こんな方々のために、マイホーム不要派の意見をまとめてみました。
大きな買い物だからこそ、そのメリット・デメリットをよく理解したうえで購入したいですよね。
マイホームのメリットは「販売者側」がこれでもかというほどアピールしてきますから、この記事では真逆の立場をとってデメリットに焦点を当てていきます。
※「マイホーム派と賃貸派の論争に決着をつける!」という記事ではないのでご承知おきください。
目次
マイホーム不要派が主張する10の理由
まずは結論から。
- 中途半端な物件の資産価値は下がり続ける
- ローン返済が終わっても維持費がかかり続ける
- 会社からの住宅手当が出なくなる
- 住宅ローンの返済リスク/金利変動のリスクがある
- 万が一の災害に弱い
- 欠陥住宅・設備不良のリスクがある
- 引っ越しや転勤のハードルが上がる
- 家族構成の変化に対応できない
- 親から相続できる可能性が高い/高齢になっても住む場所には困らない
- マイホーム所有=一人前という感覚は薄れつつある
家の購入を検討している方なら、軽視して良い項目は1つもないかと。
それではこの10個の理由について、1つずつ見ていきましょう!
マイホーム不要派の主張【金銭面3点】
いらない理由①:中途半端な物件の資産価値は下がり続ける
総務省が発表したデータによると、2017年1月1日時点の日本の人口は1億2558万3658人。8年連続で減少しています。
これからも人口は減り続け、2060年には生産年齢人口は3264万人減少するという推計もあります。
2060年までに2015年と比較して生産年齢人口が「3264万人」減る。この規模は世界第5位の経済規模を誇るイギリスの就業人口とほぼ同じ
大胆提言!日本企業は今の半分に減るべきだ アトキンソン氏「日本人は人口減を舐めてる」 | 国内経済 – 東洋経済オンライン https://t.co/WJk4INZGwh @Toyokeizaiから
— こびと株.com (@kobito_kabu) February 22, 2018
人口ボーナス期が終わって、経済成長に陰りが見えているこの状況。国内不動産を取り巻く環境は、厳しさを増すばかりです。
- 基本的に、地価の上昇は見込めない
- ー戸建て(上物)は20年で価値がゼロになる
- マンションは20年で価値が約60%減少する(東京・大阪・愛知)
今すでにこの状況ですから、将来はますます土地も建物も資産価値を維持できないことになるでしょう。
地方は過疎化が進み、生き残るのは一等地及び一等地の物件だけという意見もあります。
実際、日本全体で見れば地価は伸び悩み続けています。
いらない理由②:ローン返済が終わっても維持費はかかり続ける
マイホームのよくある売り文句に
というのがありますよね。
ところが、戸建てにせよマンションにせよ、ローンの支払いが終わって「あなたのもの」になっても支払いの続くコストがあります。
- 固定資産税
- 修繕費
- 管理費(マンションの場合)
完全に住居費ゼロで暮らすことはできないのです。
年間で発生する修繕費や固定資産税を月ベースにならすと、最低でも月2万円~5万円ほどのコストがかかり続けます。
「古びた住宅にお金をかけてメンテナンスしつつ暮らすより、いっそ家賃が安くて綺麗な賃貸に引っ越した方が…」というのはマイホーム不要派のよくある主張ですね。
いらない理由③:会社からの住宅手当てが出なくなる
マイホーム派と賃貸派の論争が終わらないのには理由があります。
どちらが得とは言い切れないからです。
- もしマイホームの方が絶対にお得なら、世の中に賃貸で暮らす人はいなくなります
- もし賃貸の方が絶対にお得なら、世の中にマイホームを購入する人はいなくなります
市場経済というのは実によくできていて、どちらがお得とは言い切れない絶妙のバランスを保ち続けているのです。
もし、「マイホームも賃貸もどちらでも変わらない」というのが結論なら、会社からの住宅補助が貰える方が、その分だけ必ずお得になります。これは、当然の話です。
