こんにちは、こびと株(@kobito_kabu)です。
Twitterやブログ、リアルな人間関係を通じて、よくこういうことを聞かれます。
結論から言います。
同じ会社に留まる限り、年収はまったく増えません。
どうにもこうにも、ここを勘違いしている人がとても多いので(私が学生・社会人になったばかりの頃もそうでしたけど)、解説しておきたいと思います。
※結論。もし年収を増やしたいのなら、スキルアップはほどほどに
- 景気の良いうちに
- 給与水準の高い会社に転職
これが最も合理的な選択肢です。
目次
スキルアップしても年収が増えない唯一の理由
多くの日本企業は、年功序列型だからです。
- スキルアップしても年収が増えない理由=日本企業は年功序列
もしあなたが経理のプロフェッショナルとして評価されたいと思っているのなら、会社が持っている給与テーブルからは逃れられないということを、強く認識しておくべきです。
そうでないと、いつか現実と理想の違いにガックリすることになるでしょう。
日本企業の給与体系は年功序列型
年功序列型というのは、こういうことです。
- 経理経験を10年積んだ35歳のAさん
- 他部署から異動してきた経理未経験の40歳のBさん
給料が高いのは後者です。
40歳の新人が、税効果や連結会計どころか、未収・未払といった初歩的な処理すらできないとしても、Aさんより給料は高いです。
※逆に言えば、25歳・公認会計士合格者、監査法人経験3年、みたいな優秀な若手が入ってきても、35歳のAさんより給料は低いんですけどね。
スキルアップと年収アップを結び付けられる仕組みがない
とにもかくにも、年功序列型の給与制度を採用する多くの日本企業においては、
- 経理マンのスキルと年収を結び付けられる仕組みをもっていません
欧米企業は、ジョブ型です。どんな仕事にいくらの給料を支払うか、ポジションによって決まっているのです。
- スタッフ(仕訳切らせて年収300万円)
- シニアスタッフ(ちょっと難易度の高い経理処理やらせて年収500万円)
- マネージャー(数名の部下を統括しながら決算とりまとめて年収700万円)
- コントローラー(部署全体の数字を見つつ本社へのレポーティングをして年収1,000万円)
みたいな感じで、職掌に応じた業務・責任の区分けが明確で(少なくとも、日本企業よりは)、いくら年齢が高くてもスタッフの仕事しかできない人に高い給与を支払うことはありません。
日系企業に勤める経理マン(経理ウーマン)の勘違いの多くは、こんな感じです。
それは外資の話です。
※正確には、スキルアップというよりポジションアップ。
- 経理は専門職である
- 専門職なのだから、専門性と年収が結びついている
これが、多くの人がハマる勘違いロジック。この勘違いがもとで、何人の経理マンが絶望を抱えて職場を去っていったか分かりません。
いやいや、スキルアップしたら年収は上がるよ!という反論
こういうことを言っていると、もちろん反論する人も出てきます。簡単に主張をまとめると次の通り。
- スキルアップすれば、(中期・長期的には)昇進・昇格に繋がる
- スキルアップすれば、資格手当がつく
- スキルアップすれば、もっといいところに転職できる
順番に見ていきましょう。
スキルアップすれば、昇進・昇格に繋がる派
スキルアップして1年2年では実を結ばないかもしれないけれど、3年4年というスパンで見ればきっとプラスになる。そういう主張です。
これに対する私の意見は次の通り。
- サラリーマンの出世・昇格は運の要素も大きい
- 日本企業のマネージャーに求められるのは専門性ではない
①については、勤務経験が長ければ長い人ほど、実感と合うのではないでしょうか。
- 自分が昇格するタイミング(年齢)と、上司との相性
- 自分が昇格するタイミング(年齢)と、対抗馬(同僚・先輩)の状況
こういったものの影響の大きさは否定できないでしょう。
②については、大した専門性を持たない上司が、スキルアップを重ねて高い専門性を持った部下に対してよく言うことですねw
なんでこんなことになるかと言うと、彼ら自身が専門性を評価されて昇格してきたわけじゃないからです。別に意地悪で言っているわけではありません。
何度でも言いますが、そもそも日系企業に専門性で待遇に差をつける仕組みなんてないんです。
- 高度経済成長期、人口増加の経済ボーナス時期に、エスカレーターで昇進してきた世代
- 終身雇用の崩壊が視野に入り、力をつけねばとスキルアップを頑張る世代
話がかみ合わないのも当然ですね。
ゼネラリストが多い職場では、高い専門性はかえって「知識オタク」として嫌がられるのです。
このへんも、経理として働いたことがある人なら分かるでしょう。あの人、知識はあるけど使いにくいよね…そう言われる人がいるはずです。
スキルアップすれば、資格手当がつく派
これに対する私の意見は次の通り。
- 検定資格では手当はつかない
