こんな疑問にお答えします。
こんにちは、こびと株(@kobito_kabu)です。
私は証券アナリスト有資格者です。金融業界で働いているわけではないですが、
- 簿記1級やFP資格を持っていたり
- 上場企業で10年以上にわたり決算書の作成・株主対応をしたり
- 5年以上に及ぶ投資経験があったりと
金融に関してはそれなりに知識があります。なので、このへんについても分かりやすく解説できるかなと思います。
本記事の概要は、次の通り。
- 投資信託とは、ETFとは
- 投資信託とETFの違い
①売買方法の違い
②コストの違い
③機能面の違い
結論:初心者は「投資信託」の方がラク。ただし、高配当株で配当金を楽しみたいのなら「ETF」がおすすめ。
それでは、順番に見ていきましょう。
目次
投資信託とは、ETFとは
まず、投資信託とETFの概要について説明します。
投資信託とは
投資信託は
- 複数の投資家からお金を集めて
- 資産運用プロが、株式や債券に投資をしてお金を増やす
そういう仕組みです。ファンドとも呼ばれますね。
イメージはこんな感じです。
(出典:一般社団法人投資信託協会)
自分ひとりで個別企業(たとえばトヨタとかSONYとか)に投資するのと比べて、投資信託には以下のメリットがあります。
- 少額から購入できる
- 分散投資によりリスクを下げられる
- 手間がかからない(ほったらかしでOK。不労所得)
- 法律上、厳重に資産が保全されている
ETF(上場投資信託)とは
ETFとは「Exchange Traded Funds」の略で、上場投資信託のことを言います。
略語はどうでも良いので、ETFという言葉に愛着を覚えましょう。三回口に出すと、愛が芽生えます。
ETF!
ETF!
ETF!
※Fundsと書いてあるとおり、ETFも投資信託と同じように「ファンド」と呼ばれます。同じ言葉で表現されるので混乱しがちですが、これから説明するように投資信託とETFは性質がぜんぜん違います。
投資信託を「上場させたもの」がETFということです。本質的な違いはこれだけ。
- 投資信託:上場してない
- 上場投資信託:上場している
ところが、上場している(=証券市場で投資家が自由に売買できる)ことによって、投資信託とETFの間には大きな違いが生まれてくるというわけです。
以下、違いを順番に見ていきましょう。
①投資信託とETFの違い【売買方法】
まず、売買方法が異なります。
どこで買うか
- 投資信託:ファンドごとに異なる(証券会社、銀行、郵便局など)
- ETF:証券会社
投資信託は、販売会社を通じて買います。販売会社は
- 証券会社だったり
- 銀行だったり
- 郵便局だったり
と様々です。リアル店舗に行って対面窓口で買うこともできますし、ネットで注文することも可能です。
一方、ETFは証券会社で開設した証券口座を使って、市場で自由に取引します。つまり、どこで買えるか?と聞かれれば、証券市場で買えるということになります。
※ちなみに、証券市場(しょうけんしじょう)は、築地の魚市場(うおいちば)のようにリアルな場所を表しているわけではありません。
市場(しじょう)と市場(いちば)の言葉の使い分けが気になる方は、こちらのリンクをご参照ください。
価格の決まり方
- 投資信託:1日1回、計算される
- ETF:証券市場でリアルタイムに値段がつく
投資信託では、1日1回「基準価額(きじゅんかがく)」が計算されます。
- その投資信託が保有している株や債券の時価総額に
- 利息&配当金をプラスして
- 運用コスト等を差し引く
これでその投資信託全体の純粋な資産が分かるので、これを1口あたりの金額に直すことで「基準価額」が計算されます(1口というのは、投資単位です。)
一方、ETFではリアルタイムで市場価格(=時価)を見ることができます。ふつうの株と同じですね。
こうやって、パソコン画面に張り付いて、1分1秒毎に価格チェックできるということです。
どうやって注文するか
- 投資信託:販売会社に申し込みを行う(口数指定/金額指定)
- ETF:証券会社に申し込みを行う(指値/成行)
投資信託は、販売会社を通じて申し込みを行います。基本的に、注文の仕方は2パターンです。
- 口数指定
- 金額指定
口数指定の場合(たとえば「10口」分の注文をした場合)、注文時点では、1口いくらで買えるのか正確には分かりません。
購入金額がハッキリ分かるのは、翌日です。
また、口数ではなく金額指定して購入する場合(たとえば、10万円分の注文をした場合)も、注文時点では何口買えるのかは正確には分かりません。
