

こんな要望にお応えする記事です。
経理と財務は全く異なるものですが、とーーっても混同されやすいです。
なぜ混同されやすいのかというと、
- 2つとも「お金に関すること」を扱う職種だから
- 2つとも「会計」の知識を必要とする仕事であることだから
- 小さな会社・中規模な会社では、経理の仕事も財務の仕事も1人で担当することがあるから
これから経理と財務の違いを見ていきますが、意識して欲しいことは1つだけです。それは、

経理と財務の違いは主にこんな感じ。
- 仕事内容が違う
- バックグラウンドが違う
- 年収水準が違う
- キャリアパスは大体同じだが、CFOになれる可能性が高いのは経理ではなく財務
この4つの違いを意識しながら確認していきましょう!

目次
経理と財務の違い①仕事内容

では、経理と財務の仕事内容を見比べていきましょう。
経理の仕事
経理の仕事の目的は「会計情報」をとりまとめて報告することです。
この会計情報が詰まった資料の代表が「財務諸表」です。経理のメイン任務は、この財務諸表の作成です。
この財務諸表を作成するために日々、
- 現金や預金の入出金管理をしたり(例:営業マンの売上集金、交通費精算など)
- 日々の取引に関する伝票の作成と帳簿付けをしたり(記帳業務)
します。
さて、一般に、経理の仕事は次の2つに大別できます。
- 財務会計にかかわる仕事
- 管理会計にかかわる仕事
見慣れない言葉かもしれませんが、大したことはありません。
会計情報を”誰に”報告するかというだけの違いです。

財務会計の仕事とは?
財務会計の守備範囲は、企業”外部”への報告です。
”外部”という言葉が何を指しているかというと、次のような人達ですね。
- 株主
- 債権者(取引先の利害関係者)
- 投資家
企業は、社会のなかでたくさんの人々とかかわりを持っています。
これらの人々は、



といった感じで、企業の財政状態や経営成績に興味津々なのです。
彼らに報告する資料のフォーマットは、法律・会計ルールでしっかり決まっています。
ここがポイントです。自分たちで好き勝手に作って良いわけではありません。
なんでかと言うと、企業間の財政状態・業績を見比べられるようにするためです。
トヨタも日産も、同じようなフォーマット・ルールに則って財務諸表が作られているのは、そういう理由です。

管理会計の仕事とは?
財務会計とは異なり、管理会計の守備範囲は、企業”内部”への報告です。
”内部”という言葉が何を指しているかというと、次のような人達ですね。



企業の内部では、経営に役立つ有用な会計情報のニーズが非常に高いです。
管理会計の仕事というのは、社長やその他取締役、本部長や部長などに対して「経営判断の役に立つ」会計情報を提供することが目的です。
財務会計との大きな違いは、会計情報をとりまとめるにあたって法的な縛りがないことです。なぜなら、社内だけで使うローカルな資料だから。
なので、こんな(くだらない)ことがよく起きます。




財務会計のお仕事ではこういうことは起きません。
- 税金の申告書
- 有価証券報告書(大企業が金融庁に提出する資料)
- 決算短信(上場企業が東証に提出する資料)
こういうものは、すべて法律などでルールが決まっていますから。
フォーマットも作り方も、すべて法律に従うだけでOKです。
一方で、社内用の報告資料は報告先に誰がいるかでまったく内容が異なります。先に見せた事例のように、フォーマットはもちろんのこと、集計方法だって違いがでます。

こういうことだって普通に起こります。社内での考え方の話なので、別に不正でもなんでもありません。ここが管理会計の面白いところですね。
財務の仕事
財務の仕事というのは、財務諸表の作成には全く関係ありません。
さきほど、経理の仕事を説明するときに「財務会計」という言葉が出てきましたが、同じ「財務」という言葉でも全くの別物です。
財務の仕事は、次のようなことです。
- 資金調達(銀行から融資を受ける、株式を発行する)
- 資金運用(M&A:企業買収、投資)
- 財務戦略の立案(借金と自己資金の比率をいくらにするか)
- 予算編成及び管理
- 事業価値評価
経理の仕事というのは、基本的に「過去の情報の集計」です。
一方で、財務が扱うのは「未来」の話です。
企業の生命線になる資金繰りのコントロールと、予算編成・管理や事業価値の評価などがメインの業務になります。

英語で、
- 経理はAccounting(アカウンティング)
- 財務はFinance(ファイナンス)
と表現されます。
米国では、お金持ちになりたいならAccountingの仕事に就くよりもFinanceの仕事に就く方が良いというのは常識だそうです。
なぜならFinanceの方が企業利益に直結するからです。

経理の中でも、財務寄りの仕事ができる人材は上位階層です。
経理と財務の違い②知識・バックグラウンド

経理の知識
経理を行ううえで最も必要な知識は「簿記」です。簿記とは、企業の活動を数値化して財務諸表を作成するための技術ですね。
- 高校で学ぶなら商業高校
- 専門学校で学ぶなら経理専門学校
- 大学で学ぶなら経済学部・商学部
- 独りで学ぶなら日商簿記検定
経理をするために必要な知識・バックグラウンドを持っているかどうかは、簿記検定の有無、出身校で判断されます。
財務の知識
財務の仕事に携わるうえで最も必要な知識は「ファイナンス」です。
会計(簿記)の知識も必要ですが、そこまでマニアックに追及する必要はありません(経理のプロフェッショナルとは異なり、最低限、簿記2級程度の知識があれば十分でしょう)
- 高校や専門学校で高度なファイナンスを専修できるところはほとんどないと思います
- 大学で学ぶなら経済学部・商学部
- 独りで学ぶならファイナンス関連書籍
簿記のような検定試験がないため、身に着けるためのハードルが一段高いイメージです。さらに、大学でファイナンスを専攻していたという理由で、新卒でファイナンスの職種に就けた学生は私の身近にはいません。
- ”運よく”たまたま財務部に配属されるか
- 経理に配属されてからファイナンスを身に着けて(夜間MBAなどでファイナンスを専修する)、転属希望を出すか
- 経理と財務が区別されていない企業で実務経験を積んで、財務メインの仕事ができる会社に転職する
このあたりが財務の仕事をするための現実的なコースかもしれません。

