【国際分散投資って意味あるの?】有効性と落とし穴を分かりやすく解説

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投資初心者
初心者向けの投資本を読むと、国際分散投資がおすすめって書いてあった。ほんと?

こんな疑問に答えます。

 

私こびと株(@kobito_kabu)は、こんな感じの人です。

筆者について
  1. 上場企業の経理・財務部で10年超の実務経験
  2. 証券アナリスト・簿記1級・FPなど数々のマネー系資格保有
  3. 現在4桁万円の資産を株式で運用中

結論:お金大好きおじさん

マネー本については、古典的名著だけでなく、新刊も含めて月に30~50冊ぐらい読んでいます。

 

最近の投資入門本には、こんなノリで書かれているものが多いです。

  1. 長期投資せよ
  2. 積立投資せよ
  3. 国際分散投資せよ

金融庁が推進するつみたてNISA・iDeCoといった制度も、基本的にはこのノリの投資手法です。

 

長期・積立・分散投資をしていれば、必ず儲かる

 

そんな風に感じてしまう人も多いかもしれません。

無敵に思えるこの「国際分散投資」に、落とし穴はないのでしょうか?

この記事では、

  1. 国際分散投資の「有効性」
  2. 国際分散投資の「落とし穴」と「回避法」

この2点について解説します。

こびと株
それでは本題に入ります~

 

国際分散投資の有効性

国際分散投資は

  • 世界中の国の
  • 株・債券・不動産などに投資する

そんな投資手法です。

 

なぜそんなことをするのかと言うと、下記の2つ。

国際分散投資をする理由
  1. 将来どの国が発展するのか分からない
  2. 将来どの資産が値上がりするのか分からない

からです。

いくつか、例をご紹介します。

 

例①:株式の時価総額ランキング

まずは、平成元年と平成31年の株式の世界時価総額ランキングを見てみます。


(出典:STARTUP BD「平成最後の時価総額ランキング。日本と世界その差を生んだ30年とは?」)

平成元年バージョンでは、上位50社のうち、なんと日本企業が32社も占めています。

まさに、日本最強!という時代。

しかし、その31年後。日本企業は上位30社に1社も入っていません。こんな風に日本企業が脱落していくなんて、当時は誰も想像していなかったでしょう。

こびと株
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。切ない…

 

例②:世界のGDPランキング

世界のGDPランキングも、2050年にはどんどん入れ替わっていくことが予想されています。

(出典:21世紀政策研究所「2050年の世界と日本

世界中の様々な機関がGDPの将来予測をしていますが、2050年に日本は4位まで後退すると見られています。5~9位まで後退するという見方も有力です。

  • イギリス・ドイツ・フランスといった先進国は順位を落とし
  • 中国、インド、ブラジルなどに抜かれていきます

時代は必ず流れていきます。

 

例③:各資産のリターン

世の中には、色々な投資先があります。

投資先候補
  • 株式(日本株、先進国株、新興国株)
  • 債券(日本国債、先進国債券、新興国債券)
  • 不動産
  • コモディティ(原油、ゴールドなど)

さて、上記のうち、いちばん成績の良い投資先はどれだと思いますか?

 

答えは「毎年入れ替わる」です。

 

2010年~2021年の、年間リターンの良い順に資産クラスを並べてみると、この通り。

(出典:「ウェルスナビが米国株だけに集中投資しない理由」)

各資産クラスの、リターンの順位は毎年バラバラです。

1つの資産が長期にわたって勝ち続けるということはほとんどありません。

※「去年いちばん成績の良かったモノ」への投資を繰り返すのは、投資の必敗法の1つです

 

国際分散投資の合理性

  • どの国が発展するか分からない
  • どの資産が一番儲かるか分からない
  • だけど、世界全体で見れば経済は成長するはず

これが、国際分散投資の考え方です。

※分散投資の有効性は数学的に証明されており、その理論はノーベル賞を受賞しています。良く分からないから全部買っておけばいいやといういい加減な理屈ではありません。

 

カジノのルーレットを思い浮かべてください。

国際分散投資というのは、黒・赤・すべての数字に全賭けするようなものです。

カジノでそんなことをやっていたら、そのうち間違いなく資金は底を尽きます。ところが、世界経済という賭博場でこれをやると、これでも儲かってしまうのです。

それは、株式投資が(長期的には)プラスサムゲームだからです。

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2023.05.20

 