住宅補助の内容は、企業によってケースバイケースです。
- 借り上げ社宅を格安で従業員に提供
- マイホームでも賃貸でも、住宅手当を支給
- 賃貸に限り、住宅手当を支給
①と③の場合では、間違いなく賃貸の方がお得になります。
マイホーム不要派の主張【リスク面3点】
いらない理由④:住宅ローンの返済リスク/金利変動のリスクがある(金利リスク)
マイホームを買うということは、土地と建物の所有権を得るということです。
これに伴い、様々なリスクを受け入れることになります(所有とリスクは表裏一体)。
その主たるものが財務リスク。要するに、借金を返済できなくなり、家計が破綻するリスクがあるということです。
サブプライム危機のように、時には世界中で金融危機を起こすほどの影響力があります。
今回の世界的な金融危機の発端は、米国の住宅市場を舞台としたサブプライムローン(信用力の低い債務者向けの貸し付け)問題だ。住宅価格は上がり続けるという「住宅神話」を前提に、高リスクの借り手に対して金融機関が過剰に貸し込み、2006年後半以降の住宅バブル崩壊で不良債権化し始めた。
当初2年は低利固定、3年目から高利変動という金利条件が多かったため、2年後の「金利リセット」到来とともに返済不能に陥る債務者が急増。担保価値上昇による低利借り換えを狙った借り手のもくろみはあっけなく外れた。
(東洋経済「サブプライム危機はどのように世界に拡大したのか」)
日本では、一般に「借入限度額は年収の8倍まで」などという目安があります。
でもこれは、銀行が貸し出せる最大額であって、借り手が楽に返済できる金額というわけではありません。
住宅ローン破綻をする世帯の割合は0.5%〜0.8%程度、経済環境が悪化した時期でも1%を少し超える程度だろうと推定される。
住宅ローンの債務者200人のうちで、1人〜2人といった割合だ。「借りたお金は必ず返さなければ……」という責任感が強くて真面目だといわれる日本人の破綻率の低さが、金融機関の超低金利による貸出競争を支えているともいえる。
しかし、100人に1人以下だからといって決して他人事ではない。住宅ローン破綻を避けるために苦しい家計を必死でやり繰りしながら、何とか生活を続けている世帯はその数倍になるだろう。
住宅を手放したくないために無理を重ねつつ、ギリギリの生活で「破綻予備軍」となっている世帯も多いのだ。
(出典:LIFUL HOME’sPRESS「住宅ローン破綻は誰にでも起こりうる」)
今でこそ史上最低レベルの金利が続いていますが、30年前には金利が8%もありました。
今後、現在のような低金利がいつまで続くのかは、誰にも分かりません。
もし急激に金利が上昇するようなことがあれば、住宅ローンの返済が滞る家計は続出するでしょう。
いらない理由⑤:万が一の災害に弱い(災害リスク)
- 全壊約13万棟
- 半壊約27万棟
- 一部破損約74万棟
これが、住宅の所有に伴う災害リスクの一例です。
1995年の阪神淡路大震災、2016年の熊本地震など、日本では定期的に大きな地震災害が発生しています。
今後も大きな地震の発生が予想されていますから、無視できるリスクではありません。
マイホームと賃貸住宅を比較すると、マイホームにはあらゆるリスクがついて回ります。
ということは、その様々なリスクを引き受ける分だけお得になっていないと、マイホームを購入する人がいなくなってしまいます。
リスクを引き受けるからこそ、賃貸住宅より安く住める可能性がある。それがマイホームということです。
「マイホームで得をした!」という人は、相場変動・金利変動・災害発生などのリスクが現実化しなかったために経済的損失を回避できた(=結果として利益が残った)人と見ることもできます。
逆に言うと、ひとたびリスクが現実になってしまえば、一気にマイホームは負債になってしまいます。
災害リスクは、その最たるもの。この損失を負担したくなければ、追加で保険料を払うしかありません。
