こんな人のための記事です。
会計業界は、今、転機にあります。
会計不正、AI化、少子高齢化、働き方改革…。
様々な出来事の影響を受け、公認会計士のキャリア選択にも変化が訪れています。
2019年12月の日経新聞では
- 厳しい労働環境に嫌気が差し監査法人を辞める若手会計士が相次いでいる
- 会計士の希望者も減っている
(日経新聞「監査法人、人手不足が深刻 東芝不正会計後に業務増大」より抜粋)
といった記事が紹介されていました。
筆者には、10年超の経理部員歴があります。
- 知り合いには、様々なキャリア(※)の会計士さんがいます
- 広い意味では会計業界の中にいるので、実情がわかります
※監査、コンサル、組織内会計士、独立、起業…
私自身が会計士ではないからこそ
と思う場面も多いですし、そういう立場だからこそ入ってきやすい情報もありますので、それらをまとめていきたいと思います。
- これから「会計士を目指そうかな?」と思っている人
- これから「会計士としてどうやって生きていこうかな?」と思っている会計士さん
の検討材料にして頂ければと幸いです。
目次
会計士のキャリアプラン:要注意の落とし穴3つ
まずは、たくさんの会計士さんを見ていて
と思う点を3つ、ご紹介します。
どれも、普通になんとなく会計士をやっていると、知らず知らずに落ちている落とし穴です。
落とし穴①AI化の波
世間で騒がれているAI化の波。会計士の仕事も、これと無縁ではいられません。
2015年12月に発表された、野村総研とイギリスのオックスフォード大学との共同研究によると、
- 会計監査係員
- 経理事務員
は、「人口知能やロボット等による代替可能性が高い100種の職業」とされています。(㈱野村総合研究所「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」より)
週刊ダイヤモンドの「AIに仕事を代替される職業・されない職業、ランキング&マッピングで判明!」にも
- 公認会計士、税理士
- 財務、会計、経理
は、堂々とランクインしています。
これを見る限り、従来の会計士の仕事≒監査業務が、いずれ縮小していくのは明らかです。
※各監査法人や業界団体にも「AI化について調べないと。」という思いはあるようで、しばしばそういったテーマの特集や調査レポートを目にします。
とはいえ、個人的には「まぁまぁ。そうは言っても会計士は大事な仕事。だからみんな会計士を目指そうね。会計士はがんばろうね。」という結論が多いように思えて、「予定調和かな?忖度(そんたく)かな?」と余計な心配をしてしまいます。
落とし穴②ブラック労働
日経新聞でも取り上げられていた「厳しい労働環境」。
- 不正会計の影響を受けて、監査業務が増大
- 人手不足による、労働環境の悪化
- 伝統的に、上下関係の厳しい人間関係
- スタッフ層の働き方改革による、マネージャー層のさらなるブラック化(※)
※一部では、スタッフ層の残業を減らすために、中間管理職であるマネージャーのサービス残業がより一層増える現象が起きています。マネージャーは、監査が終わらなかったり残業を申告したりするとボーナス査定に響くので、黙ってサービス残業するハメになるのです。
といった状況です。
落とし穴③実務ができなくなる
「実務ができない」。これは、長年、監査だけを仕事にしていた会計士さんに見られる現象です。
ざっくり言えば、監査とは、クライアントの仕事をチェックする仕事です。だから、社会人歴≒監査歴という40代・50代の中には
- 自分ではその仕事ができないけど
- 他人の仕事の誤り・課題は見つけられる
- 解決のための具体的な行動も、自分ではできない
という人がいます。
こういう人は、いざ監査以外の仕事にチャレンジしようというとき、かなりの苦労が予想されます。
- 人のミスが目に付くので
- すぐに「ご指導モード」で説教を始める
- でも本人に実務能力が無いから
- 修正には協力できない
- 話に説得力を持たせられないし
- 周囲からは嫌われる
というわけです。
10点満点で6点の資料をみて「4点足りない」と騒ぐ。でも本人は3点くらいの資料しか作れない…。そんなイメージですね。
年齢が若いうちなら「問題発見」ができるだけでも評価されます。そういう年齢のうちに、監査を卒業して、実務習得にシフトするのが得策です。
歳をとったら「問題解決」ができないと、価値を発揮できないからです。
会計士のキャリアプラン:成功のためのポイント3つ
ポイント①監査経験は数年でOK
「監査経験アリの会計士」は、転職市場で人気があります。需要の高い存在です。
- 監査対応を任せられる
- 内部統制強化に貢献してもらえる
- 開示業務にも強い
- 他社事例を知っている
- 企画系部門での活躍も期待できる
