こんにちは、こびと株(@kobito_kabu)です。
上場企業での経理/財務歴が10年以上あるので、時々
「経験なしで経理に転職した場合、どうやってステップアップしていけばいいのか?」
このような質問を受けることがあります。
目次
経験なしで経理に転職した場合の年収相場
経験なしで経理に転職すると、年収はどれくらいからスタートするのが相場なのでしょうか?
JobQが運営するサイトでは、未経験経理の年収は簿記の資格があっても200~350万程度と紹介されています。
「高い給与水準」とは、ちょっと言いにくいですね。
これがずっと続くとなると、少しさみしいかもしれません。
前提:経理の年収の決まり方
大事な前提を確認します。「経理の年収を決める最も重要な要素は何か?」ということです。
それは
ズバリこれです。
例えば、この2人を比べてみましょう。
- 大企業に勤める無資格のAさん(経理に異動したばかり)
- 中小会計事務所に勤める勤務税理士のBさん
年齢が同じくらいなら、通常、Aさんの方が年収が高いです。
超難関の税理士試験を突破し、税務という専門スキルを持っていても、給与水準が高い企業に勤めている人には勝てません(独立開業して成功したなら別ですが)。
仮に、Aさんがいわゆる「ぶら下がり社員」で、まったくやる気もなくスキルもなかったとしても、Aさんの方が給料は高いです。
だから、年収をアップさせたいなら
- 「給与水準の高い会社」に転職しよう!
- どんな対策をするのが最短距離かな?
この順番で考えるのが正解です。
やみくもに「スキルアップすれば報われるはず!」と考えるのはマチガイです。
経理の世界では、転職回数3回4回なんて全然普通です。
経理のスキルは、どこの会社からも需要があるからです。
専門性を武器に、居心地の良い場所・楽しい場所を探して渡り歩きましょう。
経験なしで年収水準の高い会社に転職する3ステップ
日本において、給与水準の高い会社に入る方法は、従来はコレ一択でした。
一般的には、「良い大学に入って、良い企業に入る」という戦略になります。
けれども、転職が当たり前になってきた現在では、経験なしからのキャリアチェンジでもチャンスがあります。
転職市場で勝ち抜くために重要な要素は
- 職歴
- 学歴/資格
- 年齢
そして「景気」です。
経理というのは、経験のない人には厳しい世界です。
しかし、ひとたび経験者になってしまえば、その後のキャリアは非常に楽になります。
新規参入者にとって厳しいということは、裏を返せば経理業界内部は居心地が良いということです。
キャリアチェンジした直後の待遇は良くないかもしれませんが、これからいくらでも年収を伸ばしていくチャンスがあります。
ステップ①:転職で評価される資格を取る
会計系の資格は、色々な種類があります。
- 日商簿記検定
- 公認会計士
- 税理士
- ビジネス会計検定
- BATIC(国際会計検定)
- USCPA(米国公認会計士)
- FASS検定
狙う資格は、ズバリ簿記1級かUSCPA(米国公認会計士)のどちらかです。
基本的には、日本企業ならどこでもウケがよく、カバーする範囲が広い簿記1級をおすすめします。
この資格のコスパは最強です。転職の強力な武器になります。書類選考ではまず勝てるでしょう。
海外/外資志向があって英語に苦手意識がないなら(得意でなくても良い)、USCPAもおすすめです。
なぜUSCPAをおすすめするかというと、海外展開しているグローバル企業や外資系企業は年収水準が高いからです。
特に外資系企業は、USCPAの価値をきちんと理解しています。
これ以外の資格は「年収アップ」という観点では意味がないか、割に合わないです。
基本的にはこの2つのどちらかを持っておけば、資格はもうOKです。
簿記1級を持っていて「さらに何かもう少し…」という人は、TOEICでハイスコアを狙いましょう。
簿記1級+TOEICはかなり喜ばれます。
ステップ②:転職で評価される実務経験を積む
次に、実務経験の内容が問われます。
- 経費精算ばかりしてました
- 現金の出納管理ばかりしてました
こういう人が「給料水準の高い会社」から好まれるかというと、そんなことはありません。
給料水準の高い会社ほど、付加価値の低い業務は外注or自動化で対応しているからです。
したがって、狙うべき業務はこういうところ。
- 決算業務の”実務リーダー”&監査法人対応
- タックス(税務申告・税務調査対応)
- 予算管理
- 原価管理
- ファイナンス(資金運用・調達)
- 会計基準/税制改正対応
- システム導入プロジェクト
財務会計の分野に携わるなら、とにかく、財務会計の分野では「末端プレーヤーで終わらない」ことが重要になります。
担当できる人が多いからです。
マネジメントをするか、親会社対応や監査法人対応をするなど、他のプレーヤーより高い目線で業務経験を積む必要があります。
税務会計の経験は、どこの会社でも評価されます。
法人税や消費税の申告をやって、税務調査対応まで経験できるとかなりオイシイです。
管理会計の分野では、予算管理/原価管理に携われると評価されます。
これらの業務に携わるポジションは、いつも募集があります。この業務を担当できる人が少ないからです。