昨年の震災において、地震保険は東北、関東、甲信越などで75万件以上、1兆2000億円を超える保険金が支払われました。
被害が甚大だったため、震災直後には保険金が契約どおりに支払われるのか、といった声もありましたが、地震保険は「地震保険法」という法律に基づいて運営されている公共性の高い保険であり、1回の地震につき5兆5千億円(注:2012年4月1日からは6兆2000億円)までは法律によって保険金の支払いが保証されています。
(出典:2012年3月5日付日経新聞「大震災で役に立った地震保険 支払い実績75万件」)
いらない理由⑥:欠陥住宅・設備不良のリスクがある
マイホームの個別的なリスクとして、欠陥住宅や設備不良のリスクがあります。
- 手抜き工事問題
- 耐震偽装問題
- 欠陥マンションの偽装事件
ちょっと調べるだけで、このような事件は大なり小なり頻繁に発生していることが分かります。
神奈川県横浜市の大型マンションが施工不良によって傾いていることが発覚した問題で、建築基準法違反の疑いで国土交通省や横浜市が調査に乗り出している。
問題のマンションは三井住友建設が施工し、旭化成建材が杭の工事を請け負っているが、建物を支える52本の杭のうち6本が強固な地盤の「支持層」に届いておらず、ほか2本も打ち込まれた長さが不十分だったことが明らかになった。
(出典:2015年10月16日付Bujiness Journal「横浜の欠陥マンション偽装事件は他人事じゃない!脅し文句で住人を黙らせる異常な業界体質」)
被害者に対する補償は、あればまだ良い方。泣き寝入りするしかないような事件も起きています。
賃貸であればこのリスクは大家さんが負いますが、マイホームとなると話は別です。
運悪くババをつかまされてしまった場合の経済的・精神的苦痛は想像に難くありません。
また、太陽光発電設備などのトラブルも頻繁に発生しています。
国民生活センターへの相談は年間3,000件を超えており、経済産業省が「太陽光発電に関するトラブルにご注意ください」というパンフレットを出しています。
マイホーム不要派の主張【環境面4点】
いらない理由⑦:引っ越しや転勤のハードルが上がる
住宅は、ひとたび手にしてしまうと、簡単に手放すことができません。
次のようなことが起きても簡単に引っ越しすることはできないのです。
- いざ住み始めてみたら、立地の不便さに気がついた
- 近所付き合いがうまくいかず、トラブルが起きるようになった
- 周囲に高層マンションが建設されることになり、極端に日照が悪くなった
マイホームを買ったとたんに転勤を命じられた、などという話も良く聞きます。
もともとマイホームは、「購入者のファミリーにとって最適な物件」です。
投資物件として選定したわけではないですから、「貸すにも貸せない」「貸せたとしても住宅ローンの返済を賄えない」なんてことも考えられます。
いらない理由⑧:家族構成の変化に対応できない
マイホームは、家族構成の変化に対応できません。
マイホームというのは、購入時点の家族構成におけるベストな住宅です。
当たり前ですが、住居人のライフスタイルの変化に合わせて、マイホームが柔軟に姿・形を変えるということはありません。
例えば、友人の家庭では
- 当初、父・母・友人・弟の4人家族でしたが
- 友人が中学生の頃、お母さまが病気で亡くなり
- その後、友人と弟さんも独立しました
現在はお父様の1人住まいです。
②の時点で、マイホームは、1人分のキャパシティを余分に抱えてしまったことになります。
③の現在では、もちろん各フロアの部屋は余ってしまっています。家(4LDK・100㎡の戸建て)の収容量を活かせていないわけです。
家族みんなで暮らせる時間は、長いようでそう長くはないということです。
仮に不幸がなかったとしても、家族みんなで暮らす期間は、マイホームのローン返済期間よりも短いのが一般的です。
結局、その時その時の家族構成に最適な住宅に住みたいのならば、マイホームは不向きだということです。
いらない理由⑨:親から相続できる可能性が高い/高齢になっても住む場所には困らない
