル3倍3分法ファンドほど、世界各国・世界中の資産クラスに投資しているファンドでも、(一時的にとはいえ)分散が効かないという状況です。まぁ、レバかけたせいってのもありますけど。
金融資産・ペーパーアセットだけでどうにかしようというのは、難しくなっているのは間違いないでしょう。
②新ファンドに全力でお金を突っ込んではいけない
これも、意識しておいた方が良いと思います。
バックテストの結果がふるわないファンドを販売し始めるはずがないのです。そして、過去のデータがそのまま未来も続くのなら、誰でも大金持ちになれます。
伝統的な指数・伝統的なファンドは、新参者と比べると
- もしこういうことが起きたら
- こうなる
というのが比較的予想しやすいです。経験というのは、重要です。
③暴落前に、暴落要素をできる限り洗い出す
今回のような暴落があった時に
- 値下がりした原因を探し出して
- 後からダメ出しするのは簡単です
確定した事実=証拠が出揃っているので、イイ感じにドヤ顔できます。
でも、
- 暴落した後に、「暴落原因」を分析し始めるのは素人のやること
- 暴落が起きる前に、「暴落要素」をすべて洗い出しているのが洗練された投資家
というもの。わりと大事なことを言った気がします
グローバル3倍3分法についても、投資経験の長い熟練者は
- 分散投資が有効に機能しない可能性
- 債券の値動きが逆回転した場合のリスクの大きさ
- REITが株式以上に暴落するリスク
について、事前にしっかりと触れてましたね。
※別に難しくもなんともない、基本的な見解なのですが、多くの人はイケイケの株・ファンドを見るときは「迂闊にも」こういう基本的なことを過小評価してしまいがちです。
こうやって、暴落要素を事前に洗い出せるからこそ
- 投資額を適切に抑えられる
- リスクシナリオが実現してしまった時に、動揺せず対処できる
- そもそも、投資しないという判断もできる
というもの。
↓
この「後から分析」というサイクルを繰り返す限り、まともな資産運用には至らないでしょう。
まとめ:色々な経験を糧に「お金の管理レベル」をあげていこう
以上をまとめると、次の通り。
- グローバル3倍3分法が、暴落した
- 理由は、分散投資が有効に機能しなかったため
- とはいえ、グローバル3倍3分法がダメファンドと断ずるには早い
- 小技を使っているが、王道の国際分散投資・低コストという点で、悪くない投資
長期的にどんな成績になるのか、引き続き注視していきたいと思います。
グロ3の暴落から、以下3点を学ぶべきかなと思います。
- 分散投資の有効性が低下している(→人的資本も含めて分散を意識すべき)
- 新参ファンドに人生を賭けてはいけない(→何が起きたらどうなる、が分かりにくい)
- 暴落”前”に暴落要素を洗い出すことの重要性
この3つを意識するだけで、「お金の管理レベル」がさらにアップするかなと思います。
本記事が参考になりましたら、幸いです。
それではまたっ!
関連記事です。
Follow @kobito_kabu