さらに、
- 組織再編
- 企業買収
- 資本戦略
- 報酬設計
- 海外管理強化
といったプロジェクト関係には、積極的に関わりたいところです。
ステップ③:転職1年前には残業して年収を上げておく
簿記1級があって、数年の実務経験(それも、しっかり売れるモノ)があれば、転職のチャンスは十分に高まるでしょう。
しかし、ここにさらにプラスすべきことがあります。
転職市場では「前年度の収入水準」が次の年収に影響します。
年収300万円の人がいきなり年収600万円になることは少ないわけです。
だから、転職をする1年前はバリバリ残業をして年収を上げておくべきです。
基本給ベース(賞与込み)で年収が300万円だったとして、残業代で+100万円しておけば、前年度年収は400万円になります。
これなら、転職時に450万円~500万円ぐらいの案件を狙える可能性があります。
年収300万円の状態で転職活動すると、それだけで次の職場で買い叩かれるリスクがあります。
これは、転職市場の1つの現実です。
源泉徴収票を見ただけでは、残業で稼いでいるのかどうかなんて分かりませんから、ガンガン仕事をすべきです。
- 残業によって、短期間で様々な実務経験を積める
- 残業によって、キャッシュが手に入る
- 残業によって、年収が上がり、次の転職が有利になる
常態化した残業地獄は最悪ですが、このような「目的のある残業」は全然オッケーです。
ホワイト企業に転職したら残業辞めればいいだけですからね。
この観点から、経理としての最初の職場が『残業しようと思えばいくらでもやることがあるか?残業代はちゃんと出るところか?』これを確認するのは重要です。
大体、経理の残業の辛さなんてたかが知れています。
肉体労働でもなければ、クライアントからのプレッシャーがある仕事でもありません。
経験なし経理が転職で年収をアップさせる方法まとめ
- 簿記1級かUSCPAを取る
- 転職で評価される実務経験を選ぶ
- 転職1年前は残業しまくる
この状態で、景気の良い時に転職活動が出来ればチャンス大です。
あとは若さがモノを言う感じですね。
35歳ぐらいまでに、3回目の転職を終えて年収500~600万円ぐらいを確保したいところです。
このぐらいの給与水準の会社なら、40歳で700万円、50歳で800万円と、平均よりも高い水準の給与を得られ続けるでしょう。
- 1回目:25歳~28歳で未経験から経理にキャリアチェンジ
- 2回目:28歳~30歳で待遇の良い会社に転職
- 3回目:30歳~35歳で待遇の良い会社に転職
こうやって、3~4年ごとに転職するイメージです。
経験なしの経理転職で、よくある質問・勘違い
Q1:スキルさえあげていけば、年収は上がっていくんでしょ?
A1:転職しないと上がりません。
日本企業の多くは、個々人のスキルを正確に評価して、差をつけるという仕組みを持っていません。
Q2:出世すれば年収も上がっていくよね?
A2:給与水準の低い会社は、出世後の給与にも期待できません。
役職がついたからといって、他の人と200万も300万も差がつくということはありません。
年収水準が低い会社の場合、若さを失うことの経済的損失の方がデカいです。
Q3:給料の高い会社って激務なんじゃないの?
A3:経理に限って言えば答えはNo
- メディアのキー局とか
- 総合商社とか
- メガバンの営業とか
そういうところをイメージされているのかも知れません。もしそうなら答えはYesです。
でも、経理の場合は違います。むしろ、給料の高い会社の方が仕事は楽です。
なぜなら給料の高い会社=優れたビジネスモデルを持っている会社で、そういう企業は
- 最新の機器・システムを使っていて
- 付加価値の低い業務は外注・自動化がされていて
- 人員が足りなくててんやわんやということがない
からです。
経験なしで中小企業経理からスタート!全然悪いキャリアじゃない!
いきなり大企業で経理というのは、実はそんなに良いキャリアじゃないのかもしれません。
なぜなら、大企業の経理は業務が非常に細分化されていて、業務の守備範囲が狭すぎるからです。
あまりにミクロすぎて、自分が何をやっているか分かりにくいのです。
- あの人は固定資産の担当
- あの人は資金繰りの担当
- あの人は原価の担当
- あの人は税金の担当
こんな感じで、コマギレで、バラバラです。
全部の業務を一通り経験しようとすると、平気で10年とか15年とかかかります。
時々子会社の経理担当者が本社に来て打ち合わせをしたりするのですが、小規模会社の経理マンの方が、会社のことを何でも知っているんですよね。
「自分の手にすべてがおさまる規模」で経理経験を積むのは悪くないです。
悪くないというか、むしろすごく良いです。
大企業の経理部では、経理マンを子会社に出向させてオールラウンドに経験を積ませようとするところもあるくらいです。
小さい規模の会社の経理だからこそ経験できることというのは、実はたくさんあります。
大企業の経理へ転職する際に、そういった経験を強みとしてアピールできると良いですね。
それではまたっ!
※関連記事です
Follow @kobito_kabu