- 調整能力が高い
- 問題発見能力に優れている
などがその理由です。
とはいえ、
- AI化への対応
- ブラック労働からの脱却
- 若いうちに実務能力も手にすることの重要性
などを考えると、「監査しかできない会計士」になることのリスクは計り知れません。
つまり、
という結論になるのではないでしょうか。
ポイント②広い視野を持つ
会計士は、会計の専門家です。監査業務を担当する以外に
- 会計に関わるコンサルタントとして活躍
- 税務業務を代行
- 組織内会計士として企業等に勤務(経理部門、企画部門等)
- CFOを目指す
- 起業して企業の顧問先・外注先として活躍
など、様々な働き方があります。
ポイント③これから取るならUSCPA
「監査を経験するのは初めの数年」と考えるなら、日本の会計士資格は必ずしも必要ありません。
例えばBIG4と呼ばれる大手の監査法人(KPMG・PwC・EY・Deloitte)。
彼らはグローバルなネットワークを持つ会社なので、日本の公認会計士だけではなく米国公認会計士(USCPA)資格をもつ人をも雇用しています。
そして、この米国公認会計士(USCPA)資格は、日本の会計士資格と比べると
- 資格が取得しやすい
- 日本だけでなく、海外でも通用する
- 国内でも「英語」「会計」両方ができる人材として人気が高い
という特徴があります。
会計士を目指す人におすすめのキャリアプラン例
その答えは、もちろん、人によって違います。
- 何が好きか
- 何が得意か
- どんな仕事がしたいか
- どれくらい稼ぎたいか
- どんな生活をしたいか
といった問いかけナシに、キャリアプランを提案することなどできません。
とはいえ。「人それぞれです」では、ちっとも面白くないので。
もし私自身が今大学生だとしたら、選ぶかもしれないキャリアプランをご紹介していきます。
米国公認会計士(USCPA)を取得
まずは、米国公認会計士(USCPA)資格をとるべく勉強をスタートします。
これからの時代、
- 英語力
- 会計スキル
の両方をすっきりとアピールできるこの資格は、将来のキャリアをきっと有利にしてくれると思います。
※アビタス(USCPA合格者数No.1のスクールです)のオリジナル教材は、日本語&図解による解説が基本です。
監査法人で数年勤務
資格がとれたら、とりあえず数年、監査法人に勤務します。
できればBIG4がいいですね。グローバルネットワークに参加しているので
- 日本の会計士と同じ待遇が得られるし
- 他国の会計士の生き方も参考にできる
- 監査法人内のコンサルチームの様子もわかる
といったメリットがあります。(「元4大監査法人」という職歴もきれいですしね。)
まずは監査を経験した上で、コンサルチームへの異動を検討しても良いかもしれません。
事業会社へ転職
経験値がたまったら、監査法人に長居はしません。事業会社へ転職します。
- 外資系企業
- グローバル展開している日本の大手企業
- CFOを求めるベンチャー企業
などで、監査経験のある会計士は引く手あまたです。
※組織内会計士ネットワークの会員数は2014年→2020年の6年間で約2倍に増加しています。(参考:日本公認会計士協会 組織内会計士ウェブサイト)
CFOになるor独立する
この後のキャリアは、
- 働き方の自由度
- 専門性を発揮してできる貢献
- そのとき「おもしろそう」と思えること
などを考慮して、柔軟に選択することになるでしょう。
パッと考えただけでも
- 惚れ込めるベンチャー企業やその社長を見つけて、CFOとして活躍する
- 大手企業で経営企画を経由し、CFOを目指す
- コンサルタントとして独立する
といった選択肢が考えられます。
全体を通して、なかなかコスパの良いキャリアプランができたかな、と感じています。
会計士のキャリアプランまとめ:監査法人辞める人、増えてます
会計士としてのキャリアプランを考えるなら、
- 長すぎる監査経験はNG
- 広い視野でキャリアを選択する
- (資格取得がまだならUSCPAを選択肢に入れる)
あたりがキーポイント。
今私が大学生なら
- 米国公認会計士を取得(日本の会計士より受かりやすいし広がりもある)
- 監査法人で数年勤務(監査法人は人手不足なので入りやすい)
- 事業会社へ転職(会計士は引っ張りだこ。居心地がイイ)
- CFOor独立(選択肢は無限大)
というキャリアプランを検討します。
と言えるようになるイメージです。
会計士が活躍できるフィールドは、たくさんあります。いろいろな場面で、期待され、待望されています。
ぜひ会計の専門家として素敵なキャリアプランを描きだして下さい。
それではまたっ!
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