現役経理マンが語る『経理の目標設定』の7つの切り口

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若手経理マン
あ~、今年も目標設定の時期がきちゃったよ…間接部門の目標設定って難しいよね…どうやって目標を決めれば良いんだろう…

こんな疑問にお答えします。

私は上場企業で10年以上にわたり経理/財務に携わっている現役の経理マンです。簿記1級とかTOEIC800点とか証券アナリストとか色々持ってます。

この記事を読めば

  • そんなにマジメに目標設定しなくてもいい理由
  • 7つの切り口から目標設定しておけばとりあえず問題は起きない理由

がお分かり頂けると思います。

それでは本題に入りましょう!

 

経理の目標設定の理想と現実

まずは、目標設定の理想(あるべき姿)と現実を見比べておきましょう。

 

目標設定の理想

  1. 全社的な目標が決まる
  2. 各部署(経理財務部)の目標が決まる
  3. 経理財務部内の各チームの目標が決まる
  4. 個人目標が決まる

トップダウンで目標が決まっていくというかたちです。

例えば、中期経営計画で、今後3年で利益を100億円伸ばすという全社的目標が掲げられていたとします。社内では、目標達成のためには国内同業他社のM&A(買収)が必要だという結論になりました。

こうなると、法務部や経理/財務部といった間接部門も目標設定がしやすいですよね。買収のサポートが部署のミッションになるからです。

経理/財務部のなかでは、

  • 資金繰りを検討するチーム
  • 買収先の企業価値評価をするチーム
  • 買収後の実務(決算の取り込みなど)を検討するチーム

などに分かれてくるでしょう。そして、そのなかで個人にタスクが割り当てられていきます。つまり、この時点で個人の目標設定は完了です。

 

こうやってトップダウンで綺麗に役割分担ができると

  1. 個人目標が達成される
  2. チームの目標が達成される
  3. 部署の目標が達成される
  4. 全社的な目標が達成される

という美しい流れが完成します。

中堅サラリーマン
目標設定なんて、こんなにうまくいかないよ。そもそも、経営陣がちゃんと従業員たちにメッセージを発信してくれないしね

というわけで、目標設定の現実を見てみましょう。

 

目標設定の現実

  1. 目標設定の時期が来る
  2. 急に上司との面談が始まる
  3. その場のノリで適当に決まる

 

ほとんどの会社ってこんな感じじゃないですかね!?(特に間接部門の場合)

 

春のあとには夏がきて、夏のあとには秋がきて、秋のあとには冬がきて

冬のあとには目標設定の時期がきます。春といえば目標設定!

普段まったく「課題提案」とか「マネジメント」をしない上司も、この時期だけは部下たちの目標設定のために動かざるをえません。部長や人事部に目標設定を報告しなくてはいけないからです。

 

  • 全社的な方向性も分からない
  • 部署のミッションも分からない
  • 各チームの役割も分からない
  • 自分が今後社内でどのように育てられて(育って)いくのか分からない

こんななかで目標設定をしている人は多いんじゃないでしょうか。ただ、今までやっていたことをこれからもやるだけ。

目標設定/目標管理/人事考課に満足している人を見たことがありません。

 

経理の目標設定は不毛

経理の目標設定は、特に不毛です。

 

不毛な理由

理由は3つです。

  1. 省力化(コストダウン)が至上命題なのに、ムダな目標設定で仕事が増える
  2. 経理財務の仕事は評価に差をつけにくい
  3. 年功序列(スキルのある若手より、スキルのない年上の方が給料が高い)

「仕事してるアピール」をするために、わざわざありもしない課題・目標を見つけてきて仕事を増やすというのは、経理あるあるですね。

個人的には、仕事(会計/税務上の問題がなく、統制上も問題がないもの)を減らした人の方が優秀だと思うんですけどねw

また、経理財務の仕事は評価に差をつけづらいです。連結決算やってる人と、税務やってる人、どっちが偉いとかないですからね。

さらに、結局のところ目標達成の程度にかかわらず、人材価値の評価という面では「年功序列」というむなしさがありますね。給与を決める主要因は、経理スキルの高さではなく、年齢です。

 

