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こんな人のための記事です。
結論から言うと、簿記をどれだけ学んでも、それだけでは経理実務はできません。
簿記・会計をバッチリ学んで会計士資格まで取った人でも、
「お勉強は良くできたんだろうけど、実務は全然わかってないよね…」
という人がゴロゴロいます。
この記事では、簿記と経理実務の関係について、
- 簿記の勉強をしただけじゃ経理実務ができない7つの理由
- 簿記を取得した未経験者が、経理を目指すときの注意点3つ
を中心にまとめていきます。
目次
経理実務をやるには、簿記の知識が必須
経理実務をやるなら、簿記の知識は絶対に必要です。
- 簿記は、あらゆる経理実務の基礎
- 簿記+αで、高い価値を発揮できる
というのがその理由。実務の基本も応用も、簿記の知識ナシにはあり得ません。
ですから、経理実務をやるなら、まずは簿記の勉強。
- 未経験で経理に転職したい人
- 未経験で経理に配属されてしまった人
どちらも、最初に身に着けるべきは簿記の知識です。
簿記を勉強しただけじゃ経理実務ができない7つの理由
とはいえ、お勉強だけでは通用しないのが実務の世界。
- 簿記の知識がなければ、経理実務はできないけど
- 簿記の知識があるだけじゃ、経理実務はできない
というのが現実です。
理由①「前提」を決めるのが大変
簿記の試験では、会計処理の前提になる
- 事実関係
- データ
などは、問題文にハッキリと記載されています。
経理実務では、そうは行きません。
例えば
- 賞与引当金を計上したい
→「賞与の支給見込額」は具体的にはどのように計算するか? - 工事を行ったので固定資産を計上したい
→どこまでを1つの固定資産と考えるべきか? - ある会社を買収した
→「のれんの償却年数」を決めるにはどういう理論を使えばいいか?
そのための具体的なデータはどこにあるのか?
といった感じで、簿記の試験では問われなかったところにポイントが出てきます。
また、
- 過去の処理が不明
- 必要な説明を受けられない
- 会社の方針が未確定
- だれも状況を把握していない
という状況で
と悩まされることは、めずらしくありません。
理由②実務は簿記よりも奇なり
簿記の試験では
- 火事で帳簿の一部が焼けてしまった
- この取引については、期末まで一切未処理である
- 一部情報が不明である
みたいな、「そんなことある??」と思うような設定の問題が時々出てきます。
ところが。実務とは不思議なもの。試験よりよっぽど複雑で特殊な状況が、しょっちゅう起こります。
例えば
- 前任者が突然異動してしまい、過去の処理が一切不明
- 処理誤りと会計基準改正の影響が混じりあって、ありえない残高が発生
- 遠方の倉庫から資料を取り寄せ忘れたため、過去数値不明のまま決算確定が必要
といった感じです。
理由③税金の知識が日常的に必要
経理実務において必要な知識は、簿記の知識だけではありません。
実は私自身、経理実務を始める前は
- 消費税なんて、値段に10%かけるだけでしょ?(当時は5%でしたがw)
- 法人税なんて、税引前利益に実効税率かけるだけでしょ?
くらいの認識でいました。
ところが経理の実務家は、税金の知識ナシには1日も過ごすことができないんです。
仕訳をきる際には、通常、
- 仮払消費税・預かり消費税をたてるか否かの判断をする
- 法人税計算上区分して把握すべき費用は、専用の科目に集計する
といったことが、いちいち必要になるからです。
※経理の実務家として必要な税金知識の身に着け方は、以下の記事をご覧ください。
理由④会計ソフトにクセがある
イマドキ、経理実務に紙とペンだけで対応することはありえません。
ですから、経理実務をこなすには、簿記のスキル以外にPCスキルも必要になってきます。
エクセルは、一般的なソフトです。使いこなすのにはスキルが必要ですが、
という人もいると思います。
問題は、会計の専門ソフトの方。
- 勘定奉行
- 弥生会計
- SAP
- オラクル
- Diva System
- STRAVIS …etc.