単年度でみると、投資パフォーマンスは、プラスになったりマイナスになったりします。

ところが20年30年と経過すると、マイナスになる可能性はなくなるというデータがあります。

1つ具体例を出します。

このグラフは、1966年~2005年を対象にして、日本株の年平均収益率を算定したものです。

例えば投資期間が1年だと

  • 最も損した年は▲24.8%
  • 最も儲けられた年は+72.1%

という感じで、投資をした年度によって、

  • 大損するかもしれないし
  • 大儲けするかもしれない

という感じになります。

 

でも、投資期間を30年に伸ばしてみると

  • 最低成績の30年間でさえ、年平均+6.8%
  • 最高成績の30年間なら、年平均+12.8%

どちらのパターンに転んでもプラスの成績になりました。

つまり、40年のうちどの区間の30年をとっても損しなかったということになります。日本株に限らず、海外の株式でも同じようなデータがあります。

 

こういった研究結果があるので、投資入門本のいたるところで「長期・国際分散投資」が推奨されているわけですね。

国際分散投資というと小難しく聞こえるかもしれませんが、やりかたはいたって簡単です。今は、優れたインデックスファンドがたくさんあるからです。

優良なインデックスファンドを2~3本積み立てるようにすれば、ほったらかしで世界経済の成長を味わえるようになります。

 

投資初心者
なるほど~ルーレット全賭けなのに勝てるのか。長期国際分散投資、最強じゃん!

ところが、残念ながら話はこれだけでは終わりません。

こびと株
物事は常に表裏一体なんやで。

次に、落とし穴について解説します。

 

国際分散投資の落とし穴と回避法

落とし穴は、2つです。

国際分散投資の落とし穴
  1. 分散効果が弱まっている
  2. 為替リスクがある

投資家は、資産運用を「より安全に」行うために国際分散投資をします。ところが、国際分散投資をすれば必ず資産を守れるかというと、そんなことはないのです。

このあたりを認識しておかないと、下落相場で狼狽(ろうばい)売りすることになりかねません。

順番に見てみましょう。

 

落とし穴①:分散効果が弱まっている

グローバル化の進展にともない、国際分散投資の効果が弱まってきているという指摘があります。

リーマンショック時(2007年~2009年)の、各資産クラスの暴落率を見てみましょう。

  • 日本株 ▲53.55%
  • 日本国債 +4.69%
  • J-REIT ▲59.96%
  • 先進国株 ▲59.21%
  • 先進国債券 ▲15.30%
  • 新興国株 ▲58.89%
  • 海外REIT ▲69.91%
  • コモディティ ▲50.77%

(出典:投資信託 失敗の教訓 福田猛 著 プレジデント社)

※為替影響を考慮してあります

見事にほぼすべてが真っ赤ですね。

チャイナショック(2015年~2016年)の時も同様で、日本国債・J-REIT以外はすべてマイナスになりました。

 

コモンズ投信の伊井哲朗氏は、このように言っています。

企業のビジネスもどんどん国境を超えていますし、インターネットの世界では、もっと簡単に国境を越えられるようになりました。

こうした時代の変化に、国際分散投資による効果は得られ難くなってきました。

(出典:運用のプロが「国際分散投資」の効果減少を感じている理由

 

そもそも、分散投資というのは「値動きの異なるもの」を組み合わせて、リスクを下げる投資法です。

あらゆる資産が同じような方向で動くような世界では、その有効性は小さくなります。

最近では、特に金融危機時において、あらゆる資産が同じような方向に動く傾向があることが分かっています(平常時は、異なる値動きに戻ります)。

世界中の資産の相関性が高まるなか、分散しておけば安心!という考え方は、もはや通用しなくなってきているということですね。

こびと株
下がる時は下がる、という覚悟は必要です

 

落とし穴②:為替リスクがある

もう1つの落とし穴は、為替リスクです。

先ほどのデータ(リーマンショック時の成績)をもう一度引用します。

  • 日本株 ▲53.55%
  • 日本国債 +4.69%
  • J-REIT ▲59.96%
  • 先進国株 ▲59.21%
  • 先進国債券 ▲15.30%
  • 新興国株 ▲58.89%
  • 海外REIT ▲69.91%
  • コモディティ ▲50.77%

先進国債券は、外貨建てであればプラスの成績でした。これがマイナスになってしまった理由は、為替です。

 

リーマンショック時、為替相場は下記のような激しい動きになりました。

  • 2008年7月末 1ドル118.6円
  • 2008年10月末 1ドル98.5円

たった3ヵ月で、20円も円高になったのです。外貨建ての資産は、為替だけで17%も下落したことになります。

 