目標設定制度を活かす方法

そんななかで、どのように目標設定制度に向き合えば良いかと言うと、コレです。

  1. やりたいことをやるためのツールにする
  2. やりたくないことを避けるためのツールにする

やりたい仕事がある人はラッキーです。目標設定制度を通じて、やりたい仕事をゲットしていきましょう。

 

私の場合、税務や連結決算をやるために、目標設定の片隅に

  • 税務を担当できるようになるため、税務のセミナーに通ったり、税務主担当者の補助をする
  • 連結決算を担当できるようになるため~(以下同文)

といった感じの文言を忍ばせていました。セミナー参加や補助業務を通じて、社内で「次の〇〇の担当者アイツ」という無言のアピールをしていったというわけです。

 

やりたい仕事なんてないよという人も多いと思います。そういう人は、「やりたくないことを避ける」ためのツールとして目標設定制度を使えば良いと思います。

目標が入っている限り、他の目標は入ってこないという特徴があります。好きな仕事とまではいかなくても、せめて嫌いではない仕事で満席状態にしてしまえばいいのです。

うまい人は、こうすることで(自分にとって)ストレスのかかる仕事を上手に避けています。

 

経理の目標設定の7つの切り口

基本的には、上記で説明したように

  1. やりたいことを書く
  2. やりたくないことが入らないように、嫌いじゃないことを書く

という路線で行けば良いと思いますが、そうは言っても具体例も欲しいですよね。

というわけで、オーソドックスな目標設定の7つの切り口を紹介しておきます。

 

①業務の幅を広げる

未経験の新しい仕事をやりたいです!ということですね。

コレの意味するところは、究極的には「管理職を目指します」ということでもあります。部下を持たない専門職志向なら、税務一筋30年とかでもいいと思いますがw

  • 単体決算
  • 子会社管理
  • 連結決算
  • 予算管理
  • 原価管理
  • 税務申告
  • 開示業務
  • 資金調達/運用

会社にもよりますが、やるべきことはいくらでもあります。

ただ、この手の目標は20代~30代前半にしておきましょう。ある程度年齢を重ねてから「新しいことを身につけるのが私の目標です」というのはちょっとレベルが低く見られてしまいます。

 

②業務改善/効率化

経理あるあるの筆頭パターン、業務改善/効率化です。これの意味するところは結局はこの2つです。

  1. 省力化
  2. 正確性の向上

省力化については、数字で検証できる内容がいいでしょう。

  • 7日かかっていた決算を6日でできるようにしました
  • 6時間かかっていた業務が1時間で終わるようになりました
  • 10人でやっていたことを3人でできるようにしました

正確性の向上については、過去に監査や税務調査で問題を起こしていた業務をケアするといった方向性でOKだと思います。過去起きたトラブルを、これからは起きないようにするというのは大切な視点です。

 

③統制強化

経理/財務部には、他部署に対する「けん制機能」があります。

  • 資金管理
  • 物品管理
  • 予算管理

不正が起きるとヤバいのが、リアルなお金の話ですね。物品の横領なども非常に大きな問題となります。

この手の不正が起きないような業務フローを構築することは重要です。内部統制の強化というやつです。

あとは予算管理ですね。年度ごとに費目を決めて、重点的にコントロールしていくのも良いかも知れません。

業務の効率化や改善が難しければ、とりあえず「他部署に対するけん制を強化する」と言っておけばOKな風潮があります。経営陣にも存在感をアピールしやすいからですかねw

 

④マニュアル/規程類の整備

これ、美味しい業務です。下にいくにつれて価値が上がります。

  1. グループ業務にかかわる規程類の整備
  2. 部署業務にかかわる規程類の整備
  3. 全社にかかわる規程類の整備

特に③の場合は、関係部署との調整も必要になりますから、社内で人脈を広げる良いきっかけになります。規程類の承認はお偉い人の仕事なので、彼らの目に留まる可能性も高いです。

そういう意味では、評価されやすい(しやすい)仕事ではあります。「つまらない」と感じて嫌う人も多いですけどね。私はつまらないと感じる派です(*ノωノ)

 

⑤システム導入(自動化)

これは美味しい業務の筆頭ですね。転職の時にも、非常に高く評価される経験になります。

システムの要件定義からリリースまで全ての流れに関与できると、経理マンとして一段階レベルアップすると思います。システム導入のフローには型があるので、応用がきくようにもなります。