単体決算用・連結決算用・ERPなど様々ありますが、どれも経理実務の初心者さんにとっては、なかなかやっかいな存在と思われます。
理由⑤「重要性」がめちゃくちゃ重要
「重要性の原則」を覚えていますでしょうか?
(前略)企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。(後略)
要するに、
- 重要性が高くないものは
- キッチリした会計処理をしなくてもOKだよ
ということです。
この、重要性の原則、実務ではメチャクチャ重視されます。
なぜなら、実務の現場には、「重要性が高くないもの」がゴロゴロ転がっているから。
これを全部キッチリやってたら、時間がかかるばかりで何も進みません。
- 100円のボールペンに関する処理を正確にやったために
- 1億円の企業買収の処理があいまいになっちゃった
なんてことになっては、本末転倒ですよね。実務はメリハリが大切です。
この、重要性の原則の使い方は、簿記の勉強だけでは身に着きません。
- 金額的重要性
- 質的重要性
について、実務の中で感覚を養っていく必要があります。
理由⑥簿記は7割で合格、実務は間違えたら終わり!?
簿記の試験は、7割以上の得点で、合格できます。
一方で経理の実務は、ミスを嫌う仕事です。
- 出金額は1円ズレても問題になりますし
- ケタを1つ間違えて伝票を起こせば、財務諸表はメチャクチャになります
※経理部でのミス対策については以下の記事をご覧下さい。
理由⑦簿記は結論だけが大事、実務は過程の説明も大事
簿記の試験で求められるのは、正解の数値だけです。
ところが経理実務では、正解へ至る過程をわかりやすく説明することも重視されます。
その処理が正しいことを
- 上司
- 同僚
- 後任者
などにわかってもらう必要があるからです。
例えば、①の仕訳をすべきところ、間違って②の仕訳を計上してしまったとしましょう。
- 正解 :消耗品費 100 / 現預金 100
- 間違い:水道光熱費 100 / 現預金 100
この場合、簿記の試験的な発想だと
- 修正:消耗品費 100 / 水道光熱費 100
と仕訳をしたくなります。
これで財務諸表は正しくなりますから、問題はなさそうですよね。
でも実務では、あえて
- 修正①振戻 :現預金 100 / 水道光熱費 100
- 修正②再計上:消耗品費 100 / 現預金 100
という2つの仕訳をきることがあります。
何年かたったあとでこの伝票を見たとき、何が起きていたのか把握しやすいからです。
ここまで、「簿記を勉強しただけじゃ経理実務ができない理由」をご紹介してきました。
これはつまり、「経理部は、経理の実務経験者を求めている」ということでもあります。
ですから、一度実務経験を積んでしまえば、経理はいくらでも転職ができます。
というわけで、経理実務家への最初の一歩、ぜひ踏み出してみてくださいね。
簿記を取得した未経験者が経理を目指すときの注意点3つ
まずは基本、簿記のスキルをつけましょう。話はそれからです。
経理の実務で使うなら、簿記の2級あたりまでは勉強しておくと良いでしょう。
※簿記の勉強については、以下の記事もご覧ください。
簿記取得後の未経験者が、経理を目指すときのポイントは3つあります。
1つずつみていきましょう。
①まずは未経験の転職案件をチェックする
ずっと書いてきた通り、経理の世界では、実務経験が重視されます。
結果、未経験で応募できる案件は限られるので、
- 何があれば応募できるのか知っておく
- 転職市場が売り手市場のタイミングを選ぶ
ことが重要になります。
ですから
- 簿記の資格をもっている
- 経理の仕事に興味がある
この2つがそろったら、最初にすべきことは転職エージェントへの相談です。
優良な転職エージェントを選んで、
- 未経験でも応募OKの転職案件
- 最近の転職市場の動向
- 自分の書類スペックで内定できそうな会社
についてきいてみて下さい。
おすすめは、マイナビAGENTです。管理部門にも強い転職エージェントで、業界知識があって優しいので、安心して相談ができます。
私自身、利用したことがありますが、とっても親切なエージェントさんでしたよ。
確かに、
- 簿記2級(または1級)を取得
- 転職エージェントに相談
- 良い案件を見つけて経理に転職
というのが王道パターンだと思います。
でも、もしもあなたがまだ簿記を取得できていない場合でも、
- 転職エージェントに相談して情報収集
- 目標を定めて簿記を勉強・取得
- 実際に転職活動
- 良い案件を見つけて経理に内定
というやり方をおすすめします。
転職エージェントと話しておくことで
- 自分の経歴の場合、簿記何級が必要なのか?