最終的に自分がどれくらいの口数を購入できたのか、分かるのは翌日になります。
※翌日にならないと分からない理由は、上述の通り、投資信託の基準価額が計算されるのが1日1回だけだからです。
ピンとこない人は「すべては翌日にならないと分からない」とだけ覚えてください。
一方、ETFは指値/成行注文により、購入が確定した段階でいくらで買えたか分かります。
- 指値(さしね) :自分で買値を指定して注文
- 成行(なりゆき):自分で買値を指定せず注文
指値の場合、注文が成立しないリスクがあります。たとえば、私の場合、時価が1株1,000円の株を欲張って950円で指値し続けて、永遠に売買が成立しなかったという経験があります。
成行の場合、その日のうちの「イイ感じ」の値段で勝手に売買が成立します。一方で、予想外の価格で取引が成立してしまうというリスクもあります。
いずれにせよ、ETFは、投資信託とは違いリアルタイムに売買されているので、購入時点で価格も数量も確定するというわけです。
売買方法の違いまとめ
いったん、これまでの話をまとめます。こんな感じです。
「売買方法」に限って見ても、これだけ違います。
投資信託 | ETF | |||
---|---|---|---|---|
どこで買うか | ファンド毎に異なる。証券会社、銀行、郵便局など | 証券会社 | ||
価格の決まり方 | 1日1回、基準価額が算定される | リアルタイムで市場価格(時価)がつく | ||
どうやって注文するか | ・口数指定 ・金額指定 ※いくら買えたか分かるのは翌日 | ・指値 ・成行 ※リアルタイムで状況確認できる | ||
②投資信託とETFの違い【コスト】
つぎに、コスト面の違いを見ていきます。
買ったとき
- 投資信託:ファンドまたは販売会社ごとに異なる「購入時手数料」
- ETF:証券会社ごとに異なる「売買手数料」
投資信託は、買ったときに購入時手数料をとられます。高いものだと、3.0%とか取られる場合もあります。
こういったコストは資産運用の大敵です。つみたてNISAなど、国が作っている優遇税制の対象になるファンドは、ノーロード(販売手数料無料)のものばかりですね。
ETFの場合は、購入額に応じて証券会社が決めた売買手数料を支払うことになります。私が使っている楽天証券の場合、日本株のETFなら50万円買っても250円です。料率にしてたったの0.05%。
保有しているとき
- 投資信託:信託報酬
- ETF:信託報酬(一般に、投資信託より安い)
投資信託にせよETFにせよ、保有時には信託報酬というコストがかかります。これは『私の代わりに運用してくれてサンキュー』という料金ですね。言わば手間賃です。
この手間賃は、下記の三者で分け合うことになります。
- 運用会社
- 販売会社
- 信託会社(①の指示を聞いて、実際に売買したり資産を管理する会社)
※「①資産運用を指示する会社」と「③資産管理をする会社」が別なので、不正が起きにくいわけですね。
販売会社は、投資信託の販売時に「購入時手数料」をとっていたのに、「信託報酬」からも分け前をもらうことになります。
ところで、ETFの場合は市場で自由に売買できるため、わざわざ販売会社を通す必要がありません。
そのため、販売会社に報酬を払わなくて良くなる分だけ、信託報酬が安くなります。これが、一般にETFは投資信託よりコストが安いと言われる理由です。
※最近は、投資信託の信託報酬値下げ努力により、ETFとのコスト差はあまりなくなってきていると言われています。
売却したとき
- 投資信託:信託財産留保額がかかる可能性がある
- ETF:証券会社ごとに異なる「売買手数料」
投資信託の場合は、解約代金に所定の料率をかけた金額を負担させられる場合があります。これを信託財産留保額と言います。小難しい名前ですね。
※投資信託によって、このコストがかかるものとかからないものがあります。
ETFの場合は、購入時と同じで売買手数料がかかります。売った金額に対して、〇円、〇%という感じですね。上記で説明したように、ネット証券なら大した料金はかかりません。
購入時に3%、信託報酬で毎年2%とか取られていたら、長期的に見て勝てるわけないですね。
以上、コスト面をまとめると以下の通り。
投資信託 | ETF | |||
---|---|---|---|---|
買った時 | 購入時手数料 ※ぼったくりファンドは超高い | 売買手数料 | ||
保有している時 | 信託報酬 | 信託報酬 ※一般に、投資信託より安い | ||
売った時 | 信託財産留保額 | 売買手数料 | ||
③投資信託とETFの違い【機能面】