経理と財務の違い③年収

財務の方が、経理よりも1~2割年収が高いです。

(出典:平均年収ランキング(職種別の平均年収/生涯賃金)【最新版】(DODA))
※求人数は、財務の方が経理よりも圧倒的に少ないです
経理の年収
経理の年収はピンキリです。
経理はどこの会社にも絶対に必要な存在なので、かなり収入水準にバラつきがあります。
年収の水準は次の2つで決まります。
- その会社が儲かっているかどうか
- 経営陣がその儲けを従業員に還元する気があるかどうか
仮に2人の経理マンがいるとします(Aさん、Bさん)。
AさんもBさんも、仕事の内容は全く同じです。労働時間も労働の質もほとんど変わりません。
それなのに、
- Aさんの年収は700万円
- Bさんの年収は400万円
だったりします。経理はこういう世界です。
あえて幅を示せば、年収200万円~年収1,000万円といった感じです。

高い給料が欲しいなら、業界・企業の年収を調べて、儲かっている業界・儲かっている会社の経理を狙いましょう。(ちなみに、会計事務所業界は超薄給激務なのでオススメしません)
経理の年収に関しては、こちらの記事は必見です。
財務の年収
財務の年収は、経理と比較すると1段高いです。
その理由は、経理と財務が分業されている企業は大企業ばかりだからです。必然的に、財務の年収水準は高くなります。
幅を示すと、500万円~1,200万円という感じです。
経理と比較すると、下限も上限も1段階高くなっていますね。

ベンチャー企業の初期段階(創業者3~4人しかいないような感じ)で、財務担当の人はそれぐらいの水準かも知れないですが…まぁあまり参考にならないでしょう。
外資系の転職情報を見ると、経理よりも明らかに年収水準が高いです。マネージャークラスで1千万円超というのもザラですね。
ここだけ見ると、経理より財務の方が優れている職種に見えますが、残念ながらそううまくはいきません。
財務の方が、経理より圧倒的にポジションが少ないからです。

経理と財務の違い④キャリアパス

経理・財務のキャリアパス
経理の場合は、ざっくりこんなイメージです。
【日系企業(上場企業)の一例】
・ 経理スタッフ(経験1~3年)
仕訳業務や月次決算・年次決算補助業務など経理の基礎を学ぶ段階。
↓
・経理財務主任(経験2~3年)
年次決算実務。税務申告、財務諸表、キャッシュフロー計算書作成。
内部統制業務補佐。
↓
・ 経理財務課長(経験3~5年)
決算、財務諸表、IR実務までの経理管理業務の実質的責任者。
専門性に磨きをかけ市場価値を高めること。内部統制業務(J-SOX業務)。
資金調達・運用などの事業計画、あるいはM&A戦略プラン対応の実質責任者。
↓
・経理部長(経験5~10年):
会社全体の業績について実質的に統括。
会社及びグループ全体の資金に関する統括責任者
↓
・取締役: キャリアゴールのひとつ。(出典:管理部門人材のキャリアパス~経理財務~)
転職サイトで紹介されているキャリアパスなので、30歳前後がスタートの経験年数に見えますね。
経理オンリーで上を目指すならこんなイメージですが、経営企画などの企画系・財務畑へ乗り換えていくキャリアパスもあります。
外資を例にとると、アカウンティング/ファイナンス/FP&A(企画系)のマネージャーを経由することがCFO就任へのキャリアパスになります。
(出典:経理・財務キャリアパス)
こうやって見ると、職務の内容が違うだけで、経理・財務のキャリアパス自体に大きな違いはありません。
どこをゴールに据えるかで、何歳でどこの職場にいれば良いかが変わるだけということです。
- 日系大企業の部長・取締役
- ベンチャー企業の役員
- 外資系企業のコントローラー・CFO
- 会計事務所やコンサルティングファームのパートナー(共同経営者)
概ね、35歳ぐらいまではキャリアの方針を決めたうえでそのキャリアパスに乗っていないと厳しいと言われています。
つまり、40歳まで日系企業に勤めていた人が、突然その年齢から外資のCFOを狙うのは難しいということです。
決勝戦(経理部長と財務部長どちらがCFOになれるか)までいくと、財務部長に軍配が上がるケースが多い気がしますね。もちろんケースバイケースでしょうけれど、経理は企業に利益をもたらしませんからね。財務活動は企業利益に深い関係があります。

まとめ:経理と財務は似て非なるもの!

経理と財務は混同されがちですが、
- 仕事内容が違う(一言で言うと、経理は財務諸表の作成がメイン、財務は資金調達・運用がメイン)
- バックグラウンドが違う(経理は簿記がメインの知識、財務はファイナンスがメインの知識)
- 年収水準が違う(経理よりも財務の方が1~2割年収水準が高い)
- キャリアパスは大体同じだが、CFOになれる可能性が高いのは経理ではなく財務
といった違いがあります。
求人数も違います。財務を狙うのは割と狭き門です。
以上、経理と財務の違いでした。違いが知りたい人の参考になっていれば幸いです。
それではまたっ!
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