- 今の景気だと、簿記何級が必要なのか?
- 簿記をとったら経理に転職できる可能性は、どれくらいか?
- 実際、経理の仕事ってどんな感じか?
といった情報を、リアルにつかみとることができるからです
これは、簿記を取る前でも・取った後でも、重要な情報ですよね。なるべく早く知っておいて、損はありません。
この方法には
- 不要な資格取得に時間をかけなくて済む
- 転職市場が良いタイミングを逃さなくて済む
- 自分に経理の仕事が合いそうか事前に確かめられる
といったメリットもありますよ。
※「既に経理部に異動したんだ!」という人は、もちろん、転職エージェントに会う必要はありません。代わりにすべきことは…以下の記事を参考にしてみて下さい。
②謙虚になる
残りの2つの注意点は、無事、転職できたあとの注意点です。
仕事を覚えるまでは、謙虚でいましょう。
経理未経験のあなたは、はじめはどうしても仕事に慣れないはずです。
そんなとき
- 簿記の知識はあるから
- 年齢は上だから
- 社会人経験は長いから
といった理由で、「上から」な態度をとってしまうと、一気に仕事がしにくくなることでしょう。
③過去の資料をよくみる
最後は、過去の資料をよくみることです。
経理の仕事には、繰り返しがたっぷり。
- 日ごと
- 月ごと
- 四半期ごと
- 年ごと
に、同じ形で繰り返す業務がたくさんあります。
「前回はどうやってやったのか?」に着目することで、「簿記の理論上の正解」ではなく「経理実務上の正解」が見えてくることと思います。
- 具体的には、こんな計算の仕方になるんだな
- 実務的には、これくらいが落としどころなのかな
- 継続性の原則から、今年もこんな感じでいいかな
- 重要性の原則から、ここはやらなかったのかな
といったことを過去資料から読み込んで、現在の処理や自分自身のスキルアップに活かしましょう。
まとめ:簿記の知識+実務経験→経理の力
結局、
- 簿記の知識だけでは、経理はできない
- 簿記の知識ナシでは、経理はできない
というのが現実です。
簿記をしっかり学んだうえで実務経験を積むことで、1人前の経理屋さんが出来上がるというわけ。
経理の力は
- 簿記の知識
- 経理の実務経験
の2つが根幹なのです。
ちなみに、①簿記の知識と②経理の実務経験の2つがそろうと、転職活動でも無双できる可能性があります。
私は、簿記1級と10年の経理歴(売れる実務経験ばかり積みました)で、
- しょっちゅう「書類選考ナシにするので面接にきませんか?」というオファーをもらう
- 転職活動をすると、「面接じゃなくて勧誘してます」と言われる
- 実際、グローバルな有名企業から内定ももらえる
という感じになりました。
「え?そんなに年収アップするの?」と驚くと思います。(私の場合、内定をくれた会社は年収100万円アップの条件でした)
いつでも転職できる自信がつくと、仕事はずいぶん気楽になります。
それではまたっ!
※関連記事です。
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