最後に、機能面での違いを見ておきます。
メンタル影響
- 投資信託:時価に振り回されない
- ETF:時価に振り回される
前述の通り、投資信託にはリアルタイムの時価がありません。だから、時価に振り回されずに済みます。もし株価が暴落しても、その影響が判明するのは翌日です。
どんなにパニックになっている人でも、1日経てば落ち着きを取り戻すでしょう。この1日は、冷静さを保つには意外に大きな意味を持つのです。
一方、ETFは証券口座にログインしてチャートを見ると、すぐにリアルタイムの時価が分かってしまいます。もし株価の暴落を目の前にしたら、パニックになって売りたくなってしまうかもしれません。
ヒトには「危険を回避したい」という本能がありますから、そうなってしまってもしょうがないですね。価値が暴落するものを握りしめ続けるのは難しいものです。
自動積立て
- 投資信託:ほとんどの場合、設定可能
- ETF:一部の証券会社でのみ、設定可能
多くの投資信託では、積立ての自動設定ができます。毎月1万円とか2万円とか、まったく手間をかけずに淡々と買い増し続けることが可能です。
一方で、ETFの場合は手動でコツコツと積み立てる必要があります。証券会社によっては自動定期買付サービスのようなものもありますが、一般的には自分で都度注文を出さなくてはいけません。
分配金再投資
- 投資信託:勝手にやってくれる
- ETF:自分でやる
投資信託やETFを保有していると、年に数回「分配金」が貰えることがあります。
投資信託の場合は、これを
- 再投資するか
- 受け取るか
投資家が自由に選択することができます。複利の力を最大限に活かしたいのなら、迷わず再投資を選択すべきですね。
一方で、ETFの場合は自動で再投資することはできません。キャッシュとして受け取るしかないということです。
もし再投資したければ、受け取った分配金を使って自分で新規買付の注文を出さなくてはいけません。
以上をまとめると、この通り。
- 時価に振り回されにくい→投資信託
- 自動積立→投資信託の方がラク
- 分配金再投資→投資信託の方がラク
結論:初心者は、投資信託の方が色々とラク
まとめ:投資信託もETFも、金融業界が発明したナイスな商品です
というわけで、長くなりましてすみませんm(_ _”m)
最後に全体をまとめて終わりにします。
売買方法は、こんな感じの違いがあります。
投資信託 | ETF | |||
---|---|---|---|---|
どこで買うか | ファンド毎に異なる。証券会社、銀行、郵便局など | 証券会社 | ||
価格の決まり方 | 1日1回、基準価額が算定される | リアルタイムで市場価格(時価)がつく | ||
どうやって注文するか | ・口数指定 ・金額指定 ※いくら買えたか分かるのは翌日 | ・指値 ・成行 ※リアルタイムで状況確認できる | ||
※キワドイ指値を何回も繰り返したいのなら、ETFの方が良いですね。
こびと株メンバーが大好きな高配当株投資はいかに安く買うかの勝負なので、そういう意味でETF一択です。
コスト面では、こんな感じの違いがあります。
投資信託 | ETF | |||
---|---|---|---|---|
買った時 | 購入時手数料 ※ぼったくりファンドは超高い | 売買手数料 | ||
保有している時 | 信託報酬 | 信託報酬 ※一般に、投資信託より安い | ||
売った時 | 信託財産留保額 | 売買手数料 | ||
一般に、ETFの方が低コストです。
- 購入時手数料を払う必要がない
- 販売会社を通さないぶん、信託報酬が安い
という理由ですね。ただ、最近ではあまり差がなくなってきています。
※こびと株メンバーはとにかく低コストなものが好きなので、ETF派です。
機能面で見ると、ETFよりも投資信託の方が初心者向けです。
- リアルタイムの時価に振り回されない
- 積立てがラク
- 分配金再投資がラク
※こびと株メンバーは、とにかく分配金を自由に使いたいのでETF派です。リアルタイムで市場で自由に売買できることもメリットだと思っています。
いずれにせよ、投資信託・ETFは金融業界が発明した「スーパー優れた金融商品」です。
- 少額から購入できる
- 分散投資によりリスクを下げられる
- 手間がかからない
- 法律上、厳重に資産が保全されている
上手に使えば、資産形成の大きな味方になります。しっかりと理解して、うまく付き合っていきたいものですね。
それではまたっ!
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