ここから得られる教訓は、

アメリカ人と同じような投資スタイルは、日本人にとっては刺激が強い

ということです。

  • 世界の基軸通貨である「ドル」で暮らす人たちと
  • 島国の通貨「円」で暮らす私たち

この2者を同じように扱ってはいけないということですね。

こびと株
国際分散投資をする過程で、為替リスクを負っているということは忘れたらダメですね

 

落とし穴の回避法

さて、こうなってくると、気になるのは「落とし穴」の回避法です。

大きく、2つの回避法があります。

落とし穴の回避法
  1. 空売りや為替ヘッジを活用する
  2. 鬼ホールドする

 

①の空売りというのは、下落相場で儲けるための上級者向けテクニックです。

絶対に素人がやってはいけない投資手法で、下手すると破産します。

 

自分で空売りできないという人は、ヘッジファンドに投資するという手もあります。

ヘッジファンドというのは、相場が上がっても下がっても儲けようとするファンドで、世界の有名な機関投資家も活用しています。

たとえばイエール大学やハーバード大学は、資金の15~20%程度を「ヘッジファンド」に投資しているようですね。

 

上記の回避法はかなり難易度が高いので、

個人的におすすめする方法は②鬼ホールドです。

ヘッジファンドや為替ヘッジは高コストなうえに、ヘッジ行為自体が裏目に出ることもあるからです。

 

長期・国際分散投資では、暴落相場で儲けようとする必要はありません。

コツコツと積み立てていけばいつか報われるというのは歴史が証明しているところです。

大事なことは

国際分散投資をしていても、ダメージを食らう時は食らう

と理解しておくことです。そうすれば、狼狽売りせずに市場に残り続けることができるからです。

 

数年前、このような画像がTwitter上でバズりました。

厳密に言うと、これは真実ではないみたいですが。

マジメな話、(冗談に聞こえるかもしれませんが)長期・国際分散投資で良い成績をおさめる方法は、投資していることを忘れることです。

  • 暴落影響も
  • 為替影響も

すべてひっくるめて、最後は落ち着くところに落ち着きます。

こびと株
リスクを理解したうえで「動かざること山の如し」。これでOK

 

まとめ:リスクを理解したうえで鬼ホールドするのが、長期国際分散投資のコツ

というわけで、まとめます。

国際分散投資は、下記の前提に立った投資方法です。

  • どの国が発展するか分からない
  • どの資産が一番儲かるか分からない
  • だけど、世界全体で見れば経済は成長するはず

 

こういった前提に立って

  • 世界中の資産に幅広く投資して
  • 世界経済成長の恩恵を受け取ろう

というのは、非常に合理的な投資スタイルです。

積み上げられた研究・実証データから見ても、勝てる可能性の高い投資方法です。

インデックスファンドを活用すれば、素人でも、ほとんど手間をかけずにプロ顔負けの成績を出すことができます。

 

ところが、良い話ばかりではありません。落とし穴もあります。

国際分散投資の落とし穴
  1. 分散効果が弱まっている
  2. 為替リスクがある

この落とし穴を避けるために、空売りや為替ヘッジを活用するという選択肢があります。

しかし、個人的には「余計なことはせずに鬼ホールド」がいちばん良いんじゃないかなと思っています。

 

当サイトの運営メンバーは、王道たる「長期国際分散投資」よりも、マイナーな投資方法を選好しています。高配当株投資です。

「長期国際分散投資なんて意味ない!」「落とし穴まみれで全然ダメ!」と思っているわけではありません。

単に、高配当株投資が自分たちの投資目的・性格に合っているというだけです。

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大事なのは、投資法の良い点・悪い点を理解しつつ、自分にあった投資法を選ぶこと。

どんな投資手法でも、儲けられる人もいれば、損する人もいます。

差を分ける要因は、どれだけ自分のやっていることを理解できているかでしょう。

 

この記事が、国際分散投資への理解を深めるお役に立てば嬉しいです。私たち自身も、日々勉強を続けていきたいと思います。

こびと株
お金大好きおじさんだからね

それではまたっ!

 

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ABOUTこの記事をかいた人

こびと株.comの管理人。一部上場企業での経理/財務の実務経験10年超、日商簿記1級、証券アナリスト、FP資格を有する「企業と個人のお金の専門家」。4つの財布(給与/配当/不動産/事業収入)を駆使して経済的自由を達成することを目標に奮闘中。