自動化は随分前からキーワードになっていますし、可能なら絶対に関与しておくべき仕事ですね。この手の業務は「おもしろい!」と感じる人も多いですしね。

 

⑥外注化

これも美味しい業務の代表格です。

なんと今は、めちゃくちゃ大きな会社が「連結決算そのもの」を外部委託してしまうような時代です。連結決算システムで有名なDIVA社の子会社や、独立会計士のコンサルティングファーム等が受託を広げています。

これからもどんどん外注は進んでいくでしょう。外注業務の代わりに社内に残るのは、付加価値の高い業務です。AI等では代替できない業務ですね。

できる外注化はバンバン進めていくとよいでしょう。

 

⑦改正対応

これも美味しい業務です。なぜなら、カンタンだから。

会計基準の改正や税制改正は毎年のようにありますが、何もその対応を一人で考える必要はありません。

良いセミナーがたくさんあるからです。他社事例も簡単に手に入る時代です。これらを利用すればカンタンに、部内で「改正内容に一番詳しい人」になれます。

改正内容を部内でプレゼンしたり、改正影響を実務フローに反映したりすれば、なんだか存在感がありますよね。

改正対応は、中心人物になってしまった方が面白いと思います。

 

経理の目標設定まとめ

キーワードはこの7つ。

  1. 業務の幅を広げる
  2. 業務改善/効率化(省力化及び正確性の向上)
  3. 統制強化
  4. マニュアル/規程類の整備
  5. システム導入(自動化)
  6. 外注化
  7. 改正対応

その他、毎年イレギュラーで発生する会社特有のトピックス(買収など)があれば、積極的に目標に入れてしまいましょう!

 

まとめ:目標設定で管理すべきは自分の市場価値。やりたい仕事をやりましょう

結局、目標設定で管理すべきは自分の市場価値だと思います。

  • この仕事をやると、自分は転職で評価されるようになるのか?
  • こんな仕事をやらされていたら、自分はダメになってしまわないか?

こういう視点で、主体的に目標設定に取り組んだ方が自分にとってプラスだと思います。

 

自分を正当・公平に評価してくれる仕組みがあればいいですが、それはなかなか難しいのが現実です。

サラリーマンの悩みの筆頭は「人事評価」。それだけ万人が満足する評価をするのは難しいということですね。

どうせ納得感のある目標設定・人事考課が得られないのなら、目標設定をこうやって使う方が建設的。

目標設定はこうやって利用しよう
  1. やりたい仕事をやるためのツール
  2. やりたくない仕事を避けるためのツール

自分のキャリアは自分でしか作れないので、ムダな目標設定に振り回されないように、主導権を持って立ち回りましょう!

 

ちなみに、「上司がどうしようもなくて、目標設定をツールとして活用できない」という場合には、転職を検討するのもアリかと。

  • 自分の部下のキャリアなんてどうでもいい
  • 自分が気持ちよくラクに過ごせれば他はどうなってもいい
  • 自分が損しないことが最優先

こういうとんでもない上司はどこにでも必ずいます。

日本企業は降格や左遷、リストラなどがやりにくい環境にあるので、こういう上司も割と粘り強くその職場に居続けることになります。

こういう上司と働く期間が長ければ長いほど、あなたのキャリアは錆ついていきます。「あぁ、うちはそうだわ」と、ピンとくる人もいるでしょう。

幸い、今は転職市況が良いので「転職して年収が下がった!」という話はあまり聞きません。

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知り合いの転職事情を見ていると、「年収50万円アップ&チャレンジしたい仕事を選べる」くらいはザラですね。なかには100万円アップの求人案件を紹介されたり、万年平社員→マネージャーポジションでの転職を実現させた人もいます。

転職エージェントの利用は無料ですし、相談するだけならまったくリスクはありませんから、一度面談してみると良いと思います。今の経理は人手不足なので、引く手あまたで驚くと思いますよ。

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それではまたっ!

 

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ABOUTこの記事をかいた人

こびと株.comの管理人。一部上場企業での経理/財務の実務経験10年超、日商簿記1級、証券アナリスト、FP資格を有する「企業と個人のお金の専門家」。4つの財布(給与/配当/不動産/事業収入)を駆使して経済的自由を達成することを目標に奮闘中。