- 税理士・会計士では手当がつくかもしれないが、会費で大半が飛ぶ
日商簿記1級は、転職市場では非常に高く評価される資格です。実際、実務においても非常に役に立つ知識を学べます。
とはいえ、それが手当の対象になるかというと話は別。日商簿記1級ですら手当がつかないのだから、FASSやビジネス会計検定といったマイナー資格ではお察しですね。
税理士・会計士クラスになると月額数万円の手当がつく企業も珍しくありません。
とはいえ、税理士・会計士の資格維持には「年会費」がかかります。年額で10~15万円ぐらいですね。それにくわえて継続学習などのコストもかかります。
もし月3万円の資格手当がついたとしても、資格の維持費を差し引くと大半は吹っ飛びます。
※監査法人勤務だと、会計士協会への会費は監査法人が負担してくれるんですけどね。一般企業だとそれはないです。
仮に月3万円がまるまる手元に残るとしても、年額36万円。20年で720万円です。
- 約3000時間もの勉強時間
- 100万円を超える予備校代
こういったものを考慮して、これが割に合うと思う人はどれくらいいるのでしょうか。金銭面だけで言えば、同じ職場に居残るよりも、もっと年収が上がる企業に転職しちゃった方がイイですよね。
スキルアップすれば、もっといいところに転職できる派
これは圧倒的に正しいと思います。
というか、スキルアップと待遇を短期的に結び付けたいと思うのなら、この選択肢が一番有力です。問題があるとすればこの視点。
- 経理スキル以上に、景気が重要
履歴書を飾れるような素晴らしい実績を積み、誰もが納得できるような資格を持っていたとしても、求人がなければどうしようもありません。
就職氷河期と呼ばれた世代にも、優秀な人達はゴマンといます。彼らがなぜ就職できないで今も苦しんでいるのか?政府が、なぜ国をあげて彼らを支援しようとしているのか?
日本企業は1990年代初めのバブル崩壊後に新卒採用を絞り込み、「就職氷河期」と呼ばれる世代を生んだ。政府は2000年代半ば以降「再チャレンジ」を掲げて就業支援に取り組んだが、非正規から正規に転換した人の割合は18年に7%程度にとどまるなど、一部は「現在も不本意ながら不安定な仕事、無業など様々な課題に直面している」(内閣府)。
これは極端な例ですが、スキルさえあれば必ず報われるわけではない、という現実は認識しておいた方が良いです。
専門家の上司を持たない部下の悲哀
昔、働きながら税理士試験に合格した同僚がおりました。
彼は税理士試験4科目合格(全5科目で最終合格)の時点から、段々と社内の税務を任されるようになりました。
BIG4のコンサルと対等に議論を交わしながら、社内の法務チームとともに海外税務に取り組んでバリバリ働いておりました。
ところが。
彼の上司は税務の専門家ではありません。会計の専門家ですらありません。だから、彼の専門性の高さ・アウトプットの価値が分からないのです。
むしろ、自分の立場を脅かしかねない彼に対しては、攻撃的とすら言えます。
日系企業が、経理マンのスキル・専門性を評価する仕組みを持たないということは、スキル・専門性を持ったマネージャーが育たない(育ちにくい)ということと同義です。
どんな人も、合理的だからです。評価されないことを進んでやろうと思う人はいません。
スキル・専門性よりも、
- 上司とのコミュニケーション能力
- 長時間労働
こういったものが評価されるなら、こちらに注力して当然です。そして、いずれにせよ、スキルがあろうがなかろうが、給与は横並び。昇進は横並びなのです。
まとめ:経理のスキルアップ=年収アップではない
- スキルアップすれば、評価される
- スキルアップすれば、昇格・昇進できる
- スキルアップすれば、年収が上がる
100%ウソとは言いませんが、どれもこれも幻想の類です。
日本企業こそ、世界でもっとも成功した社会主義だと言われることがありますが、うまく表現したものですね。
- 運が良ければ、評価される
- 年齢が上がれば、昇格・昇進できる
- 年齢が上がれば、年収が上がる
こちらの方が、より現実に近いでしょう。成果をうまく評価に結び付けてくれる職場で働いている人はラッキーですね。
英語が嫌いで日系企業しか選択肢がない!という経理マンが、若いうち(20代~30代)に報われたいのなら、転職以外にてっとり早く待遇を上げる方法はありません。
今の会社で居心地が良いのならもちろんそのままでOKですが、
- 居心地は悪い
- 待遇にも不満
- でも、自分としては色々実務経験も積んでスキルもそこそこにある
という状況なら、転職こそもっとも有効な選択肢になりえます。
腐る前に、お外の空気を吸いましょう。上司は急には変わりません。
報われないスキルアップにムダな時間を費やす経理マンが減るといいなと思います。
それではまたっ!
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