国土交通省が公表しているデータによると、空き家はこの20年で倍増しています。
住宅のストック数(約6,060万戸)は総世帯(約5,240万戸)に対して16%多く、すでに必要な住宅数は充足されています。
居住者のいない住宅は853万戸もあるのです。
空き家問題は、今後一層深刻化します。
あと15年も経てば、日本の全住宅の約3戸に1戸が空き家になってしまう危険性があるということである。
この背景にあるのは、今後、空き家化に関わる二つの動きが同時進行していくことだ。
ひとつは、団塊世代が相続した実家の空き家化。もう一つは、団塊ジュニア世代(団塊世代が後期高齢者となる2025年頃から急激に増える)が相続する実家の空き家化である。
つまり、日本は近い将来、大量相続時代を迎えることになる。
もし自分が相続する住宅がなかったとしても、日本全体で見れば必ず住宅は余ります。
そうなると
- (立地を選ばなければ)中古住宅はタダ同然で手に入る
- 今よりも良い条件で賃貸物件を借りられる
ということになります。
いらない理由⑩:マイホーム所有=一人前という感覚は薄れつつある
マイホームの取得推進は、戦後の日本経済を立て直すためにとられた国策の1つです。
そのような背景もあって、以前は「マイホームを建ててこそ一人前」という風潮が、社会全体にありました。
しかし、その流れは段々と変わってきています。
長い間80%超の人が「土地・建物の両方を所有したい」と答えていましたが、近年は減りつつあり、80%を切るようになってきました。
一方で、近年増えているのは、「賃貸住宅で構わない」という人です。
最新データ(平成25年分)の数字を世代別でみると、図4のようになっています。
これを見ると、20代・30代・40代の「賃貸住宅で構わない」の多さが目立っています。持ち家ではなく、賃貸住宅にずっと住むという選択肢を考えている人が増えていることがうかがえます。
(出典:大和ハウス工業株式会社「持ち家志向80%切りの衝撃!若年層の持ち家志向が減っているのはなぜか?」)
他人との比較によって満足を得る
- 収入
- 貯金
- 役職などの社会的地位
- 家やクルマなどの物的財等
のようなものを、「地位財」と呼びます。
持ち家志向が低くなってきているというのは、マイホームの地位財としての価値が下がってきているということです。
まとめ:それでもマイホームが欲しいというあなたへ
最後に、もう一度マイホーム不要派が主張する「いらない理由」を確認してみましょう。
- 中途半端な物件の資産価値は下がり続ける
- ローン返済が終わっても維持費はかかり続ける
- 会社からの住宅手当が出なくなる
- 住宅ローンの返済リスク/金利変動のリスクがある
- 万が一の災害に弱い
- 欠陥住宅・設備不良のリスクがある
- 引っ越しや転勤のハードルが上がる
- 家族構成の変化に対応できない
- 親から相続できる可能性が高い/高齢になっても住む場所には困らない
- マイホーム所有=一人前という感覚は薄れつつある
途中で解説したように、マイホームと賃貸住宅、どちらが得でどちらが損ということをハッキリさせることはできません。市場経済というのは非常にうまくできています。
日本の住宅事情が厳しくなることは容易に予想できますが、不動産取引は相対取引なので、市場の歪みを見つけられれば有利な取引をすることも可能です。
姉もマイホームを購入しましたが、現状とても満足しているようです(もちろん私が全力でサポートしました)。
小さくて元気な子供がたくさんいる家庭では、やはり戸建てのメリットは大きいようですね。
とはいえ、一寸先は闇。これから先どうなるかは分かりません。それがリスクを引き受けるということです。
持ち家派も賃貸派も様々な意見がありますが、ただ1つ、
ということだけは認識しておいた方が良さそうです。
それではまたっ!
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